休日出勤とは?休日の種類や対象者、割増賃金の計算方法などを幅広く解説


休日出勤とは?休日の種類や対象者、割増賃金の計算方法などを幅広く解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

「休日出勤」業務が終わらない、臨時で出社の必要があるなどの理由で休日に出勤することを指します。従業員に休日出勤をさせた場合、企業は割増賃金を支払ったり、振替休日を取得させたりしなくてはなりません。しかし、休日出勤の内容を誤解しているケースも多数見られます。

この記事では、休日の種類や対象者も踏まえて、休日出勤の概要や割増賃金の計算方法などをみていきましょう。

休日出勤とは

休日出勤とは、就業規則で働かなくて良いとされている日(法定休日)に出勤することです。

労働基準法では、少なくとも1週間に1日、または4週に4日の休日を与えなくてはならないと定められています。そのため、休日に出勤させた場合は、休日出勤に該当し、割増賃金も発生することになるのです。

休日出勤をさせた場合は、その時間数に応じて割増賃金を支払わなくてはなりません。また、通常の出勤日と同様に、労働時間によって45分~1時間の休憩時間を付与する必要があります。

労働基準法における「休日」の定義

「休日出勤」と聞くと、土日祝日に出勤することだと捉えるケースもありますが、実際には定義が細かく定められているのが現状です。休日出勤に対する認識に誤りがあった場合、勤怠管理や給与計算でのミスにつながりやすくなるだけでなく法令違反につながる可能性があります。

そこで、ここでは、企業に設けられる休日の意味をみていきましょう。

付与が義務付けられている「法定休日」

法定休日とは、労働基準法で付与が義務付けられている休日のことです。同法では、少なくとも1週間に1日、または4週で4日の休日を与えなくてはならないと定めています。

しかし、法定休日にすべき曜日までは指定されていません。土曜・日曜、祝日だけでなく、平日を指定しても構わないのです。また、全従業員の休日を統一する必要もありません。

そのため、法定休日を何曜日とするかは自社の業態や勤務形態に即して決定されています。

企業が自由に定められる「法定外休日(所定休日)」

「法定外休日(所定休日)」とは、法定休日を除いたすべての休日を指す言葉です。具体的には、企業が独自に定める休日や祝日を指します。

労働基準法では、1週間あたりの労働時間は40時間までです。しかし、1日8時間労働で遵守しようとした場合、週6日働くとその週の労働時間は48時間となり、週1日の休日では規定の労働時間をオーバーしてしまいます。法定外休日は、労働基準法を守るための休日だといえるでしょう。

自社の休日として、法定休日と法定外休日を定めている場合、より早く到来する休日を法定外休日とし、以降に訪れる休日は法定休日と見なします。つまり、毎週土曜・日曜を休日としている企業の場合は、下記のように土曜日が法定外休日、日曜日が法定休日と見なされるのです。

例:土・日曜日を休日としている企業の場合

曜日
捉え方 出勤日 出勤日 出勤日 出勤日 出勤日 法定外休日 法定休日

なお、4週に4日の休日を付与する企業の場合はすべての休日が法定休日と見なされます。

出勤予定日を休日にする「振替休日」

「振替休日」とは、本来であれば休日であった日に出勤した場合に出勤予定の日を代わりの休日とすることです。休日と出勤日を入れ替えることと考えるとイメージしやすいでしょう。

振替休日が適用された場合は、もともと休日であった日を出勤日と入れ替えているに過ぎないため、たとえ休日に出勤しても「休日出勤」とは見なされません。割増賃金も発生しないということになります。

ただし、いつを振替休日とするかは遅くとも出勤日の前日までに使用者が指定しておかなければなりません。加えて、就業規則に振替休日の規定がある点や法定休日を確保できている点も確認しましょう。

仮に、振替休日を指定しないまま休日出勤をさせた場合は、純粋な休日出勤をさせたことになり、その時間分だけ割増賃金の支払いが必要になります。また、振替休日の取得によって、他の週の労働時間が40時間を超える場合は、その分の割増賃金が必要となることも覚えておきましょう。

