社内公募制度の仕組みは?3つの類似制度との違いと導入時のポイントを解説


社内公募制度の仕組みは?3つの類似制度との違いと導入時のポイントを解説

社内公募制度は、人材不足が起きている部署への異動を希望する従業員を募る制度です。従業員の自律的なキャリア形成を促すため、注目を集めています。本記事では、社内公募制度の概要や類似制度との違い、導入時のポイントを解説します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

社内公募制度とは、各部署の人材不足が起きている際に、不足している部署への異動を希望する従業員を募る制度です。

従業員の自主性を尊重するため、モチベーション・生産性の向上につながることが期待され、多くの企業で注目されています。

本記事では、社内公募制度の仕組みやよく似た自己申告制度・社内FA制度・人事異動との違い、導入時のポイントを解説しますので、ぜひご覧ください。

社内公募制度とは?

社内公募制度は、従業員のキャリアを形成するための支援制度の一つです。

ここでは、社内公募制度とは具体的にどのような仕組みなのか、また現在多くの企業が注目している理由についても詳しく解説します。

社内公募制度の仕組み

社内公募制度は、「人材不足により業務が回っていない」などの理由で人材補充を求める部署に対し、従業員が自主的に部署異動を希望できる制度です。

希望部署への異動を考える従業員が立候補する仕組みであるため、特にやる気があり、該当部署の業務に合う能力を持った従業員が集まるでしょう。

また、部署異動によるキャリアアップや将来的なキャリア形成も望めることから、企業・従業員ともにメリットがある制度といえます。

社内公募制度が注目される理由

社内公募制度が注目されている背景には、企業が成果至上主義に変わりつつあることが挙げられます。

以前の日本で多く採用されていた仕組みが、年功序列です。長期間勤務すればキャリアアップが見込める仕組みのため、本人の能力に関係なく勤続年数が長い従業員であれば、経営層に近い役職に任命されるケースもありました。

しかし現在では、勤務年数に関係なく、会社に貢献する人材に対して高い評価を与えるという風向きに変わってきています。そのため、従業員の自律的なキャリア形成が求められるようになりました。

その結果、社内公募制度などキャリア形成に関わる制度が注目されるようになったのです。

社内公募制度導入の動き

社内公募制度導入に関するいくつかの調査では、調査対象企業の半分程度が社内公募制度を導入していることが分かっています。

実際に活用している企業では、従業員のモチベーションアップや自立的なキャリア形成の支援などにつながっているという効果が期待されています。

ただし、導入した制度を実際に活用している企業はまだ少ないのが現状です。活用するには、募集する部署が少ない、各部署同士の人材の調整が難しいなど、様々な課題があります。

