従業員エンゲージメントとは
従業員エンゲージメントを高めるには、基本的な部分を押さえておく必要があります。そこで、まずは従業員エンゲージメントの意味を解説します。
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従業員エンゲージメントの意味
そもそもエンゲージメントは、契約・制約といった意味合いで使われます。従業員エンゲージメントは「従業員が企業に貢献したいと考える意欲」です。従業員エンゲージメントは愛社精神や忠誠心とも表現でき、人事領域においては従業員と企業との結びつきを意味します。
従業員エンゲージメントが高い状態とは
従業員エンゲージメントが高い状態に明確な定義はありません。しかし、一般的には以下の状態であれば、従業員エンゲージメントが高い状態と見なされます。
・従業員が職場環境や評価制度に満足している
・仕事で成長の機会があると従業員が感じられている
・従業員が企業の目標やビジョンに共感している
つまり、従業員エンゲージメントが高い状態とは、従業員と企業が一体となって目標達成に向けて努力し、相乗効果を生み出している状態を指します。
従業員エンゲージメントが重要とされる背景
生存競争が激しいビジネスシーンで、従業員エンゲージメントが重要とされる背景を解説します。
人材の流動化
人材の流動化が進み、企業は従業員エンゲージメントを重視するようになりました。働き方の多様化により、終身雇用を望む労働者が減少したうえに、転職エージェントや経験者を採用する企業は増えています。自社に優秀な人材を定着させるには、従業員エンゲージメントを高めて離職を食い止めなくてはいけません。
キャリア自律の促進
キャリア自律とは、個人が自律的にキャリア開発することです。近年、企業主体ではなく、各従業員がキャリアを選ぶ重要性が高まっています。企業が提供する研修や教育だけでは、急速な技術革新やスキル要件の変化に対応しきれないためです。従業員エンゲージメントが高い従業員は、自発的に学習し、積極的にスキルアップに取り組みます。
コミュニケーションの非対面化
リモートワークの普及により、コミュニケーションの非対面化が進行しました。しかし、社内コミュニケーションが不足した状態では、従業員が不安や不満を抱えるでしょう。企業は非対面化という新しい習慣に対応し、従業員エンゲージメントの向上に力を入れる必要があります。
従業員エンゲージメントを高める際の課題
海外と比べると、日本は従業員エンゲージメントが低い傾向が見られます。従業員エンゲージメントを低くさせる要因とされているものが、日本企業特有の制度や慣習です。
従来の日本企業では、真面目で従順に働く従業員を称賛する文化がありました。しかし、従業員エンゲージメントを高めるには、自発的に考えて行動する従業員を育成し、彼らが活躍できる環境を整備することが重要です。
従業員エンゲージメントを高めるメリット
ここでは、従業員エンゲージメントを高めるメリットを解説します。従業員エンゲージメントを高め、企業力を底上げしましょう。
離職率が低下する
前述のように、従業員エンゲージメントを高めると離職率の低下につながります。従業員エンゲージメントの高い従業員は職場や職務に対する満足度が高く、この環境で働き続けたいと望んでいるためです。優秀な人材が定着すれば、採用コストの削減にも役立つでしょう。
職場が活性化する
従業員エンゲージメントが高い職場では、従業員が業務に対してポジティブに取り組みます。建設的な意見が活発に交わされると、職場が活性化するでしょう。従業員同士が互いに良い影響を与え合うようになって結束が強まり、やがて企業全体のパフォーマンスが高まります。
顧客満足度を向上できる
従業員エンゲージメントを高めると、顧客満足度の向上にもつながります。従業員が業務に前向きに取り組むと仕事の質が高まり、その結果、提供する商品やサービスの質も向上するためです。優れた商品やサービスは顧客満足度を高め、リピーターの獲得にも役立ちます。
生産性・業績がアップする
従業員エンゲージメントの向上は、個々のパフォーマンスを上げるだけではなく、企業全体の生産性も高めます。前述のように、顧客満足度の向上や業績アップにもつながるでしょう。つまり、従業員エンゲージメントを高めることは、企業の生産性や業績を向上させるための重要な手段といえます。
社外からの信用が高まる
従業員エンゲージメントが高い企業は、各従業員が業務に対して積極的に取り組むことで、社外から高い信用を得られます。また、熱心に仕事に取り組むイメージが広まると、世間に働きがいのある企業として認識されるでしょう。求職者に注目されると、優秀な人材の獲得にも効果的です。
