iCDスキルとは?
iCDを活用すると、時代に求められる企業の姿を把握でき、効率的な人材育成の施策を推進できます。iCDの具体的な役割や、その内容について解説します。
iCDの役割
iCD(iコンピテンシ・ディクショナリ)とは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している特定職種向けに、作成されたスキルテンプレートです。企業が着実に成長するために必要なタスク(業務)をまとめた「タスクディクショナリ」と、タスクの遂行に必要なスキル(能力)をまとめた「スキルディクショナリ」から構成されています。
これまでにあった「ITSS」「UISS」「ETSS」という3つのスキル標準が統合され、これからの企業に必要なタスクとスキルを体系的に網羅しており、新たな業務にも柔軟に対応できる構造になっています。
また、iCDは特定職種を対象としている場合がほとんどですが、営業職などの一般職種向けのものもあるため、広い範囲の企業で活用できます。
企業成長のためのキーやあるべき姿を見える化
iCDは社会情勢を踏まえた企業成長に繋がる人材育成プロセスを提供し、企業があるべき姿の見える化を目標として策定されています。タスクを着実に遂行することでビジネス上に必要なあらゆるスキルが向上し、それがコツコツ積み重なることで企業の成長に繋がるという点に、着目しているのが大きな特徴です。
社会情勢がどのように変化しても、企業の成長に重要なのは常に「人材」です。そのため、どんな人材が自社に必要なのかを正確に把握することに関して、以前にも増して注目が集まっています。iCDは、企業成長に必要なキーをみつけるヒントとして、活用できます。
効率的な人材育成のための施策を推進
iCDのタスクディクショナリとスキルディクショナリは、タスクとスキルを構造的に表しており、自社に合わせて取捨選択できるようになっています。そのため、根拠を持って必要とする課題の提示ができ、人材育成に効果的な施策を効率的に推進できます。
また、既存の業務以外にも柔軟に対応できる構造であるため、新たな業務が発生した場合でも活用できます。これまで情報不足などで人材育成が滞っていた企業の人材育成施策を活発化し、競争力のある企業への成長をサポートします。
スキル標準化とは?
iCDは、企業の成長に必要な、社内全体のスキル標準化を実現するために活用されます。ここでは、スキル標準化の具体的な目的やスキル管理の目的について解説します。
スキル標準化の目的
企業を成長させるためには、必要な知識を持っているのが一部の社員だけという状況を解消し、業務に必要なノウハウを、社内の全員が共有出来る状態にすることが重要です。
スキル標準化は、業務担当の社員が抜けた場合でも他の社員で引き継ぎ、支障なく進めていけるように、社員一人ひとりのスキルを統一しておくことが目的です。スキル標準化が達成できれば、社員全員のスキルが底上げされることが期待できます。
また、スキル標準化については、スキル管理の一環として語られることもあります。
スキル管理の目的
スキル管理は、単純に持っている公的資格や社内資格を管理することではなく、社員一人ひとりのスキルを総合的に把握・管理することを目的としています。スキル管理に必要なスキルの項目は、スキル定義の標準化をしたうえで設定されます。そうでなければ、本人や評価者の属人的な評価になってしまい、公平な判断ができません。
スキル項目の設定後は、自己評価と上司の評価を別々に行い、それぞれの結果を統合して不足しているスキルを確認します。その社員のスキルを上位レベルにするために必要なスキルを把握できたら、目標設定を行います。
スキル管理における社員それぞれに対する評価と目標設定は、定期的に行われます。そのため、上司や人事担当者が社員のスキルアップ状況をトラッキングできるのも特徴です。
iCD活用のためのポイント
iCDを活用し、成果に繋げるためには、正しい活用方法を知っておく必要があります。ここでは、より効果的に活用するためのポイントや活用プロセスについて解説します。
タスクの管理をする
企業が人材育成をする目的は、企業の成長に必要な将来のビジネスを担う人材を育てることです。その目的を達成するには、現在の業務内容と新しく生まれるビジネスに必要となるタスクを明確にし、自社に合ったタスク一覧を作成することが必要です。
自社に合わせたタスク一覧を作成する際には、iCDのタスクディクショナリを活用します。自社の経営戦略や事業計画、上層部の意見を考慮し、タスクディクショナリにあるさまざまなタスクを元に整理・検証しながら、タスクを選択します。
タスクを分析する
タスク分析では、企業のビジネス目標を達成するために、どのようなタスクが必要になるかを具体化します。
