こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
従業員が仕事に対してやりがいを持てることは、職場全体のモチベーション向上につながり、結果的に業績にも良い影響をもたらしてくれます。そこで、従業員の主体性を高める手段として注目を浴びているのが、「ジョブクラフティング」と呼ばれる人事教育手法です。本記事ではジョブクラフティングとは、企業にもたらす効果、実施の流れ、注意点などを解説します。
ジョブクラフティングの概要と目的を解説!
まずは、ジョブクラフティングとはどのような手法なのか、概要と求められている理由について解説します。
ジョブクラフティングとは?
ジョブクラフティングとは、働き手の仕事に対する意識や行動を変化させる取り組みのことです。この手法は、2001年に米イェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー准教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン教授により提唱されました。
ジョブクラフティングの実施により、従業員は割り当てられた仕事をこなすのではなく、主体的に実行するという考え方に捉え直すことが可能です。仕事に対する意識が変わることで、モチベーションやパフォーマンスが向上すると期待されています。
ジョブクラフティングが求められる理由
企業でジョブクラフティングが求められる理由としては、VUCA時代に従業員の結束力を高めることや共通の認識を持つことが挙げられます。
目まぐるしい変化で将来の予測が難しいことを「VUCA(ブーカ)」と呼びます。近年は経済やビジネス、個々のキャリアなどに複雑さが増し、将来の予測が難しいVUCA時代になりました。それゆえに、仕事をする意味や意義を見出せず、企業と従業員の信頼関係が築かれにくい状態になっているのです。
ジョブクラフティングを通じて従業員一人ひとりが仕事に対するやりがいを持てれば、企業が達成したい目標に向かって仕事に取り組む結束力が生まれます。また、目標を達成するために企業と従業員の間で共通の認識も持てるようになり、信頼関係も強固なものとなるでしょう。このような効果を期待して、ジョブクラフティングに取り組む企業は増えています。
ジョブクラフティングが企業にもたらす効果は5つ
ジョブクラフティングの実施により、企業に様々な効果がもたらされることが期待されます。具体的な効果は以下の5つです。
従業員の主体性が向上
ジョブクラフティングでは自分で考えるトレーニングを行うため、受け身だった従業員に主体性が身につきます。さらに、当事者意識も生まれ、仕事に対する責任感やプロ意識を高めることが可能です。
主体性を持って思考・行動ができるようになれば、仕事のやりがいや楽しみも生まれ、モチベーションも格段に上がります。その結果、目標を達成する従業員が増え、企業の競争力の向上につながります。
生産性の向上
従業員の主体性が高まり業務との向き合い方が変われば、効率化や生産性の向上も期待できます。仕事に対するモチベーションが下がっている状態では、自ら業務のムダをなくそうという気にはならないでしょう。
しかし、主体性が高まれば、能動的に業務の効率化や工夫をこらそうという意識が強くなります。効率化により良質なパフォーマンスが発揮できるようになれば、生産性も向上するわけです。
離職率の低下
仕事へのやりがいが高まれば、離職率の低下につながる可能性もあります。報酬やキャリアアップを目的に働いている人の場合、より好条件の職場があればすぐに転職してしまうでしょう。
しかし、今の仕事にやりがいや魅力を感じていたり企業に愛着が湧いていたりすれば、そう簡単に転職を考えることはなくなります。同時に働きやすさや待遇も見直していけば、大事な戦力を失うリスクを減らすことが可能です。
また、離職率が少ない=定着率が高いという良い印象を外部に与えられるため、新たな人材の獲得においてもメリットがあるといえます。
従業員満足度の向上
ジョブクラフティングには、従業員の満足度を向上させる効果も期待できます。従業員が主体的に取り組んだ結果、目標の達成や業績が上がったなどの成果が現れれば、会社の役に立っていることを実感できます。
