職務評価の概要について
そもそも職務評価の意味や特徴を知らなければ、人事評価に活用できません。まずは職務評価の基本的概要について、以下で解説します。
職務評価とは?
職務評価とは、社員が担当している「職務」を基準に評価をする方法です。各職務ごとの特徴や重要度を加味した上で、評価を実施するのが特徴です。
職務評価はあくまで職務への評価を実施し、担当している社員自体を評価しません。そのため人事部は会社を構成している各職務についての理解を深め、正確に評価するための知識を身につける必要があります。
職務評価は正社員だけでなくパートも対象となる
職務評価は、正社員とパートの両方を評価できる手法です。働き方改革によって、正社員とパートの間に理不尽な待遇格差を作ることは禁止されています。
そのため職務評価も正社員とパートに対して、平等に実施する義務があります。「正社員だから高く評価する」「パートだから低い評価になる」といったバイアスがかからないように、意識して評価を実施しなければなりません。
職務評価が注目されている理由
職務評価は、自社において特定の職務が「どの程度の重要性を持っているのか」を判断する基準になります。職務の重要度の高さを把握することで、能力の高い社員を担当させて成果を出すなどの流れを作れるでしょう。
人的資本を有効活用するための手法として、職務評価に注目が集まっているのです。特に人手不足に悩む企業は多い昨今は、職務評価を実施して限られた人材を適切な職務につけるための方法として認知されています。
職務評価と職務分析の関係
職務評価について知る際には、「職務分析」との関係を把握することも重要です。以下では、職務分析の基本について解説します。
職務分析とは?
職務分析とは、社員に割り振られた職務の仕事内容、責任の重さ、範囲、目標達成に求められる能力などを分析するプロセスです。職務内容を明確にすることで、その仕事が自社に必要なのか、もしくは不要なのかを判断できます。
職務分析で収集した情報は「職務記述書」に記録し、人事配置、採用、昇給などの判断材料として使用します。
職務評価を実施するには職務分析が不可欠
職務評価を実施するには、まず職務分析で仕事の内容や必要な能力(難易度)明確にする必要があります。職務分析で職務ごとの詳細を把握することで、正確な職務評価が可能です。
「職務分析をしてから職務評価につなげる」ことが、人事評価の基本といえます。そのため職務評価を実践する際には、職務分析への理解も同程度必要です。
職務分析を実施する方法
職務評価を実践する準備として行われる職務分析には、以下の方法があります。
観察法
観察法とは、人事担当者などが実際の業務現場に立ち会って、仕事の内容や流れを直接観察する方法です。現場作業が中心の仕事の場合には、観察法によって業務の詳細を把握しやすくなります。現場を知ることではじめて職務の重要性が把握できることもあるため、初期段階で観察法を実施する企業も多いです。
デスクワーク系は逆に仕事を観察していても分からないことが多いため、業務のプロセスが残る連絡ツールや管理ツールを活用する方法が検討されます。
面接法
面接法とは、実際に職務を担当している社員と面接をして、ヒアリングをする手法です。社員がその業務に感じていることや課題を把握できるため、その後の評価につながる情報を得やすい点が特徴です。
一方で、面接法は多くの社員と話し合いをする必要があるため、職務評価の実践まで時間がかかります。対象となる社員が多い場合には、面接法が人事担当者の負担増加につながるリスクもあります。
記述法
記述法とは、それぞれの社員にアンケートを回答してもらい、その内容をもとに職務分析をする手法です。
簡単かつ短時間で実践できるため、スムーズに職務分析から職務評価の段階に移行できるのが特徴です。少しでも早く評価を実践したい場合には、記述法による分析が優先されます。
職務評価を実施する方法
職務分析と同様に、職務評価にもいくつかの方法があります。以下では、職務評価における手法を紹介します。
単純比較法
単純比較法とは、1対1で各職務を比較し、職務の大きさが同じか・異なるかを判断する手法です。職務の内容などは一切考慮せず、職務全体の重要度のみを参考に比較する方法となります。
シンプルに比較して職務間に優劣を付けられるのが特徴ですが、具体的に評価の理由を説明するのが難しくなります。そのため社員が評価結果に納得できない場合、不満が増加するリスクもあります。
分類法
職務を詳細に分析し、難易度による分類をした上で評価する手法です。分類の際には職務の等級を作成し、「1級:〇〇のスキルが必須」「2級:〇〇のスキルがあると良いが、必須ではない。一方で△△の業務経験が必須」といった具体的な定義を設けます。その上で社内の職務を各等級に当てはめ、基準に合わせた評価を実施します。
等級の作成にはしっかりと時間をかけ、職務の難易度とズレが生じないように注意します。
要素比較法
職務を構成する要素ごとにレベル分けをし、その難易度の違いで評価する手法です。例えば「職務A:知識の要素が重要だが、経験の要素はなくても問題ない」「職務B:経験によって得た熟練度が重要だが、知識は後から身につけても問題ない」といった形で、各要素を参考に評価基準を設けます。
要素比較法によるレベル分けは、その職務について理解度の高い人材に担当してもらいます。
要素別点数法
職務を構成する要素を分類し、それぞれに評価をする手法です。上記で解説した要素比較法とは違い、レベルではなく点数で比較するのが特徴です。例えば職務における知識の要素では、「マニュアルを把握している(1点)」「上司の指示なく業務を担当できる(2点)」といった形で点数を設定した上で、各職務を比較します。
職務評価で使用される評価項目
職務評価を実施する際には、使用する評価項目について把握することもポイントです。以下では、職務評価で使用される具体的な評価項目を紹介します。
職務評価における評価項目の例
職務評価においては、以下のような評価項目が使用される例が多いです。
- 人材代替性
- 専門性
- 革新性
- 裁量性
- 対人関係の複雑性
- 問題を解決する難易度
- 経営への影響
それぞれの項目内容を確認し、基準となる項目を選ぶのが職務評価で効果的な評価を実践するポイントです。自社の環境や職務内容によって最適な項目は変わるため、まずは実際に評価を実践して使いやすさを試すことが検討されます。
まとめ
職務評価は、職務という企業における重要な構成要素を参考に社員を評価する方法です。職務の重要性に改めて注目した上で評価基準とすることができるため、自社の現状を深く理解するきっかけにもなるでしょう。この機会に職務評価による人事評価の方法を確認し、実際に評価をしてみてはいかがでしょうか。
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