こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
労働人口の減少や働き方改革などの社会情勢の変化によって、人事制度の変革が求められています。しかし、長年運用されてきた人事制度の変革は簡単ではありません。経営者や人事担当者の中には、トレンドに合わせた人事制度づくりに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、人事トレンドや企業での対応方法について解説します。具体的な対応例を合わせて紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
【2023〜2024年】人事トレンドワード3選
組織・人事に関するシンクタンク「パーソル総合研究所」は、毎年人事に関するトレンドワードを公表しています。ここでは、2023〜2024年の3つのトレンドワードについて解説します。
- 賃上げ
- リスキリング
- 人材獲得競争の再激化
人事トレンドワードを把握し、時代に合わせた人事施策を検討しましょう。
賃上げ
2023年は政府の積極的な後押しにより、賃上げムードが高まりました。その結果、大手企業における賃上げ率は3.99%、賃上げ幅は1万3,362円となりました。2022年の実績を1.72ポイント上回り、およそ30年ぶりの高水準です。
一方で、実質賃金は前年比マイナスが続き、物価上昇には追いついていない状況となっています。また、グローバルな人材獲得競争における待遇面でも、まだまだ賃上げ率は物足りません。
これまで日本では、良質なサービスと引き換えに長時間労働が発生する経営を行なっていました。しかし、そのシステムにも限界がきており、長時間労働を解消するためには「管理職の意識改革」や「非効率な業務プロセスの見直し」「取引慣行の改善」が求められます。長時間労働をなくしていきながら、賃金を上げていくことが日本の経済成長には不可欠です。
参照:日本経済団体連合会|2023年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果
リスキリング
2022年に政府は個人のリスキリング支援に対して、5年間で1兆円を投じる方針を発表し、2023年には厚生労働省が資格学習の費用を助成する「教育訓練給付」の補助率を引き上げました。
また、経済産業省はリスキリングを通じて再就職できた場合に、講座の受講費用などの支援を受けられる制度を導入しました。2023年は「リスキリング元年」と言えるほど、デジタル人材の増加を促進しています。
現在の日本は生産年齢人口が減り続けており、人手不足の解消が急務です。そのため、リスキリングは他国以上に取り組む必要があり、緊急かつ重要な課題とも言えます。
また、リスキリングを学習機会の提供で終わらず、具体的なポストキャリア・パスや処遇の提示、配置転換の施策と紐づけることも重要です。
人材獲得競争の再度激化
2023年は例年以上に、人材獲得競争が激化した年でした。特に10月に施行された「インボイス制度」に対応するために、業務のデジタル化やDX化を推進する人材の需要が高まりました。
また、社内育成だけでは質量ともに人材確保が追いつかず、外部から採用する人材獲得競争が激化しています。人材不足に関する調査によると、「人材が不足している」と回答した企業の割合は正社員で51.4%、非正社員でも30.5%という結果となりました。
生産年齢人口の減少やバブル崩壊後の失われた30年の反動、コロナ禍からの景気回復によって生じた人材不足現象が、2023年に一気に表出したと考えられます。現在の日本は、生産年齢人口の減少とともに、デジタル領域で欧米に大きな遅れをとっています。
「人口減少」と「競争優位産業不在」の二重苦の状態に陥っており、売り手市場の中で企業は求職者とのベストマッチングを図るためにも、人的資本経営に関する取り組み状況を求職者に伝えていくことが重要です。
参照:株式会社帝国データバンク|人手不足に対する企業の動向調査
人事トレンドに基づく企業に求められる対応6選
企業は様々な人事トレンドによって、制度改革が求められています。ここでは、企業が対応を求められている人事トレンドについて解説します。
- 長時間労働の抑制
- 勤怠管理の徹底
- 男女賃金格差の解消
- 育児休業取得の推進
- 給与のデジタル支払い
具体的な対応策を合わせて紹介しているので、参考にしてみてください。
長時間労働の抑制
令和5年4月1日より、長時間労働を抑制するため、すべての企業において60時間以上の時間外労働の割増賃金率が50%になりました。割増賃金率50%はこれまで大企業のみでしたが、対象を中小企業まで拡大しました。月60時間以下の場合は、これまでと同様に割増賃金率は25%です。なお、長時間労働の抑制に成功した企業の主な取り組みは、以下のとおりです。
- 在宅勤務の導入
- 残業代として支出予定だったお金をインセンティブとして支給
- 毎週金曜日の有給取得の推奨
- 半日有給制度の導入
取り組みを進める企業では、残業時間の削減や有給休暇の取得日数の増加など、目に見える成果が上がってきています。長時間労働の抑制は、社員の生産性の向上やワークライフバランスの実現にとって重要な課題です。今後も企業は、社員の長時間労働を抑制するための具体的な制度の導入が求められるでしょう。
勤怠管理の徹底
労働基準法の改正により、2023年4月から賃金請求権の時効期間が2年から3年に変更されました。時効期間の延長により、社員に過去3年間の賃金請求権が発生するため、企業は未払いの残業代の請求を受ける可能性があります。