ここでは、現状の業務も考慮した上で将来のビジネスを担うタスクを選定しますが、一から考えて必要なタスクを具体化していくのではなく、iCDのタスクディクショナリのタスク一覧を活用することで、効率よく進めることができます。
タスクディクショナリ内のタスク一覧は、組織や個人に必要なタスクが、「タスク大分類」「タスク中分類」「タスク小分類」「評価項目」の4段層に整理され、体系化してあります。さまざまなタスク項目が網羅されていますが、自社に必要なタスクが不足している場合は、随時追加していくことが重要です。
タスクや役割を定義する
タスクディクショナリを元に自社に合うタスクを選定したら、それぞれのタスクがビジネス目標に合っているか検証すると同時に、社内の部署や役職ごとの役割に割り当てていきます。役割にタスクを割り当てる中で、過不足が見つかった場合は、調整します。
タスクの割り当てが終わったら、役割ごとに妥当性があるか確認し、自社のタスク一覧の精度を上げていくことが重要です。タスクの割り当てには、タスクディクショナリ内にあるタスクプロフィールを活用し、差異がないか確認しながら行いましょう。
判定基準を策定する
必要なタスクを選定できたら、次にタスクごとに達成状況を把握するための評価項目や判定基準を策定します。これによって、各社員が割り当てられた役割の遂行状況を自分で判断可能です。
評価項目や判定基準の策定にも、タスクディクショナリのタスク一覧が活用できます。タスク一覧には、各タスクの遂行状況を把握するための評価項目も例示されているため、それを参考に自社の業務内容や業務規定に合わせて、変更・追加しながら策定すると効率的です。
評価項目が策定できたら、同時にそれを判定する基準も具体化して公平な判断ができるようにします。
試行と改善を行う
iCDのタスクディクショナリを活用して作成したタスク一覧や、評価項目、判定基準を用いて、対象の社員にそれぞれ自己診断をしてもらい、その結果を確認します。実際に試行することで、選定したタスクやその評価項目、判定基準が正しいかを検証できます。
上司や人事担当者から見て、診断結果に整合性があるか、適当であるかを確認し、必要があれば評価項目や判定基準の見直し、改善を行います。このように、検証・改善を繰り返すことで、より精度の高い自社独自のタスク一覧が作成できます。
PDCAを使って効果的に運用
企業の独自タスク一覧の作成は、iCD内タスクディクショナリのタスク一覧の中から、分析、検証の結果、選定されます。そのため、企業ごとに異なるタスク一覧が作成されます。
iCDは、IT関連業務がディクショナリ形式で提供されているため、ビジネス戦略や事業計画など、その企業に合ったタスクを容易に選択でき、自社の業務を少ない工数で定義できます。
それぞれの企業に適切なタスク一覧を作成したうえで、PDCA(Plan・Do・Check・Action)で、効果的な運用を継続していくことができます。
iCDを効果的に活用できている事例
実際にiCDを活用するためには、社内人材のデータベースを簡単に管理できるツールを使うと便利です。株式会社インターネットイニシアティブでは、人材育成施策の課題解決のために、効率的にiCDの活用ができるタレントパレットを導入しています。
タレントパレットを導入したことで、社員の情報や外部のテスト結果などを簡単にデータベースに反映できるようになり、スキルの見える化が可能となったことで、人材育成に関する課題の解決に役立っています。
実際に社員一人ひとりのキャリアについて、方向性や選択肢を明確化できるようになったほか、評価担当者が適正な評価ができるようになったという効果が出ています。
また、タレントパレットで人材管理を一元化したことで、戦略的な人材育成の向上や採用ができるようになり、会社の戦略に合わせて新しいスキルセットやタスクの導入なども、積極的に検討することが可能です。
まとめ
社会全体でDXが推進される中で、人材不足や人材育成に悩む企業は多くあります。人材育成の課題を解決するためには、社内のスキル標準化が重要とされており、急務となっていますが、iCDを活用すれば何もない状態でスタートするよりも短時間で、スキルの標準化を実現できます。本記事で紹介したiCD活用のポイントを、ぜひ参考にしてください。
タレントマネジメントシステム「タレントパレット」では、人材データベースの作成で人材の見える化を実現できるほか、人材育成や最適配置に役立つ人材データ分析機能などが搭載されており、これまでに大手企業を始め、数多くの企業に導入されています。人材育成などで悩んでいる企業のサポートツールとして最適です。
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