従業員エンゲージメントを高める12の施策
従業員エンゲージメントを高める具体的な施策を解説します。さまざまな規模の施策があるので、できるものから取り組んでみましょう。
従業員エンゲージメントに着目した組織の作り方について詳しく知りたい人は、以下の資料も参考にしてください。
1.企業目標・ビジョンの浸透
従業員エンゲージメントを高めるには、企業の目標やビジョンに対する従業員の共感が不可欠です。従業員が企業の目標やビジョンを意識せずに働くと、一体感が生まれません。日頃からミーティングや勉強会、研修などを通じて企業の目標やビジョンを周知・浸透させましょう。
2.自社の習慣の見直し
時代とともに優先されるものは変化するため、定期的に自社の習慣を見直しましょう。時代に合わない習慣を続けていると、従業員の不満や疑問を招く恐れがあります。業務を非効率化させているタスクがないか、時代錯誤のルールやマナーが残っていないかなど、定期的に状況を確認しましょう。
3.コミュニケーションの促進
従業員エンゲージメントを高めるには、社内コミュニケーションの活性化も重要です。コミュニケーションを取りにくい環境では、従業員がやりにくさを感じる場合があります。きちんと情報が伝わらないと、抜けやミスも発生するでしょう。
人間関係のしがらみのない職場環境づくりや、チャットのようなコミュニケーションツールの導入などが、コミュニケーションの促進に効果的です。
4.リーダーシップ・マネジメント強化
業務の効率化には、リーダーシップやマネジメントが重要です。上司のマネジメント能力を強化するべく、研修や勉強会を実施しましょう。なお、近年は支援型リーダーシップが注目されています。ワンマンな支配型リーダーではなく、個人の能力を最大限に生かす支援型リーダーを育成することが重要です。
5.チームワークの改善
チームワークの改善も、従業員エンゲージメントを高めるポイントです。業務はチーム体制で行うケースが多く、一緒に働く人同士の相性が悪いと、従業員エンゲージメントは高まりにくくなります。優れたチームワークは、適所適材の人員配置があってこそといえます。従業員個々の能力や性格を考慮して配置を検討しましょう。
6.ライフワークバランスの重視
ライフワークバランスの良し悪しは、従業員エンゲージメントに大きく影響を及ぼします。長時間残業や、負担・責任過多な業務は、パフォーマンスと生産性の低下を招きやすいでしょう。慢性的につらい状態が続くと、仕事へのモチベーションにも影響が出かねません。従業員が高いエンゲージメントを維持できるよう、仕事とプライベートの調和を図りましょう。
7.成長・キャリア開発のサポート
成長やキャリア開発を支援する体制作りも、従業員エンゲージメントを向上させるポイントです。近年は、意欲的にスキルアップに励む労働者が増えつつあります。成長を実感できない環境に嫌気が差し、退職を選ぶ従業員も出てくるかもしれません。
積極的に人材育成を支援すると、自社の戦力強化も可能です。「企業は自分に期待してくれている」と従業員に意識してもらえれば、愛社精神・帰属意識の高まりも期待できます。
8.人事評価の制度改革
従業員エンゲージメントを高めるには、働きぶりを正当に評価されていると従業員が実感できなくてはいけません。納得感の乏しい人事評価では、モチベーションの維持が困難です。評価の公正性や報酬・待遇との連動性を再考し、必要に応じて制度改革・改善に取り組みましょう。
9.従業員に合わせた職場環境の整備
働きやすい環境を整えるといっても、従業員それぞれの事情や求める職場環境は異なります。多様化した仕事への価値観を受け止め、各従業員が集中して働ける体制を整えましょう。働き方の選択肢を複数用意できれば、何らかの事業でフルタイムでの勤務が難しくなったときも、離職も食い止められます。
10.職務への満足度アップ
従業員のエンゲージメント向上に向け、職務満足度を高める工夫も欠かせません。たとえば、適性や能力、本人の希望に沿った人材配置は、職務満足度を大いに高めます。仮に配置変更が難しい場合は、現在の業務の重要性や従業員の貢献度について丁寧に説明し、理解を深めてもらうと良いでしょう。
11.承認・称賛の習慣付け
承認や称賛を積極的に行う習慣は、従業員エンゲージメントを向上させます。自発的な行動を肯定するフィードバックを受けると、従業員のモチベーションは大いに高まるでしょう。努力や成果を適切に評価し、優れた行動を認める組織文化を醸成してください。なお、定期的な表彰制度の導入も、従業員エンゲージメントの向上におすすめです。