業務への参画意識や成功体験は、従業員の自己肯定感や満足度を高めることが可能です。また、従業員の満足度の向上は企業の魅力も高まるので、離職率の低下や採用活動がしやすくなるなどの効果もあります。
アイディアが生まれやすい職場環境
主体性を持つことで考える機会が増えるため、アイディアの創出につながります。上から命令や指示を一方的に出すトップダウン型の組織の場合、従業員の主体性を育むのは困難です。
しかし、ジョブクラフティングではトレーニングを通じて、自主的な行動や考える力を身につけられます。自分で考えて対処する機会が増える分、思考力や発想力が向上し、今までにはないアイディアを思いつけるようになるのです。
発想の転換で生まれたアイディアは、業務の効率化や新商品、サービスの開発などにおいて良い影響をもたらしてくれます。
ジョブクラフティング実施の流れ
ジョブクラフティングにより従業員の主体性を育むためには、適切なステップを踏むことが大切です。ここでは、ジョブクラフティングを実施する流れをご紹介します。
各自が業務内容を洗い出す
まずは、従業員それぞれが手掛ける全ての業務を把握するところから始めます。業務内容をリストアップし、どのような仕事をやっているのか可視化できる状態にしましょう。
単純に業務内容だけを書き出すのではなく、会社全体の業務の流れや細かいタスク、関わっている人物など業務に関することを細かく洗い出してください。
自己分析
次に、従業員各自で自己分析を行います。自分がやっている仕事の目的や動機、自分自身の強みやスキルなどをリストアップしてください。また、今の仕事で活かせていないスキルや特技なども書くことで、自分自身の仕事のやり方や考え方を見つめ直すことができます。
自己分析をする際は、多角的な視点を持つことが大事です。経営層・上司・部下・顧客など、様々な視点から自分の強みや能力を分析してみてください。
自己分析結果と業務を結びつける
自己分析が終わったら、その結果から把握した自分の強み・弱みと業務を結びつけていき、仕事の捉え方を見直していきましょう。
自己分析の結果から、自分の強みや特技を仕事のどこに活かせるのか把握することが可能です。逆に自分の弱みや不得意なこともわかるので、どのような工夫や改善が求められるのか考えられるようになります。
実行・検証・改善
自己分析から把握できたスキルを業務に活かしていきましょう。今までつまらないと感じていた仕事も、強みを活かすことで面白いものに変わるはずです。結果が出れば、ますます面白いと感じるようになるでしょう。
弱みは他の従業員の協力を得てカバーしてもらったり、強化してもらったりすることが大切です。そのためには、自分の仕事のやり方だけではなく、人間関係も見直していく必要があります。従業員が結束して業務を行う環境が整えば、業務の効率化や生産性の向上につながります。
また、ジョブクラフティングでもPDCAを回していくことが重要です。常に目標や仕事を見つめ直し、検証と改善を進めていきましょう。
企業側が知っておきたいジョブクラフティング実施の注意
ジョブクラフティングを実施する際、企業が知っておきたい注意点があります。具体的にどのようなことに気を付けつつ取り入れると良いのか、解説していきましょう。
企業が従業員の主体性を受け入れる姿勢をあらわす
ジョブクラフティングの成果を発揮するためには、企業側が従業員の主体性を受け入れる姿勢を持つことが大切です。しかし、姿勢を持っただけでは、その意志は従業員に伝わりません。そのため、主体性を受け入れる姿勢を明確に表明する必要があります。
しっかり意思を表明すれば、従業員の意識にも変化を与えられます。また、表明したからには企業側はトップダウンの組織構造を見直し、従業員の主体性を受け入れる状態に変えていかなければなりません。
業務の棚卸しや自己分析の時間を意識的に設ける
ジョブクラフティングを実施していくためには、業務を見つめ直す時間や自己分析を行う時間を設ける必要があります。業務内容の洗い出しや自己分析を行うには、それなりの時間がかかってしまうものです。
通常業務の合間を見て取り組むとなると、正確な洗い出しや自己分析ができず、ジョブクラフティングの成果が出ない可能性もあります。そのため、会社側で研修やワークショップを実施するなど、意識的に時間を設けることが大切です。