出勤した代わりに別日を休日にする「代休」

「代休」とは、休日出勤があった日の代わりに、別の日を休日とすることです。振替休日とよく似ていますが、代休は休日出勤した分の労働時間を、他の出勤日から差し引くものです。

そのため、割増賃金の支払いが必要です。また、いつを代休とするかは使用者・従業員のどちらが決めても構いません。

2種類の「休日出勤」

「休日」には様々な意味があり、同様に「休日出勤」にも2種類の意味があります。
法定休日に行うパターンと法定外休日に行うパターンのどちらかです。

企業として、ミスなく処理できるよう、休日の意味とあわせて把握しておきましょう。

法定休日に行うもの

法定休日に労働することを「休日出勤」と呼ぶ場合があります。このケースが正しい意味の休日出勤です。法定休日に出勤させた場合、その日働いた時間分の給与すべてが割増賃金の対象となります。

法定外休日に行うもの

法定外休日に労働することも「休日出勤」と呼ぶ場合もあります。しかし、厳密には法的な休日出勤ではありません。前述の通り法定外休日はあくまでも各企業で定めた独自の休日であり、与えることが企業の義務とはされていないためです。

法定外休日に働いた時間は残業(時間外労働)として処理し、働いた時間分だけ時間外労働手当を支払います。他の出勤日の残業時間と合算すればよく、法定外休日に出勤した時間だけ区別して管理する必要もありません。

休日出勤が違法にならないケースとは?



休日出勤は原則として違法とされています。しかし、本章で紹介する2つの条件を満たした場合は例外です。詳しく内容をみていきましょう。

就業規則で休日出勤の定めがある

自社の就業規則に休日出勤がある旨が記載してあれば、休日出勤をさせた場合であっても違法ではありません。就業規則に記載があることで、休日出勤を命じる根拠ができるためです。

言い換えると、就業規則に記載がなければ、休日出勤をさせることはできません。そのため、休日出勤を行う場合には就業規則への記載が必要です。

36協定を締結している

法定休日は本来、労働の必要がない日であり、そのため、法定休日に従業員を働かせるのは違法な行為です。しかし、自社の繁忙期など、どうしてもイレギュラーな出勤が必要になるケースがあります。そういった業務都合による労働を一時的に認める法律として36協定があり、労働者と締結したうえで労働基準監督署に届け出なくてはなりません。

36協定を締結しないまま休日出勤をさせた場合は、労働基準法違反になります。また、36協定は、原則1年ごとに締結が必要です。担当者として、自社が36協定を締結し、労働基準監督署に毎年提出しているか、確認しておきましょう。

休日出勤の対象者

一部、休日出勤が適用されない従業員もいます。対象となる従業員の条件を正しく認識しておきましょう。とくに一般的な従業員と管理監督者では違いがある点は、労務管理者はしっかりと把握しておく必要があります。

労働者のみが対象で管理監督者は対象外

休日出勤の対象となるのは、一般の労働者のみです。事業の管理監督者は、業種を問わず休日出勤の対象外とされています。

労働基準法第41条によると、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」には労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されません。つまり、管理監督者に休日出勤をさせても割増賃金が発生しないということを意味します。

加えて、管理監督者であれば業種も不問です。そのため、「情報通信業の管理監督者は休日出勤の適用対象とならないが建設業の管理監督者は休日出勤が適用される」といったこともありません。

ただし「管理監督者」の定義が労働基準法でも明確に定められていない点には注意が必要です。そのため、どういった業務を行う従業員が管理監督者となるのかは、自社内での慎重な判断が求められます。

加えて「課長」「部長」といった役職名が付いていたとしても、実情に照らすと「管理監督者」ではない可能性もあるのです。こういった場合は、どういった業務を行う人材が管理監督者なのかを明確にし、労務や人事、社外への相談を行い立場を確立する必要もあります。

雇用形態は問われない

休日出勤の対象となる一般の労働者は、雇用形態は問われません。正社員からアルバイトにいたるまで全ての人材に当てはまります。

例えば、「正社員は休日出勤の対象となるが、アルバイト社員は対象とならない」といった明記をしていても区別はできません。また、労働基準法と企業の規則はどちらもルールといえますが、法的拘束力を持つ労働基準法の内容を強く遵守しなければならない点も知っておく必要があります。

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休日出勤は拒否できる?