12.従業員の心身の健康支援
心身の健康状態は、従業員エンゲージメントの維持・向上にかかわる重要な要素となります。従業員の家庭事情やメンタルヘルスに配慮しつつ、適切なサポートを提供しましょう。心身の健康に問題を抱える従業員を適切にサポートできると、従業員エンゲージメントを向上させられます。
従業員エンゲージメントを高める4つのステップ
従業員エンゲージメントを高める4つのステップを解説します。データに基づき、改善策を立案・実施しましょう。
1.従業員エンゲージメントの定義付け
前述のように、従業員エンゲージメントの詳細な定義や基準は企業によって異なります。従業員エンゲージメントの向上に取り組む際は、事前に自社における定義や、具体的に何を達成したいかを明確にしてください。初期の段階で担当者間の認識を統一しておくと、従業員エンゲージメントの向上につながる施策をスムーズに立案できます。
2.現状における課題の洗い出し
目標達成に向け、従業員エンゲージメントを引き下げている課題を洗い出しましょう。課題の把握には、エンゲージメントサーベイやアンケート、ヒアリングなどが役立ちます。
エンゲージメントサーベイとは、従業員に対するいくつかの質問により、従業員エンゲージメントをスコアリングすることです。エンゲージメントサーベイを分析すると、自社の課題が分かります。詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
企業の成長に必須な「エンゲージメント」、 よくある「落とし穴」とサーベイ作成のポイントとは
3.施策の立案・実施
従業員エンゲージメントを引き下げている課題が分かれば、解決のための施策を検討できます。たとえば、コミュニケーション不足が課題であれば、定期的な面談やコミュニケーションツールの導入などが有効です。なお、施策を打っても短期間で効果が出るとは限りません。長期的な視点で施策を継続しましょう。
4.効果検証・改善
施策の実行後は、効果検証が重要です。PDCAサイクルを回し、施策をブラッシュアップしていきましょう。従業員エンゲージメントの改善には長期的な視点が必要だと述べましたが、いっこうに期待した効果が現れない場合は、施策を改善すべきかもしれません。課題の本質を捉えていなければ、施策を打っても大きな効果は得られないと考えられます。
従業員エンゲージメント向上の事例
タレントパレットの導入により、従業員エンゲージメントを向上させた事例を解説します。
エンゲージメントが高い企業の特徴は?メリットや成功事例も紹介
セガサミーホールディングス株式会社の事例
セガサミーホールディングス株式会社は、人的資本の活用を目的として従業員の可視化に取り組んでいます。タレントパレットを導入した結果、企業内で従業員のデータを共有できました。また、タレントパレットの分析機能を活用すると、個々の従業員を詳細に理解可能です。その人に必要なアプローチができたことで、従業員エンゲージメントの向上にもつながりました。
ブリッジインターナショナル株式会社の事例
ブリッジインターナショナル株式会社は、従業員のスキルの可視化に取り組みました。タレントパレットを導入した目的は、データに基づく人事・マネジメント計画です。システム導入後は従業員のスキルの可視化が実現し、教育や評価の機会が均等化されました。また、人材情報の一元管理により、ミスマッチを抑えた人材配置も実現しています。
学校法人阪南大学の事例
学校法人阪南大学は、人事情報の収集・管理の効率化を目的に、タレントパレットを導入しました。システムの導入後は、質の高い情報を数多く収集できています。今後はハイパフォーマーが示す共通要素を抽出し、合致する求職者を積極的に採用する意向があるとのことです。
まとめ
従業員エンゲージメントを高めるには、従業員個々の事情や気持ちを理解して施策を検討する必要があります。働きがいがあり社内外から信頼される企業に成長するために、従業員エンゲージメントを高めましょう。
タレントパレットは、人材データを分析・活用して「科学的人事戦略」を実現するタレントマネジメントシステムです。大手をはじめ数多くの企業に導入され、コンサルティングの知見も合わせてお客さまの課題を解決します。従業員エンゲージメントを高めたい人は、ぜひタレントパレットの導入をご検討ください。
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