社内公募制度に類似する3つの制度

社内公募制度以外に、従業員がスムーズにキャリア形成を行えるような制度はいくつかあります。

一般的に企業に導入されている制度が、以下の3つです。

  • 自己申告制度
  • 社内FA制度
  • 人事異動


それぞれ制度の詳しい仕組みが異なるため、どの制度が自社に適しているか正しく理化しておく必要があります。

ここでは、3つの制度について詳しく解説します。

1.自己申告制度

自己申告制度は、従業員が人事部に伝えた内容を人事異動案の参考にする制度です。

企業で従業員を異動させる際は、自己申告制度による申告情報のほかに、各部署の状況や従業員の適性など、様々な情報が必要です。

自己申告制度は、あくまで異動を決める際の参考資料にしかなりません。そのため、異動に関して協議されたかが分からないのが特徴です。

一方社内公募制度は、応募した結果が明らかになります。

2.社内FA制度

社内FA制度は、部署の募集がなくても異動希望を出せる制度です。

一般的に、従業員が経歴やスキル、異動希望部署などの内容を申告し、企業が定めた条件をクリアした場合は従業員に「FA権」が与えられます。

FA権が与えられた従業員の情報は異動希望部署へ伝えられ、面談で合意がされれば異動が決定します。

社内公募制度との大きな違いは、部署の募集があるかどうかという点です。社内公募制度は、人員不足が発生している部署が新しい人材を求めて募集を行います。

3.人事異動

人事異動は、従業員の意思とは関係なく異動が実施される制度です。年度末に実施する企業が多く、社内公募制度や社内FA制度とは違う性質を持っています。

従業員の業務が一定になるのを防ぐ、従業員の能力と業務内容に差が出ないようにするなどが主な目的です。

社内公募制度は、一般的に全社員が対象とされていますが、人事異動は異動が実施される部署の従業員が対象となっています。

社内公募制度を導入する企業のメリット


社内公募制度の導入により、企業にとって様々なメリットが生まれます。主なメリットは以下の4つです。

  • 従業員のモチベーションの向上
  • 採用コストの削減
  • 従業員の定着率の向上
  • 企業の生産性の向上の期待


ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。

従業員のモチベーションの向上

社内公募制度を取り入れることにより、従業員のモチベーションが大きく向上する可能性があります。

部署異動は企業主体になって行われるという状況では、従業員が自主的にキャリア形成を行うのは難しいです。

社内公募制度では、従業員自身の意思・能力によって、自ら新しいキャリアに進むことができます。そのため、業務に対しやりがいを感じやすく、モチベーションもアップしやすいでしょう。

採用コストの削減

新しい人材を社外から募集する場合、採用に大きなコストがかかります。採用活動や人材募集広告、採用後の人材教育などは、ある程度のコストと時間、労力が必要です。

社内公募制度を取り入れれば、社内で人材補充が完結するため、採用コストの削減につながります。また、社内の従業員であれば、すでに企業理念や経営目標、社風なども理解しているため、教育にあまり時間をかけず、即戦力になってもらえる点もメリットです。

従業員の定着率の向上

どのような業界でも、転職が新しいキャリア形成の選択肢の一つとして、選ばれやすくなりつつあります。向上心の高い人材であればあるほど、現職で自分のやりたいことができなければ、転職を希望するでしょう。

社内公募制度を取り入れることで、従業員が希望する業務や職種が社内にあれば、転職せずに済みます。

転職をせずに車内で新しいキャリア形成を選択する従業員が増えれば、従業員の定着率向上につながるでしょう。

企業の生産性の向上の期待

社内公募制度は、従業員のスキルアップに貢献し、新しいアイデアや自身の課題に気づく機会を与えます。

企業内の部署がすべて同じメンバーで長年稼働していれば、新しい学びや気づき、アイデアが生まれにくいです。新たなメンバー構成になることで、それまで生まれなかった新しい考えが生まれる可能性があるでしょう。

また、新しい部署で働くことで、従業員が今まで気づかなかった自身の強みや適性を発見することにもつながります。その結果、従来よりも効率よく業務が進み、企業全体の生産性向上が期待できるでしょう。

社内公募制度を導入する企業のデメリット

社内公募制度の導入には、メリットだけではなくデメリットも存在します。主なデメリットは以下のとおりです。

  • 人事部の負担の増加
  • 選考から外れた従業員のモチベーションの低下
  • 人材配置のバランスが崩れる可能性


メリットだけではなくデメリットも把握し、社内公募制度を効果的に活用できるようにしましょう。

人事部の負担の増加

社内公募制度は、主に人事部が管理します。従業員がどの部署を希望するのかは予測できないため、管理が煩雑になる可能性があるでしょう。

部署ごとや個人ごとに、キャリア形成の筋道となるキャリアパスを設けている場合、異動により変更が生じます。また、異動によって人事評価を見直す必要も出てくるでしょう。

このように、予測できない部署異動が起こることで、人事部の負担が増加しやすいのがデメリットの一つです。

選考から外れた従業員のモチベーションの低下

選考から外れた従業員は、業務に対するモチベーションが低下する可能性があります。募集人数より応募数が多ければ選考から外れる従業員が出てきます。

選考から外れた従業員は、選ばれた従業員と自分を比べて自信をなくしてしまったり、選ばれなかった事実に対して失望感を感じたりしてしまうでしょう。業務中も選考から外れたことばかり考えるようになれば、業務にも影響を及ぼす可能性もあります。