休日出勤の命令はどの程度の拘束力を持つのかを解説していきます。 基本的には休日出勤を従業員の意思だけで避けることはできないといえるでしょう。

基本的に拒否できない

36協定を締結している場合、休日出勤の命令があっても拒否できません。

企業が休日出勤をさせるためには、休日出勤がある旨を就業規則に記載したうえで、従業員と36協定を締結することが必要です。そのため、36協定の締結に同意した従業員は、休日出勤をすることにも同意していると捉えられます。

そのため、休日出勤を命じられた際に拒否した従業員は、業務命令違反として懲戒解雇などの処分の対象となる場合があるのです。契約書や雇用通知書において、休日出勤の有無について明確に掲載されている場合は拒否できることもあります。

やむを得ない事情があれば拒否できる場合も

やむを得ない理由があると判断できるときは、休日出勤を拒否できる場合もあります。たとえば、以下のようなケースです。

  • 通院
  • 体調不良
  • 引っ越し
  • 家庭の事情
  • 冠婚葬祭


こうした事由で休日出勤が難しいといわれた場合は、企業としてもパワハラが疑われてしまうため、出勤を強制しないことが大切です。また、業務上必要がない場合も拒否が可能です。

上記以外にも、従業員が休日出勤を拒否できるケースがあります。詳しくはこちらの記事で解説しますので、ぜひ参考にしてください。

「休日出勤拒否」については、こちらの記事をご確認ください。

関連記事:休日出勤は拒否できる?要請可能な条件や懲戒処分となるケースも解説

割増賃金を払う必要があるケースは?

休日出勤をさせた場合は、割増賃金を払う必要があります。しかし、割増賃金が発生するかどうかは休日出勤の種類によって異なるため、どのケースで支払いが必要かを知っておきましょう。

法定休日に出勤させた場合

法定休日に出勤させた場合は、割増賃金の支払いが求められます。法定休日は「労働を行わない」と定められている日であり、出勤させた場合はイレギュラーで働かせていることになるためです。

しかし、労働基準法では法定休日の曜日までは定めていません。そのため、たとえば土曜・日曜、祝日に従業員を働かせても、法定休日としていない場合は割増賃金は支払わなくても問題となりません。

法定外休日の出勤で、かつ時間外労働があった場合

法定外休日に出勤させた場合は、割増賃金は発生しません。法定外休日に出勤した場合は基本的に時間外労働として扱い、その時間分だけ残業代(時間外労働手当)として支払うためです。具体的な金額は、その他の出勤日の残業時間と合算して計算すれば問題ありません。

ただし、時間外労働が深夜(22時~翌朝5時)に行われた場合は、時間外労働手当に加えて「深夜業に対する割増賃金」も上乗せして支払う必要があります。

また、令和5年4月1日からは中小企業の時間外労働に対する割増賃金の割増率が引き上げられている点も確認が必要です。社内で認識に相違がないか確認しておきましょう。

研修や持ち帰りの仕事も対象になる可能性がある

休日に開催される研修や教育訓練の中でも、自由参加のものは休日出勤の対象になりません。ただし、欠席によって減給処分になったり、義務を行えなくなったりする場合は、休日出勤の対象となることがあります。

また、従業員に日常的な持ち帰りの仕事があると知っているにもかかわらず、その状態を黙認している場合は、割増賃金の支払いが必要だといえるでしょう。

関連記事:休日出勤で割増賃金が発生するケースとは?計算方法や休日出勤の定義を解説

休日出勤の割増率

休日出勤は、出勤させた休日の種類や働かせた時間帯によって割増賃金の割合が異なります。休日出勤をさせた際の割増賃金の計算式を、例を挙げながら見てみましょう。割増率の間違いは、企業の社会的信用にも影響するため、よくチェックしておく必要があります。

