人事労務は、人材活用に関する幅広い業務を担っています。人事労務の業務は、具体的にはどのような内容なのでしょうか。この記事では、人事労務の重要性、業務内容、必要スキルなどを解説します。人事労務に役立つ資格や効率化の方法などについても解説するため、ぜひ参考にしてください。
人事労務とは?
人事労務とは、企業が掲げる目標や指針に合わせてさまざまな業務を担当する仕事です。たとえば、人材採用、人材育成、労働条件の整備をはじめとする業務に対応し、企業のスムーズな運営や成功への貢献を目指します。人事労務は、経営戦略の策定や社員のモチベーションの向上などにも関わる重要な業務です。
なお、人事と労務の具体的な業務内容は異なります。それぞれの業務内容の詳細については後述するため、あわせて確認してください。
人事労務が企業にとって重要な理由
人事労務は企業にとって重要な業務です。ここでは、人事労務が重要な理由について詳しく解説します。
働きやすい職場づくりを実現するため
人事労務は、働きやすい職場づくりのために欠かせない存在です。厚生労働が公表しているデータによれば、令和4年の1年間に前職を辞めて転職した人のうち、労働条件の悪さを理由としてあげた人の割合は男性が9.1%、女性が10.8%でした。
これを踏まえると、職場の労働条件に問題があると離職の原因になるとわかります。離職を防ぐには、人事労務が率先して働きやすい職場をつくるべきです。働きやすいと感じられる職場なら、社員に長く働いてもらえる可能性が高まります。
※参考:令和4年雇用動向調査結果の概況
人事戦略を実施するため
企業の経営戦略を実現するには、人事が果たす役割も大きいです。人材が企業の経営を支えるため、経営戦略を意識した人事戦略を展開する必要があります。具体的には、企業のビジネスを成功させるために必要な人材の確保や育成を実現できるよう、経営戦略をもとに採用活動や研修の方向性を決めることが大切です。人事労務が将来を見据えた人事戦略を実施すれば、長期的に自社の経営を支えられる人材を増やせます。
企業と社員との信頼関係を構築するため
円滑に企業を運営するには、企業と社員の信頼関係の構築も重要です。人事労務は企業と社員の間に入り、調整する役割を果たします。
たとえば、スキルアップの機会が少なかったり、残業代を適切に支払っていなかったりする状況では、社員からの信頼を得られません。人事労務は企業が抱える課題をピックアップし、社員が納得できるよう解決を目指す必要があります。人事労務の取り組みにより信頼関係ができれば社員のモチベーションが高まり、パフォーマンスの向上も期待できるでしょう。
人的資本経営の実現のため
人的資本経営においても、人事労務には重要な役割があります。人的資本経営とは、社員を企業の資本として捉え、社員の価値を引き出して企業の価値も向上させる手法です。
人的資本経営では人材の扱い方に重きが置かれているため、人事労務の施策が適切でなければ経営戦略にも影響が出かねません。人的資本経営における人事戦略の詳細については、以下の資料をご覧ください。
人的資本時代におけるデータドリブン人事戦略 ~先進企業と語る、企業が見据えるべき人的資本経営の未来~
人事の業務内容について
人事の業務内容は、採用活動や人事評価制度の整備などさまざまです。ここでは、人事の具体的な業務内容について解説します。
採用活動
人事は、新しい人材を確保するための採用活動を行います。企業が掲げる目標を達成するには、具体的な施策を実行する人材の確保が不可欠だからです。
採用活動には、新卒採用と中途採用があります。新卒採用の対象は学校を卒業したばかりの人であり、中途採用の対象は他社の就業経験がある人です。新卒採用は毎年同じ時期に行っている企業が多いですが、中途採用は必要に応じて都度実施します。
人材配置
人材配置とは、各部署に社員を配置することです。社員によって能力やスキルはそれぞれ異なるため、最大限のパフォーマンスを発揮するには適材適所へ配置する必要があります。
適切な人材配置を実現できれば、自社の目標を達成しやすくなるでしょう。そのためには、社員それぞれの特性を正確に把握することが大切です。たとえば、社員の能力やスキルを可視化できるタレントマネジメントシステムを導入すると、最適な人材配置をスムーズに実現できます。
人事評価制度の整備
人事の重要な業務として、人事評価制度の整備もあげられます。人事評価制度は、社員の取り組み、能力、成果などをもとに適切な評価を行うための制度です。
人事評価制度による評価を給与や昇進などの根拠とする企業も少なくありません。人事評価制度は社員のモチベーションにも影響を与えるため、適切な基準や方法を定める必要があります。具体的には、主観に左右されない評価基準を定め、社員の納得を得られるようにすべきです。
人材育成
人材育成も人事が主導する業務です。主に、新しいスキルの習得やスキルアップのための研修プログラムを作成します。たとえば、新入社員を対象とし、社会人としての基本的なビジネスマナーについて研修を実施している企業も多いです。また、管理職向けのマネジメント研修もよく行われています。人事は単に研修の機会を用意するだけでなく、振り返りや改善などにも取り組むべきです。
労務の業務内容について
労務の業務内容としては、具体的にどのような仕事があげられるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