人材配置のバランスが崩れる可能性

人材の配置を変更することでバランスが崩れてしまう点も、制度導入時には考慮しなければなりません。

所属していた部署にとって必要とされる人材が他部署へ流出してしまった場合、業務の効率や成果が下がってしまう可能性もあります。

人材流出のあった部署は弱体化し、逆に人材が補完された部署に関しては強化されるなどの影響があれば、企業全体のバランスが崩れるでしょう。

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社内公募制度の流れ

社内公募制度の主なステップは、以下のとおりです。

  1. 募集する部署の収集・企業内で公開
  2. 従業員の応募受付
  3. 選考
  4. 確定
  5. メンバーの人数・業務内容の調整


はじめに、人材が足りていない部署を洗い出す必要があります。人事部は、人材補完を希望する部署から提出された申告内容をもとに、募集部署を決定して企業内で公開します。

企業内で公開した後に行うのが、全従業員に向けた応募受付です。人事部は、全従業員が平等に募集情報を閲覧して異動希望を出すか判断できるようにしましょう。

従業員は、部署によって応募要項が異なるため、希望する部署があれば応募要項に沿って応募用紙をまとめる必要があります。

応募者が集まったら、希望した従業員の書類選考や面接に進みます。面接を行うのは、基本的に募集をかけた部署の上司や人事部であることが多いです。

書類選考や面接を経て合否が決まったら、応募者全員に合格・不合格の連絡をします。

最後に、異動による人数のバランス調整や業務内容の調整、引継ぎなどを行い、社内公募制度で不具合が起きないようにしましょう。

社内公募制度で押さえておきたい4つのポイント

社内公募制度をスムーズに稼働させるためのポイントは、以下の4つです。

  • 社内公募制度のルールの明確にする
  • 従業員への社内公募制度の説明を徹底する
  • 応募者の情報管理を徹底する
  • 適切な調整やフォローを実施する


それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

社内公募制度のルールを明確にする

初めて社内公募制度を導入するとなれば、想定外のトラブルや問題が起こる可能性もあるでしょう。

従業員の応募がまったく集まらない、逆に応募が集まりすぎてしまうケースなどが考えられます。このような事態が起こっても、基本方針や運用ルールをしっかりと定めておけば、それらのマニュアルに沿って対応可能です。

従業員への社内公募制度の説明を徹底する

社内公募制度は企業によって運用方法が異なります。自社の社内公募制度の概要やルールを従業員へ周知しておくことが大切です。

制度の趣旨や必要な手続き、選考時期などを説明する、全従業員を対象とした説明会を行うとよいでしょう。募集しても応募がなく、社内公募制度を上手く活用できなかったという事態を防ぐために、全従業員が理解できるよう分かりやすく説明する必要があります。

応募者の情報管理を徹底する

人事部は、すべての応募者の情報管理を徹底しなければなりません。

基本的に「別の部署に異動したいと思っている」という事実は秘密にしておきたいという従業員が多いでしょう。応募していることが周囲に伝わると、所属部署内の人間関係に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、合否についても、ほかの従業員には知られたくないと思う従業員がほとんどでしょう。社内の人間関係の悪化を防ぐためにも、応募者の情報管理の徹底が大切です。

適切な調整やフォローを実施する

従業員の異動が決定したら、人事部は適切な調整やフォローを行う必要があります。

異動する従業員が現在所属する部署で、欠員が出たり業務が回らなくなったりすることがないよう、部署移動の時期やタイミングを考えなければなりません。また、異動先の部署内で良好な人間関係を築けるようなフォローや選考から外れた従業員に対するフォローが求められます。

異動が確定した後の調整・フォローが適切でなかった場合、制度導入によるデメリットの方が大きくなってしまう可能性があるでしょう。

社内公募制度を運用する企業の事例

ソニー株式会社では、現部署に2年以上所属していることを条件として、異動希望を出せる「社内募集制度」が活用されています。

希望を出す際に上司の許可は必要なく、制度利用者は累計7,000名を超えるなど、適材適所を実現している企業の一つです。

また、エン・ジャパン株式会社では、組織強化を目的として社内公募制度が導入されています。こちらでも募集の際に上司への相談は必要ありません。従業員のキャリア形成や特定の部署の組織力強化など、従業員と企業双方がメリットを感じられる前向きな制度です。

まとめ


社内公募制度は、人材が不足している部署が、企業内で新しい人員を求める制度です。従業員は自らの意思で新しいキャリア形成を試みることができます。

社内公募制度を取り入れることで、企業にとって様々なメリットがありますが、実際に導入する際は、正しく運用できる体制を整えることが必要です。また、導入した制度を十分に活用するためには、従業員全員に制度を正確に理解してもらう必要があります。

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