法定休日に出勤させた場合は割増率35%以上

休日出勤をさせた日が法定休日だった場合、通常の賃金の35%以上を上乗せして支払いましょう。この場合の計算式は、以下の通りです。

法定休日の割増賃金=労働時間×1時間当たりの賃金×割増率(1.35~)

加えて、法定休日に出勤したのが深夜(22時~翌朝5時)であった場合は、別途「深夜業に対する割増賃金」も支払いが必要です。深夜業に対する割増賃金の割増率は25%以上であり、この場合の計算式は以下に変わります

法定休日の割増賃金(深夜に労働した場合)
 =労働時間×1時間当たりの賃金×(休日出勤+深夜業の割増率(1.6~))

では、実際の計算例をみてみましょう。月給を時間給に変換したうえで「1時間当たりの賃金が3,000円の従業員を法定休日に8時間働かせた」という条件下で考えた場合でも、労働させた時間帯によって、割増賃金の金額が変わってきます。

実際に計算して、金額の違いを比べてみましょう。

例:1時間当たりの賃金が3,000円の従業員を法定休日に8時間働かせたケース

  • 労働した時間が日中:8×3000×1.35=32400
  • 労働した時間が22時~翌朝5時:8×3000×1.6=38400


このように、法定休日の日中に出勤させた場合は最低3万2,400円、深夜に出勤させた場合は最低3万8,400円の割増賃金を、それぞれ支払わなくてはなりません。

法定外休日は割増率25~50%以上

法定外休日については、割増賃金を支払う必要はありません。法定外休日の労働の割増賃金については、労働基準法でも定められておらず、時間外労働として考えられるためです。そのため、通常の残業と同じく残業代を払えば問題ないといえます。

ただし、法定外休日の出勤によって法定労働時間を超過した場合は、割増賃金を払わなくてはなりません。この場合の割増率は、時間外労働を行ったトータルの時間数によって下記のように変動します。

  • 1ヶ月の時間外労働が60時間以下:割増率25%以上
  • 1ヶ月の時間外労働が60時間以上:割増率50%以上


計算式に表すと、以下の通りです。

法定外休日の割増賃金
=時間外労働を行った時間×1時間当たりの賃金×割増率(1.25~または1.5~)

この計算式をより細かく考えてみましょう。

例:1時間当たりの賃金が3,000円の従業員を法定外休日に8時間働かせた場合

  • 1ヶ月の時間外労働が計60時間以下:8×3000×1.25=30000
  • 1ヶ月の時間外労働が計60時間以上:8×3000×1.5=36000


時間外労働の時間数によって割増賃金の額にも大きな差が出てきます。その他の出勤日に行った時間外労働の時間も踏まえ、慎重に処理しましょう。

特に中小企業の場合は、割増率の認識に誤りがないか確認が必須です。中小企業は以前であれば、1ヶ月の時間外労働が60時間以上になっても割増率は25%以上でも問題ありませんでした。

しかし、令和5年4月1日以降は、中小企業における1ヶ月の時間外労働が60時間以上の場合の割増率も大企業同様に50%以上になっています。場合によっては、同日中に所定労働と時間外労働の両方がある場合や休日出勤した日に残業が発生した場合の計算方法など、より込み入ったケースもあるでしょう。その場合の対処法は、こちらの記事で解説しています。

「休日出勤割増賃金」については、こちらの記事をご確認ください。
「休日出勤残業」については、こちらの記事をご確認ください。

割増率を下げることはできない

割増率に関しては決まりがあります。法定休日の場合は35%以上、法定外休日の場合は25~50%以上となっており、この割合以上であれば自社で自由に定めることが可能です。しかし、この数値を下回る割合への変更はできません。

上記の割増率は、最低ラインとして労働基準法で定められているものです。使用者・従業員の双方が合意していても低くすることはできません。自社の経営が厳しい場合でも、規定通りの割増賃金を払わなくてはならないといえます。