残業代の未払いを防ぐには、勤怠管理の徹底が必要です。勤怠管理の徹底には、社員の働き方に応じた方法を取る必要があります。例えば、リモートワークや出退勤の裁量が社員に任されている企業では、オンラインで勤務時間の打刻や残業申請ができる勤怠管理システムの導入などを検討してみると良いでしょう。
参照元:労働時間の適正な把握のために.indd
男女賃金格差の解消
改正女性活躍推進法の施行により、301人以上の企業では「男女賃金の差異」の情報公開が義務化されます。男女賃金格差の解消には、主に以下のような取り組みが求められます。
- 公正な賃金制度の整備
- 人材配置や仕事配分の見直し
- 研修の見直し
- 評価制度の見直し
- 管理職への積極的登用
内閣府男女共同参画局によると、日本の男女賃金格差は主要15カ国の中でワースト2位です。2021年の時点では、男性賃金を100とした場合、女性の賃金は77.9と22.1ポイントもの差があります。国は女性活躍推進法の改正だけでなく、2021年には「同一労働同一賃金」の導入など様々な施策を進めています。このような社会情勢の中で、企業は賃金制度や評価制度など具体的な制度の見直しが求められているのが現状です。
参照元:2-12図 男女間賃金格差の国際比較 | 内閣府男女共同参画局
育児休業取得の推進
企業の育児休業取得の推進は、2022年に改正された育児介護休業法をきっかけに進められてきました。育児介護休業法とは、育児・介護休暇の付与、就労時間の短縮などを企業に求める法律です。2023年からは、年1回の育児休業の取得状況の公表が義務づけられました。育児休業推進には、企業に以下のような取り組みが求められています。
- 業務のワークシェアの推進
- 管理職の意識改革
- 残業時間の抑制
育児休業は、男性の取得が少ないことが課題です。パーソルキャリア株式会社の調査によれば、育児休業を取得したことがある男性は15.4%でした。一方で、20~30代の約8割の方が育児休業の取得を希望しています。育児休業の希望者の割合に対して、実際に取得した方は多くありません。育児休業取得状況の公表の義務化により、女性だけでなく男性の育児休業取得を推進する取り組みが求められています。
給与のデジタル支払い
労働基準法の省令改正によって、2023年から給与の電子マネーでの支払いが可能になりました。キャッシュレス決済の普及により、電子化のニーズが一定程度見込まれたことが要因です。金融サービスのデジタル化の普及に取り組むFintech協会の調査によれば、現在の給与受取方法に対して58%の方が不便さを感じていると回答しています。
給与のデジタル支払いは、銀行口座からの現金引き出しの手間が減ることや、副業や短期バイトで働く方にとっては報酬の受け取りが早くなるなどのメリットがあります。一方で、企業が電子マネーで給与を支払う場合には、給与システムの見直しが必要です。すべてのシステムインフラの入れ替えはハードルが高いため、賞与や給与の一部のみを電子マネーで支払うなど段階的な取り組みを検討すると良いでしょう。
参照元:デジタル給与とプレミアム商品券に関する 消費者ニーズ調査結果
トレンドに合わせた人事施策を導入する際の2つのポイント
企業はトレンドの変化によって、様々な人事制度の改革や施策の実施が求められています。人事制度は働き方や給与に大きな影響を与えるため、企業としての方針や社員とのコミュニケーションが大切です。ここでは、人事制度を企業で導入する際のポイントを解説します。
- 事前に自社の方針を決定する
- 社員との信頼関係を築く
スムーズに新たな制度導入をするために、ポイントを確認してみてください。
人事制度改革について詳しく知りたい方は、別記事「人事制度改革」をあわせてご確認ください。
事前に自社の方針を決定する
人事制度改革や施策の導入の前に、企業としての方針を決める必要があります。新たなルールによって不利益を被る社員の反発や、財務体質の悪化を招くリスクがあるためです。また改革は課題に個別に対応すると、制度間に矛盾が発生し全体での最適化ができません。個別のトレンドに合わせた制度改正を行う前に、自社が目指す組織風土や働き方の方針を作ることが大切です。
社員との信頼関係を築く
新たな制度導入には、企業と社員の信頼関係が大切です。例えば、育児休業の取得や男女賃金格差などは、制度だけあっても社員の気持ちがついてこなければ機能しません。経営陣だけでなく、社員の声を制度づくりに活かすことが大切です。
企業と社員の信頼関係づくりには、社内のコミュニケーションのあり方の見直しや、一人ひとりの社員の考え方の把握が必要です。
人事トレンドのまとめ
法改正や社会情勢の変化によって、企業は人事制度の変革が求められています。経営者や人事担当者は環境の変化にアンテナを張り、社員や組織の特性に合わせた人材採用や育成制度を検討していかなければなりません。
特に人材育成制度は、社員の特性に向き合い、会社に必要な人材に育てる必要があります。社員の特性に向き合うには、スキルや志向などのデータを蓄積することが大切です。人材のデータを蓄積することで、人材の発掘や特性にあったサポートができます。
人材データの蓄積には、タレントパレットの活用がおすすめです。タレントパレットは、社員の特性やスキルなどを一元管理できるシステムです。人材データ分析に優れているため、一人ひとりの社員のデータだけでなく、企業全体の年齢などの基礎情報からスキルの傾向を分析できます。人事制度の変革を検討している経営者や人事担当者は、社員の状況把握に活用できるタレントパレットの導入を検討してみてください。