ヒヤリハット報告書の作成方法を解説!ポイントを踏まえて記載しよう


ヒヤリハット報告書の作成方法を解説!ポイントを踏まえて記載しよう

ヒヤリハットを防止するには、ポイントを押さえた報告書の作成が重要です。そこで本記事では、適切なヒヤリハット報告書を作成するために役立つテンプレートを紹介します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

適切なヒヤリハット報告書を作成するには、意味や危険性を理解することが重要です。本記事では、ヒヤリハットを防止して重大事故のリスクを軽減するために、ヒヤリハット報告書作成のテンプレートを紹介します。

ヒヤリハット報告書は必要?

ヒヤリハット報告書は、職場で発生したヒヤリハット事例をまとめた書類です。ヒヤリハット報告書を作成して共有すれば、職場で生じやすいヒヤリハットのリスク因子が可視化され、長期的な再発防止につながります。

しかし人員不足や業務過多などの理由から、ヒヤリハット報告書の作成をおろそかにしている企業があるのも事実です。そこでヒヤリハットを防止するために、報告書作成の重要性を社内全体で共有しましょう。

企業存続に関わる重大事故を防ぐために必要

ヒヤリハット報告書作成の最終的な目的は、重大事故の防止です。ハインリッヒの法則では、1件の重大事故の裏には329件の共有されていない問題事象(ヒヤリハット)が隠されていると考えられています。

見過ごしがちなヒヤリハット事例をその都度詳細に記録し、従業員全員で共有することで再発防止が可能です。重大事故の発生は従業員や取引先など、社会的な信頼低下につながるため、ヒヤリハットのうちに根本原因を特定しておくと企業の長期的な存続につながります。ヒヤリハットに正しく対処している企業は顧客からも信頼されるでしょう。

ヒヤリハット報告書の作成・共有は企業全体の信頼性をキープするために重要です。

関連記事:ヒヤリハットとは?トラブルを未然に防ぎ企業を守ろう

ヒヤリハット報告書の記載事項を紹介

テンプレートに沿ったヒヤリハット報告書の作成を心がけることで事例の経緯や内容、根本原因が共有しやすくなります。オーソドックスな記載事項は、以下の通りです。

・従業員の基本情報
・事例の発生状況
・想定される重大事故
・事例の原因
・防止策

ヒヤリハット報告書の基本的な記載方法について見ていきましょう。

企業・従業員の基本情報

基本情報とは、ヒヤリハット事例の当事者となった従業員の情報です。ほとんどの場合、ヒヤリハット報告書を作成した従業員の氏名を記載します。氏名だけでなく、従業員の役職や年齢なども記入すると、報告書により具体性が生まれるでしょう。

また、医療や介護の現場では○○さんの担当というように事例の当事者との関係性を合わせて記録すると、事例の経緯が伝わりやすくなります。

ヒヤリハット発生の状況

ヒヤリハット報告書では事例の発生状況の詳細な記録が重要です。客観的な記録のためには、以下のポイントを意識しましょう。

・いつ
・どこで
・誰が
・何を
・なぜ

事例の発生日時は日付や時刻、曜日などできるかぎり細かく記録します。屋外での事例の場合、天候や気温、湿度まで記録するのもおすすめです。事例の発生に関連性がある要素を具体的に記録すれば、資料としての価値が高まります。

起こりうる事故

ヒヤリハットの事例を詳しく記録したら、事例から想定される重大事故を書き出しましょう。ヒヤリハット事例から重大事故につながる具体例は、以下の通りです。

ヒヤリハット:
保育園で昼寝から起きた園児Aが近くに置いてあった輪ゴムを口に入れそうになった

重大事故:
保育園で園児Aが輪ゴムを飲み込んだ

発生原因

ヒヤリハット報告書で最も重要なのは、事例の発生原因です。本質的な原因を特定しないまま報告書を作成しても、形式的な共有で終わってしまうでしょう。

発生原因の特定には、Whyツリーやなぜなぜ分析が有効です。ヒヤリハット事例を起点としてWhyの問いかけを繰り返すことで経緯と因果関係が整理され、問題の本質が見えやすくなります。Whyツリーを応用した原因特定の具体例は、以下の通りです。

事例:
病棟のトイレで歩行に介助が必要な患者Aがひとりで小便器の前に立とうとして車椅子から転倒しそうになった。

原因:
慢性的な人員不足のため患者Aのナースコールに気づけなかったため

表面的な事象にばかり注目していると本質的な原因が見えなくなってしまいます。そこでWhyツリーやなぜなぜ分析を活用すれば、根本原因が可視化されて早期の対策が可能です。

防止策

事例の防止策を具体的に記載することで、ヒヤリハット報告書は完成します。防止策の洗い出しではHowの問いかけを重視し、どうすれば同様の事例を防止できるのかを従業員全体で考えましょう。

防止策の洗い出し段階では、実現可能性の検討が重要です。洗い出した防止策を経済的コストや人的コストなどの面から分析し、実務での実現可能性を協議しましょう。

防止策を共有した後は、継続的な評価が重要です。実施した対策によって問題事象がどの程度減っているかを数値化し、効果を可視化します。分析の結果、望ましい防止効果が得られないと判断された場合、原因特定のフェーズに戻りましょう。

ヒヤリハット事例を正しく防止することで、重大事故のリスク軽減につながります。

ヒヤリハット報告書の書き方は5つのポイントを守ろう


ヒヤリハット報告書作成の際は、以下のポイントを意識しましょう。

・5W1Hに沿って記録する
・事実のみを客観的に描く
・多面的な視点から記録する
・対策を具体化する
・報告書はスピーディーに提出する

報告書のテンプレートを意識することで書式がわかりやすくなり、文章が苦手な従業員でもスムーズに事例を記録できます。それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