休日出勤した場合の代休の取り扱い方

休日出勤をさせた場合、従業員には代休を与えることが望ましいとされています。代休にもいくつか注意すべき点があるため、これまでの内容と合わせて確認していきましょう。

代休は与えることが望ましい

事前の告知や予定なく休日出勤させた場合、従業員には代休を与えることが望ましいとされています。

代休は法律で定められた制度ではなく、あくまでも企業独自のものとして設けているものです。与えなくても、違法にはなりません。しかし、代休を与えないことで従業員のモチベーション低下につながる可能性もあります。

とくに人材確保が難しい場合やネックに感じている場合は、代休を付与することによってモチベーション低下だけでなく、労働環境の見直しや改善にもつながるでしょう。

短時間だけ休日出勤した場合も付与できる

1日単位ではなく、「1日2時間だけ」など短時間のみ休日出勤した場合も就業規則などで定めがあれば代休を取得させられます。代休は法律で定められた制度ではなく、企業独自の制度であるためです。例えば、短時間の休日出勤が重なったため、合算して1日代休にするといった方法も企業によってはあり得ます。

取得期限は就業規則で定めた期間内

代休は法律で定められた制度ではないため、取得期限にも明確な決まりはありません。そのため、休日出勤させた翌日・翌週や翌月に与えても特に問題はないのです。

ただし、代休をいつまでも取らせずにいることにはリスクもあります。本来休みであった分を出勤させたにも関わらず、通常通り出勤させている場合、休日に出勤した分の給与を多く支払ったままの状態です。

また、代休を取らせないことで、本来取らせるべき休日の日数に達しなくなるリスクもあります。結果的に、労働基準法違反になってしまう可能性も否めません。トラブルを防止するためにも、代休の取得期限を定めて就業規則に記載しておきましょう。

振替休日は1日単位でしか付与できない

振替休日は原則、1日単位でしか与えられません。法定休日は「暦日」(0時~24時までの24時間)と労働基準法で定められており、振替休日として与える際も1日単位であることを前提としているためです。

時間単位で与えられないうえ、短時間だけ休日出勤しても振替休日の対象にならないことがあります。企業のルールもよく確認しておかなければなりません。

代休については以下でも詳しく解説していますので、合わせてチェックしてみましょう。

「休日出勤代休」については、こちらの記事をご確認ください。

関連記事:休日出勤の代休の取得期限や計算方法は?代休なしが違法になるケースも紹介

休日出勤を減らすには?



従業員に休日出勤をさせる際は企業側にも様々な注意が求められます。細かく確認するための体制を整えるだけでなく、休日出勤の機会を減少させることも大切です。

ここからは、休日出勤を減らす方法についてみていきましょう。日本政策金融公庫が2022年、全国の中小企業566社を対象に行った「働き方改革に関するアンケート」の結果を基に具体的な方法を解説します。

業務量を見直す

休日出勤を減らす最大の方法は、従業員の業務量を減らすことです。

同調査では、時間外労働が多い理由を調べたところ、最も多かった回答は「残業や休日労働をしないと終わらない仕事量だから」であり、対象企業の33.6%に上りました。加えて、実際に休日出勤を減らす何らかの対策をした企業377社のうち、約20%が「従業員ごとの業務量を調整し、負担を均等にする」ことで効果を実感しています。

従業員ごとの業務量を洗い出し、省略できる業務はないか、業務量に偏りがないかなどの観点で見直す機会を設けてみましょう。

管理職が進んで休日出勤を減らす

次いで有効だと考えられる方法は、管理職や経営者が率先して休日出勤を減らすことです。休日出勤を減らす施策を行った377社のうち、「管理職や経営者が率先して残業や休日出勤を減らすことで効果を感じた」という企業は約15%に上りました。

管理職が休日出勤をしている場合、その下で働く従業員も休日出勤をしなければならない雰囲気になりかねません。すぐに従業員の業務量を減らすのが難しい場合は、現状を把握し、管理職や経営層の働き方から見直しましょう。

休日出勤の回数制限は効果が薄い

効果的な施策がある一方で、効果的ではない施策もあります。例えば、「休日出勤の時間に上限を設けること」や「職場の意識改革を図ること」です。

休日出勤の上限時間設置を実施している企業は、前述の377社のうち17.8%でした。実際に効果を感じた企業は14.9%あったものの、効果を感じなかった企業も21.6%に上っています。