しかし、残業や人材不足があると思うように時間が取れず、ジョブクラフティングを進めることが困難になります。ITツールなどを導入して業務を効率化し、労働時間や人材不足の課題を解消する取り組みが求められます。
従業員の主体性向上だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析
ジョブクラフティングは個人の主体性を向上できる一方で、主体性を保とうとして個性や多様性が発揮されすぎて、協調性が失われる可能性があります。そのため、協調性が不可欠なチームワークが求められる業務をする人にとって、ジョブクラフティングの考えが不向きに感じてしまう場面もあるでしょう。
組織力を最大化するためにも、チームワークが重視される業務が中心の従業員の主体性やモチベーションの向上などは、別に指導や運用を検討していく必要があるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、タレントマネジメントシステムの「タレントパレット」です。タレントパレットでは、あらゆる人材データの統合・分析ができます。例えば、従業員の経歴・スキル・適正などをデータとして把握できるので、主体性を育むための人事育成や人事配置などの最適化に役立ちます。
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企業の価値観やビジョンを広めておく
ジョブクラフティングを実施する前に、従業員に企業の価値観やビジョンを広めておくことが大切です。ジョブクラフティングでは、個人の業務の捉え方を見直す機会となります。
企業と従業員が共通して目指す目標がはっきりしていないと、ただ自分自身と向き合うだけで終わり、企業のためにはなりません。このような事態を避けるためにも、価値観やビジョンを共通させたうえで仕事の捉え方を見直してもらうことも必要です。
価値観やビジョンを浸透させる手段としては、社内報や社内SNSなどがあります。すぐに浸透するものではないので、繰り返し情報発信していくことが大切です。
ジョブクラフティングで変化させる3つのこと
ジョブクラフティングを実施することで、具体的に変化させることは以下の3つです。
仕事の方法
ジョブクラフティングでは、仕事のやり方を大きく変えていかなければなりません。仕事は複数のタスクから成り立っているので、業務の手順ややり方、量などを変える必要があります。
例えば、他の業務に追われてやりたい仕事をする時間が確保できない場合、業務のやり方を見直さなくてはなりません。自分がやらなければならない仕事、他の従業員に任せられる仕事に分けることで、自分の仕事量を減らすことが可能です。また、業務手順を書き直し、効率化できる部分がないか検討することも求められます。
人間関係
人間関係のあり方を変えることも、仕事のやりがいに関わる大事な要素です。受け身の姿勢のままでは、主体性は育まれません。積極的に他の従業員や顧客とのコミュニケーションを増やし、良好な関係を築くことで働きやすさは変わってきます。
例えば、上司の指示や部下の指導に追われている状態では、他の従業員との信頼関係が構築できていない可能性が高いです。コミュニケーション不足は他の従業員の業務や人材の育成などあらゆる部分で影響を与える可能性があるので、意識的にコミュニケーションを取り、関係構築や改善に取り組んでいく必要があります。
仕事の捉え方
ジョブクラフティングでは、個人のタスクや仕事全体をどう捉えるかを変化させることもかかせません。なぜこの仕事が必要なのか考え、仕事をするうえでの喜びや使命などの意義を再定義することで、モチベーションは大きく変わります。
例えば、給与計算業務はタスク自律度が低く、またルーティン業務なので「つまらない」「面倒くさい」と感じることがあるでしょう。しかし、仕事の重要性や会社や従業員の役に立っていることが認識できれば、やりがいや責任感が生まれてきます。
まとめ
従業員が主体的に仕事に取り組むことは、業務効率の改善や生産性の向上、離職率の低下など企業にとって大きなメリットがあります。ジョブクラフティングは従業員の主体性を高め、働くことにおいての満足度も高められるため、企業側で実施のサポートをしていくと良いでしょう。
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