5W1H を意識した文章

ヒヤリハット報告書は、5W1Hで書くのが基本です。

・発生日時
・事例の当事者
・発生場所
・事例を引き起こした物や行動
・発生原因
・その場の対応

5W1Hに沿った事例の記録を心がけることで、資料としての客観性が高まります。特に事例の発生日時や場所、原因とその場の対応を詳しく記載すれば、経緯を理解しやすいため、長期的な再発防止が可能です。

報告書記載の良い例と悪い例を比較しましょう。

良い例:
5月11日午後2時15分、園児Aが園児Bからオモチャを横取りされたことに怒り、園児Bを突き飛ばしそうになった。保育士Aがその場でただちに園児Aに注意したところ、反省した様子を見せている。園児Bにケガはない。

悪い例:
保育士Aが通りかかったところ、園児Aが園児Bに対して怒っていた。原因や経緯はわからない。おそらく子ども同士のケンカだろう。

良い例ではひとつのヒヤリハット事例を5W1Hのテンプレートに沿って記録しています。一方、悪い例では事例の発生場所や日時を記録せず、そのうえ原因については個人的な推測を交えているため客観的ではありません。このように5W1Hに沿って書くだけで、客観的な記録が可能なのです。

事実の客観視

ヒヤリハット報告書は主観を排除し、客観的に記録しましょう。主観と客観の違いは、以下の通りです。

主観的な記述:
従業員Aは普段から注意力が散漫だからミスが多い

客観的な記述:
請求書の記入を手書きで行っているため細かいミスが多くなる

主観的な例では従業員個人の気質に原因を帰結させています。一方、客観的な例ではシステムの問題を事例の根本原因に位置づけているため、自動化ツールの導入などによる改善が可能です。

原因は直接的なものと間接的な視点から検証

ヒヤリハット報告書では、多面的な視点からの分析を意識することが重要です。以下の具体例をベースに考えましょう。

事例:
建設業の作業現場でトラックの荷台から積み荷の運搬を行っていたところ、荷台の下にいた従業員Aが荷台側の従業員Bの合図に気づかず、資材を足の甲に落としそうになった

上記の事例の場合、従業員Aと従業員B双方の視点からの検証が可能です。

従業員A:従業員Bに合図を送ったつもりだった
従業員B:逆光により従業員Aの合図が見えにくかった

検証の結果、積み荷を受け渡す際は必ず双方のアイコンタクトが取れてから資材を下ろす案が解決策として浮かびます。どのような業種でも最低2つ以上の視点から事例を検証することで、根本原因の整理が可能です。

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具体的な対策法の提案

ヒヤリハット事例の対策では具体性が重要です。対策が抽象的では従業員全員に共有しにくく、一時的な対策で終わってしまいます。

抽象的な対策の例:
従業員のやる気と連帯感を高めて遅刻を減らす

具体的な対策の例:
手書きによるタイムカードの記入では従業員の勤務時間を完全に把握できないため、新規ツール導入によって勤怠管理を自動化する

事例の原因とセットで対策を検討すると、より具体性が高まるでしょう。

スピーディーな報告書の提出

ヒヤリハット報告書は問題事象の防止で完結します。事例発生からすみやかに報告書を作成し従業員で共有すれば、重大事故のリスク軽減につながるでしょう。

日々の業務が過密では報告書作成がおざなりになってしまうため、ヒヤリハット事例共有のための時間を毎日10分ずつ確保したり、クラウドでの報告書作成を可能にしたりする工夫が重要です。

関連記事:ヒヤリハット報告書の書き方とは?報告書の記入事項を解説

ヒヤリハット報告書は様々な人の役に立つ


ヒヤリハット報告書の作成には、様々な効果があります。ヒヤリハット報告書作成の意味を見ていきましょう。

企業のため

ヒヤリハット事例の防止は、重大事故のリスク軽減につながります。従業員の労災やストレスにともなう精神疾患の多発は、長期的には企業の社会的信頼低下に直結するため、大きなリスクと言えるでしょう。

たとえば、お菓子の生産工場では製造ラインでのヒヤリハットが原因で異物が混入するかもしれません。食品の異物混入は企業の消費者離れの大きな原因です。たった一度の不祥事によって、信頼を失った例も少なくありません。

また、軽微なヒヤリハット事例にも丁寧に対処している企業は顧客からも信頼され、長期的なシェアの拡大につながります。重大事故防止のためにもヒヤリハット事例の共有および予防が不可欠です。

従業員とその家族のため

ヒヤリハット事例にともなう労災の減少は、従業員とその家族の暮らしの安定化につながります。現在の従業員だけでなく将来の従業員にとって働きやすい労働環境を整えることで職場の雰囲気が良くなり、働くモチベーションも向上するでしょう。

また、ヒヤリハットや重大事故のない企業体制は求職者へのアピール材料です。肉体的・精神的に働きやすい職場環境を整えることで優秀な人材確保につながります。

まとめ

ヒヤリハット報告書はヒヤリハット事例の共有防止だけでなく、重大事故のリスク軽減に有効です。報告書作成の際は5W1Hを意識し客観的に事例を記録することで誰が見てもわかりやすくなり、再発防止につながります。重大事故のリスク軽減から信頼性向上を実現するためにも、効率的な報告書作成を徹底しましょう。

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