社内規程の作成
労務は、社員が企業で働く際の指針となるルールとして社内規定を作成します。主な社内規定は、就業規則です。常時10人以上を雇用する企業では、就業規則の作成や届出が必須となっています。ただし、ルールを明らかにしてトラブルを未然に防止するには、企業規模にかかわらず就業規則を作成した方が無難です。
就業規則は、法律に基づき経営方針も加味して作成します。就業規則を変更した際は、社員への周知も忘れずに行いましょう。
給与計算
社員の給与計算も、労務の仕事の1つです。基本給だけでなく、時間外手当、通勤手当、家族手当などの手当も含めて給与を計算する必要があります。また、控除する社会保険料や税金なども考慮しなければなりません。社員によってそれぞれの金額が異なるため、ミスに注意が必要です。社員数が多いとその分だけ手間や時間もかかりますが、綿密な計算による正確な金額の算出が求められます。
勤怠管理
勤怠管理では、社員の出退勤、休憩時間、時間外労働などを正確にチェックします。休日出勤や有給休暇の取得などについても把握が必要です。勤怠管理の内容は給与の計算の根拠にもなるため、実際の状況を正しく反映させなければなりません。なお、勤怠管理を徹底すると、基準以上の長時間労働や残業などの発生にも気づきやすくなります。勤怠管理を正確かつ効率的に行うには、システムの導入も効果的です。
社会保険の手続き
労務の業務として、健康保険や厚生年金などの社会保険の手続きもあげられます。それぞれ加入の条件が定められているため、加入対象者を把握して適切に手続きを進めなければなりません。手続きには書類の提出が必要であり、期限も設けられています。入社後の手続きをスムーズに進めるには、入社前にあらかじめ手続きの内容について説明しておくと安心です。
安全衛生管理
安全衛生管理とは、社員の健康を管理し、安心して働ける環境を整備する業務です。たとえば、定期的な健康診断やストレスチェックなどを実施し、社員の心身に問題が発生していないか確認します。また、ハラスメントを防ぐための相談窓口の設置や、育児や介護と仕事の両立のサポートも重要です。現場の状況を考慮しつつ、社員がより働きやすい環境を実現するための取り組みを積極的に進める必要があります。
福利厚生の管理
福利厚生の管理も労務が対応します。福利厚生とは給与以外の報酬のことです。たとえば、社員食堂の設置やレジャー施設の補助などがあげられます。企業によっては、慶弔見舞金、健康診断の補助、育児支援などの福利厚生を用意している場合もあるでしょう。福利厚生は、社員の生活をサポートしたり、リフレッシュを促したりするための制度です。求職者の興味を引く重要な要素にもなります。
人事労務に必要なスキル
人事労務に対応するにはさまざまなスキルが必要です。以下で具体的に解説します。
コミュニケーション能力
人事労務はさまざまな社員と関わるため、コミュニケーション能力が重要です。さまざまな社員がおり、立場によっても考え方や物事の捉え方は異なります。そのため、コミュニケーションのとり方によってはトラブルに発展する可能性もあるため、要注意です。どのような相手ともスムーズにやり取りするには、相手の立場を考慮して働きかける必要があります。高いコミュニケーション能力がある社員は、人事労務として十分に活躍できるでしょう。
ITリテラシー
人事労務に勤怠管理システムや給与管理システムなどを導入している企業が増えています。よって、人事労務の業務に対応するには、システムを活用するためのスキルも重要です。場合によっては、基本的な操作だけでなく、設定や管理にも対応する必要があります。業務を適切かつ効率的に進めるにはシステムを使いこなす必要があり、高いITリテラシーを身につけることが大切です。
法律の知識
人事労務には、労働基準法や労働組合法をはじめとする複数の法律が関わっています。そのため、担当者として業務を進めるうえでは、法律の知識も重要です。特に給与計算や勤怠管理においては、法律に従って適切に対応する必要があります。人事労務に関わる法律を把握しないまま業務を進めた場合、不適切な対応によりトラブルに発展する恐れがあるため、注意が必要です。
情報管理の知識・スキル
人事労務においては、社員の個人情報を扱う機会が多いです。氏名や住所などの基本的な情報だけでなく、個人的な事情に触れる場合もあります。それらの個人情報が漏洩すれば、大きな問題になる可能性が高いです。たとえば、ハラスメントに関するデリケートな問題が外部に流出すると、信頼を損ねる原因にもなりかねません。人事労務に携わるうえでは、情報管理を徹底する必要があります。正しい知識やスキルのもとで業務を進めることが大切です。
人事労務に役立つ資格
人事労務に役立つ資格は多く、たとえば以下の資格があげられます。
・社会保険労務士
・特定社会保険労務士
・中小企業診断士
・労務管理士
・衛生管理者
社会保険労務士は、労務に関する手続きや帳簿作成に関する国家資格です。それに対して特定社会保険労務士は、社会保険労務士の業務に加えて紛争解決の代理にも対応できます。また、中小企業診断士は、中小企業の経営をチェックし、課題解決に向けたアドバイスができる国家資格です。
労務管理士の資格は初心者でも取得しやすく、労働基準法や労務管理関する専門知識を証明するために役立ちます。衛生管理者は、社員の健康や労働環境に関するトラブルを防止する役割を果たす資格です。
人事労務が抱える課題とは?
