こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
ヒヤリハット事例が発生した場合、そのうちの何割かが重大事故につながっています。重大事故を防止するためには、事前にヒヤリハット事例を共有することが重要です。
そこで本記事では、注意すべきヒヤリハット事例や主な原因、効率的な改善方法を業種ごとに解説します。
そもそもヒヤリハットとは?
ヒヤリハットとは、作業中に発生する潜在的な危険やミスを予測・防止するための情報共有や取り組みをあらわした用語です。重大事故に至らないアクシデントや予期せぬトラブルをヒヤリハット事例としてまとめ、従業員で共有することで再発防止につなげます。
ヒヤリハットのベースは「ハインリッヒの法則」です。ハインリッヒの法則では、1件の重大事故の背景には29件の見過ごされたミスがあり、さらにその直前には300件のわずかなヒューマンエラーが起きていると考えます。言い換えれば重大事故の原因には329件のヒヤリハット事例が隠されており、ヒヤリハット事例を適切に共有することで深刻な事故の発生リスクの抑制が可能なのです。
ヒヤリハットは職場の安全管理システムとして重要な役割を果たします。従業員や作業者の意識向上と安全な職場環境の確保を実現するうえでは、ヒヤリハットの活用は欠かせません。
【事例集】各シーンに潜むヒヤリハットを紹介
ヒヤリハットの応用による重大事故防止の考え方は、職場だけでなく家庭でも適用できます。本章では家庭内や通勤中などシチュエーション別に想定されるヒヤリハット事例を見ていきましょう。
家庭
一般家庭でヒヤリハット事例が生じやすいエリアは、以下の通りです。
・キッチン
・浴室
・リビング
キッチンでは火や油を扱うため、火災や爆発などの事故につながるため注意しましょう。特にアルコールで手指を消毒した直後にコンロで火をつけたり、鍋に油を注いだりすると引火や爆発のリスクが高まります。
また、浴室は命に直接かかわる事故が発生しやすいエリアです。たとえば、浴槽で温まっている間に少しの間寝てしまうだけでも溺れるリスクがあり、最悪の場合死亡事故につながります。アルコールを飲んでいる状態での入浴は眠くなりやすいため、絶対に避けましょう。
さらに、リビングでは大型家具や家電による転倒や転落事故に注意が必要です。特に小さいお子さんがいるご家庭では、転落・転倒事故防止対策を徹底しましょう。乳幼児の場合、高さ数センチのソファから転落しただけでも骨折や打撲など深刻なケガにつながりやすいため、高さのある家具を極力置かないようにしたり、テーブルの角をテープで丸めたりするなどの工夫が必要です。
通勤
通勤中のヒヤリハット事例は、以下のパターンに分けられます。
・運転側(自動車)
・歩行者側
運転側のヒヤリハットの典型例は、前方不注意による追突リスクです。前方の車の急ブレーキによる事故は多数発生しており、速度や重量などの条件によっては死亡につながるリスクがあります。また、前方をしっかり注視していたとしても交差点や脇道などの死角から車が割り込んでくる可能性があるため、事故を完璧に防ぐのは非常に難しいでしょう。
歩行者側のヒヤリハット事例としては、信号無視や脇見運転の車両による交通事故が挙げられます。また、自転車の場合は悪路や悪天候による転倒事故が考えられ、電車の場合はホームへの転落事故のリスクも無視できません。
【事例集】職場に潜むヒヤリハットを紹介
職場でのヒヤリハット事例は日々の業務の中で埋もれたり、過小評価されてしまったりする傾向があります。本章では、職場で想定されるヒヤリハット事例を詳しく見ていきましょう。
転落・転倒
職場での転落・転倒事故は深刻な事態につながりやすいため、早期の予防が必要です。職場で想定される転落・転倒事故の具体例は、以下の通りです。
・雪道で荷物を運搬中、足を滑らせて転倒した
・トラックの荷台から荷物を下ろす際、手が滑って大型荷物が顔面に落下した
・商品の棚卸し作業の際、足元の荷物につまずいて床に転倒した。さらに落下した荷物によって負傷した
物流現場の場合、大型の荷物を運搬する必要があるためヒヤリハットのリスクが日常的に高まります。特に家電や家具などは重量があるため、落下による負傷リスクがより高いでしょう。
荷物の落下事故については、箱に持ちやすい取っ手をつけたり搬入時には2人での作業を義務づけたりすれば、ヒヤリハット対策につながります。また、倉庫内の転倒事故防止には従業員の動線上に荷物を置かないようにしたり、荷物を荷台に乗せたりする対策が有効です。
崩壊・崩落
重労働をともなう建築・土木現場では、大型機械の倒壊や崩落によるヒヤリハット事例が多数発生します。作業で想定されるヒヤリハット事例は、以下の通りです。
・台車が転倒し、下敷きになりかけた
・給水ポンプが運搬中に倒れ、足の上に落ちそうになった
・鉱山で石がヘルメットにあたった
崩壊・崩落によるヒヤリハットは、設備を固定すれば防止が可能です。また石や岩などの崩落は、声かけなどによる防止が有効ですので、鉱山などの現場では必ず周知しておきましょう。
はさまれ・巻き込まれ
大型機械や車両によるはさまれ・巻き込まれ事故は、建築や工場、介護など幅広い業種で発生します。実際に報告されているヒヤリハットの具体例は、以下の通りです。
・工場でボール盤での穴あけ作業中、手袋が機械に巻き込まれそうになった
・物流現場で荷下ろしの作業中、トラックが傾斜でバックしてきたため壁にはさまれそうになった