また、ノー残業デーを始めとした職場の意識改革を行った企業は20.4%です。そのうち21.4%は「成果があった」と回答していますが、19.4%は「成果が上がっていない」と答えています。

休日出勤の時間上限や社内の意識改革は全く効果がないわけではありませんが、そうした施策単体では休日出勤を減らすのは難しいといえるでしょう。複数の施策と組み合わせて、実施する必要があります。

休日出勤に関するQ&A

ここからは、休日出勤に関する様々な質問に回答します。とくに人事・労務関係者の方は自社の状況と照らし合わせてみましょう。

割増賃金を払わないとどうなる?

法定休日に出勤した場合は、労働時間分の割増賃金を支払わなければならない点が企業の義務です。仮に支払わなかった場合、労働基準法違反として6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。

法定外休日の出勤の場合は、必ずしも割増賃金の対象とはなりません。ただし、就業規則や労使協定などで、法定外休日の出勤にも割増賃金を支払う旨の記載があれば、支払う必要があります。

残業代を一律で与えている場合は割増賃金は不要?

実際の残業時間を問わず一律で残業手当を与えている場合は、その旨を就業規則などに記載しなくてはなりません。

また、法定外休日の労働時間も含め、実際の残業時間分の割増賃金が残業手当を上回る場合は、その分を追加で支払う必要があります。割増賃金は翌月への繰り越しはできず、当月分として支払わなくてはなりません。

テレワークの場合は休日出勤の対象にならない?

テレワークを導入している場合も、同じく休日出勤の対象になります。

テレワークは働く場所がオフィスからそれ以外の場所になるだけで、適用される法律や規制までが変わるわけではありません。休日出勤や時間外労働をしていれば割増賃金の対象になります。

ただし、出社して業務にあたる場合と比べると実態がわかりにくいため、企業は労働時間を適切に記録・管理する必要があるといえるでしょう。

フレックスタイム制での休日出勤の扱い方は?

フレックスタイム制を導入している場合でも、休日出勤をさせる場合は36協定の締結が必要です。

また、休日出勤をしたのが法定休日・法定外休日のどちらかによって、割増賃金の計算方法が異なります。法定休日に出勤させた場合は、清算期間における実働労働の時間や時間外労働と分けて考えなくてはなりません。

法定外休日に出勤させた場合は、計算が難しくなります。法定外休日の労働時間が法定内労働時間を超えなければ、その他の日の法定内労働時間と合算して構いません。しかし、仮に法定内労働時間を超えた場合は、その時間を分けてカウントし、超えた分に合致する割増賃金を支払う必要があります。

フレックスタイム制における休日出勤のイメージは、以下の通りです。

総実労働時間 休日出勤(法定休日に働かせた時間)
休日出勤以外 時間外労働
法定内労働

フレックスタイム制では「法定休日の労働時間はその他の労働時間と分けて考える」「法定外休日に出勤させても、法定内労働時間に収まっていれば特別な処理は不要」という点を知っておきましょう。

自主的な休日出勤にも割増賃金(休日出勤手当)は支払うべき?

上司との話し合いで、「どうしても仕事が終わらないために休日出勤している」場合は、割増賃金の支払いが必要です。一方、「知識を深めるため」といった従業員の希望で休日出勤した場合は、割増賃金の支払いは不要とされています。

しかし、基本的に休日出勤は使用者の指示の元で行うべきものです。労災のリスクが生じたり違法な残業と見なされたりする可能性もあるため、自主的な休日出勤はなるべく控えさせましょう。

まとめ

休日出勤は比較的身近な言葉であるものの、定義や賃金の割増率など、知っておくべき点は多数あります。まずは、休日の種類や対象者など基本的な内容を正確に理解し、状況把握につとめましょう。

給与の計算は、休日出勤して働いた時間数やその他の出勤日の残業時間を把握したうえで行わなくてはなりません。特に従業員が多い企業や労務担当者が少ない企業では、苦労することも多いでしょう。休日出勤そのものを減らせないかという点も検討する必要があります。

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