人事労務には課題もあるため、解決に向けた対策も必要です。ここでは、人事労務がどのような課題を抱えているか解説します。
業務を兼任しているケースでは負担が大きい
企業の状況によっては、人事と労務の業務を同じ担当者が兼任しているケースもあります。しかし、人事と労務の業務内容は異なるうえに、それぞれ範囲も広いです。業務を兼任している状況では、担当者の負担が大きくなる恐れがあります。その結果、人事と労務の業務の両方が適切に進まない可能性もあるでしょう。人事労務の業務をスムーズかつ適切に進めるには、業務を効率化するための対策が不可欠です。
コンプライアンス遵守の強化が求められる
近年コンプライアンスが重視されている点は、人事労務も例外ではありません。コンプライアンスの遵守が強く求められているため、適切に対応して強化する必要があります。たとえば、長時間労働や残業代の未払いは、コンプライアンス違反です。コンプライアンスを遵守するには、労務管理を徹底しましょう。
多様化する働き方に対応する必要がある
社員にとっての働きやすさを重視し、多様な働き方を取り入れる企業も増えています。たとえば、テレワークやフレックタイムなどです。また、雇用形態の種類も多く、社員だけでなくパート、アルバイト、派遣社員などが一緒に働いています。
人事労務は、社員によって働き方が異なる状況でも労働時間や勤怠態度などを正しく把握しなければなりません。さまざまな働き方に対応できるチェックの仕組みを取り入れ、社内に浸透させる必要があります。
人事労務の業務を効率化する方法
人事労務の業務を効率化するには、どうすればよいのでしょうか。以下で詳しく解説します。
人事管理・労務管理システムを導入する
人事労務の業務効率化においては、システムの導入が効果的です。たとえば、人事の業務にタレントマネジメントシステムを導入すると、社員の成長度合いやスキルなどを把握しやすくなります。集めたデータをもとにした適切な人材配置も実現可能です。
また、労務の業務に労務管理システムを活用すれば、社会保険の手続きに関する業務を効率化できます。ミスや対応漏れを防ぎ、着実に適切な対応を実現できるでしょう。
アウトソーシングを活用する
人事労務の業務は、外部へのアウトソーシングも可能です。たとえば、社員の給与計算や勤怠管理などの業務を請け負うサービスも存在します。特に人事労務を同じ担当者が兼任していたり、人手不足が生じていたりする場合、業務効率化を実現するにはアウトソーシングの活用が有効です。選ぶサービスによって対応できる業務内容が異なるため、複数を比較して選択しましょう。
人事労務担当者のスキル向上を図る
人事労務の業務を効率よく進めるには、担当者のスキル向上も重要です。たとえば、前述した各種資格を取得すると、人事労務の実務に役立つスキルを身につけられます。企業も資格取得を積極的に支援したり、スキルを学ぶための研修を実施したりするとよいでしょう。
人事労務業務をシステムで効率化した事例
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※参考:数日かかっていた人事評価の運用を大幅に効率化。空いた時間を活用してより良い会社づくりへ
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また、人事労務に関する法改正は頻繁に行われており、タレントパレットはその度に自動でアップデートする仕組みです。余計なコストをかけなくても、常に最新の法律に則って人事労務の業務を進められます。
まとめ
人事労務は、企業の目標達成のために幅広い役割を果たします。人事労務に求められる内容は、人事戦略の実施、働きやすい環境の実現、企業と社員の信頼関係の構築などさまざまです。そのため、業務内容も多岐にわたります。人事労務の担当者にはコミュニケーション能力や法律の知識などが必要であり、スキル向上に向けた企業からのサポートも重要です。
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