・介護現場で車椅子に乗った利用者を送迎車から降ろす際、リフトと地面の隙間に足の爪先をはさまれそうになった
はさまれ・巻き込まれ事故は、ダブルチェックによる注視やフェールセーフシステムの強化によって防止できます。
切れ・こすれ
大型機械を扱う工場や食品加工業で多数発生するのが、切れ・こすれ事故です。現場での報告例が多い切れ・こすれ事故としては、以下の例が挙げられます。
・竹林での作業中、チェーンソーが予期せぬ跳ね上げを起こした
・食肉スライサーの刃に接触しかけた
・食パンをスライスしていて指が機械に巻き込まれそうになった
切れ・こすれ事故は大型機械にともなうケースが多いため、従業員への機械の安全な使用方法の周知徹底や危険感知センサーの導入が防止策として有効です。
感電・火災
製造業や建設業で多数報告される感電・火災は一瞬にして発火や爆発事故を引き起こすため、確実な防止が求められています。感電・火災事故の具体例は、以下の通りです。
・フォークリフトが作業現場のボンベに衝突し、可燃性物質のアセチレンが漏れ出した
・洗浄剤のノルマルヘキサンに引火し、火炎放射が発生した
・アーク溶接の作業中に火花が作業服に引火した
他にもよりヒューマンエラーに近いヒヤリハットとしては喫煙所での吸殻の発火や無許可作業による溶媒の噴出が挙げられます。感電・火災は瞬時に重大事故へとつながるため、ヒューマンエラーを含め、ヒヤリハットの段階による共有および防止が不可欠です。
有害物
薬品の研究や開発など、有害性の高い物質を日常的に扱う現場で発生リスクが高まります。有害物によるヒヤリハットの具体例は、以下の通りです。
・漂白剤と洗剤をひとつの容器に混ぜてしまった
・用具の洗浄中にエタノールが眼に入った
・入室者に注意されるまで一酸化炭素中毒のリスクに気づかなかった
有害物によるヒヤリハットの原因は、大きく分けて有毒ガスや薬品の2つがあります。また一見危険性が低いようでも、住宅のリフォーム現場や飲食店の調理場は有害なガスが発生しやすく、なおかつ換気が難しいため注意が必要です。
さらに、音や光など一見すると無害に思えるものも条件次第では人体に悪影響を及ぼすため、ヒヤリハットが報告された段階から適切に原因を考えて対策を講じましょう。
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ヒヤリハット事例からわかる対処法
ヒヤリハット事例を正しく分析し、原因別に対策を講じることで重大事故のリスクが大幅に抑えられます。うっかりミスをはじめとするヒヤリハット事例を放置すると、負傷や疾病、死亡事故につながるため抜本的な対処が重要です。そこでヒヤリハット事例をもとに、職場や家庭ですぐに実践できる対処法を見ていきましょう。
常に危険を予測する
ヒヤリハット防止のポイントは敏感な危険予測です。ハインリッヒの法則が示唆しているように、重大事故は単体では発生しません。
ヒヤリハットの根本には、不注意やうっかりミスがあります。薬品開発や製造業では、従業員の有害性への認識不足から重大事故につながるケースも少なくありません。有毒ガスや可燃性物質など、業務の具体的な危険性について従業員に周知徹底すれば、事故のリスクを大きく軽減できます。
製造現場や溶接業など機械によるヒヤリハットが多い場合は、危険感知センサーなどフェールセーフの導入が事故防止に有効です。一見すると危険性が低く思える現場でも、ささいなケアレスミスによって重大事故が生じます。どのようなシチュエーションでも、もしかしたら事故が起きるかもしれないという発想の共有が大切です。
環境を整える
労働環境の未整備もヒヤリハットの発生に深く関係します。騒音が目立ったり衛生面が悪かったりと問題の多い労働環境ではどんな従業員も集中できず、ケアレスミスが増えてしまうでしょう。
特に荷物や部品で散らかった現場は移動の際につまずきやすくなり、乱雑な環境は集中力低下につながります。また可燃性物質を常時取り扱う現場では、ガソリンやガスボンベなどの配置に注意が必要です。
万が一ヒヤリハットが起こった場合はすぐに対策
職場でヒヤリハットが発生したら、すぐに責任者に報告しましょう。社内であらかじめヒヤリハット対策の責任者を決めておき、事故の情報を集約すると管理しやすくなります。
報告する際には、情報の整理が重要です。事故の概要を5W(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ)に沿ってまとめ、報告後はH(どうすれば解決できるか)をチームの課題として協議します。大規模なチームの場合は、事例を報告するルートを固定化すると情報の共有漏れを防げるでしょう。ヒヤリハット報告を目的とした定期的なカンファレンスも有効です。
ささいなことだからとヒヤリハットを見逃したり、隠したりすると重大事故につながるため、発生時点で速やかに報告し、再発防止策の協議を合わせて行いましょう。
まとめ
ヒヤリハット事例の防止は、職場の重大事故のリスク軽減に有効です。起きてしまった事故を従業員同士で正しく共有し、解決策を協議すれば職場に連帯感が生まれ事故が起きにくい労働環境が整います。また、定期的なストレスチェックや産業医によるカウンセリングなど、従業員のメンタルヘルスへの配慮も事故のリスク軽減に有効です。
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