こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
中小企業経営者の中には、離職率が高いことにより「採用コストの増加」や「企業イメージの悪化」を心配している方が多いのではないでしょうか。
資本金や人的資本が比較的少ない中小企業にとって、離職率の高さから生じる問題は企業経営におけるリスクとなります。影響が大きくなる前に、改善する必要があるでしょう。
そこで本記事では、中小企業特有の離職原因と改善方法について解説します。離職率の高さに悩んでいる中小企業経営者は、ぜひ参考にしてみてください。
離職率の計算方法と平均
自社の離職率を正しく評価するには、計算方法と平均について理解する必要があります。企業によって、離職率の算出基準は異なります。離職率の計算方法は、以下のとおりです。
離職率=離職人数÷社員数×100
「どの時点の社員数を採用するか」や「対象とする期間」は、法的に決められた基準がなく、企業によって異なります。自社の離職率を他社と比較する際は、算出基準を合わせましょう。厚生労働省が実施する雇用動向調査に記載される平均離職率は、以下のように計算されます。
離職率=離職人数÷1月1日の常用労働者数×100
令和3年の雇用動向調査によると、日本全体の平均離職率は13.9%でした。自社の数値が平均を上回る場合、離職率が高いと判断できます。ただし、企業規模や産業によって平均離職率は大きく変わります。企業属性に応じた分析を行いたい場合は、企業規模別平均や産業別平均と比較すると良いでしょう。離職率に関して詳しく知りたい方は、別記事「離職率」をあわせてご確認ください。
参照元:厚生労働省|令和3年雇用動向調査結果の概要 1.入職と離職の推移
中小企業の離職率は大企業より高い
中小企業の離職率は大企業より高い傾向があり、とくに新卒者では大きな差があります。厚生労働省による令和3年雇用動向調査における、企業規模別離職率は以下のとおりでした。
- 社員1,000人以上の企業:12.9%
- 社員300~999人の企業:15.5%
- 社員100~299人の企業:19.8%
厚生労働省|雇用動向調査 年次別推移 性、企業規模別入職・離職率
企業規模が小さくなるほど、離職率が高くなっています。また、新卒者の離職率で差が顕著に現れています。厚生労働省が2022年10月に発表した、新規大学卒就職者の事業所規模別の就職後3年以内離職率をご覧ください。
社員数 | 離職率 |
---|---|
1,000人以上 | 25.3% |
500~999人 | 29.6% |
100~499人 | 31.8% |
30~99人 | 39.4% |
5~29人 | 48.8% |
5人未満 | 55.9% |
参照元:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)離職の推移
社員数1,000人以上の大企業と29人以下の企業では、約2倍の差が出ています。大企業よりも離職しやすい傾向があるので、中小企業の経営者には対策が求められます。とくに離職率が高い新卒者を、重点的にサポートする必要があるでしょう。
離職率が高い中小企業の特徴5選
大企業よりも中小企業の離職率が高いことから、特有の離職原因があると言えます。ここでは、離職率が高い中小企業の特徴を5つ紹介します。
- 人間関係が狭く逃げ場がない
- 部署異動によるキャリアチェンジが難しい
- 企業の将来に不安がある
- 業務の範囲が広くて疲弊する
- 給料に不満を持つ社員が多い
自社に当てはまる特徴がないか、確認してみてください。
人間関係が狭く逃げ場がない
どんな企業でも、人間関係に悩みを抱えている社員はいるでしょう。ただし、中小企業では社員数が少なく、相談できる相手を見つけにくいため、ひとりでストレスを貯めこむケースが多いです。
大企業であれば別の部署の同僚に話を聞いてもらうなど、当事者と直接関係のない人に相談しやすいでしょう。また、根本的な解決方法として、別部署への異動が考えられます。しかし、企業規模が小さい中小企業では異動が難しく、結果的に離職につながるケースがあります。
部署異動によるキャリアチェンジが難しい
大企業ではジョブローテーションがあり、数年で部署異動するケースが多くあります。しかし、中小企業では、実施の度に教育が必要となる部署異動を、積極的に導入するケースは少ないです。
入社後に別部署に異動したいと考えても、タイミングよく空きが出るとは限りません。別の職種でキャリアをつみたい場合、転職が近道になると考えて離職する社員が増える可能性があります。
企業の将来に不安がある
規模が小さい企業の多くは不測の事態に対応する余力が少なく、将来に不安を感じる社員がいます。実際に、コロナショックでは大企業に比べて中小企業でより厳しい影響が出ました。
東京商工リサーチのアンケートで「貴社の今年(2020年)5月の売上は前年同月を「100」とすると、どの程度でしたか?」との質問に対し、50未満(売上半減)と回答した大企業は14.2%に対し、中小企業は20.3%でした。
参照元:東京商工リサーチ|第5回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査
外部環境の影響を受けやすい中小企業では、将来に不安を感じて転職する社員がいるでしょう。
業務の範囲が広くて疲弊する
中小企業では1人の社員が複数の役割を担っており、業務範囲が広い傾向があります。離職率が高い企業では、在籍社員が離職者の業務をカバーすることが多く、さらに範囲が増える悪循環となります。
また、優秀な社員だからといって多くの業務を任せ過ぎると、疲弊して離職する可能性があります。1人の社員に多くの業務が偏らないよう、注意が必要です。
給料に不満を持つ社員が多い
大企業に比べて中小企業の給与は低い傾向にあり、給料に不満を持つ社員が多いと考えられます。厚生労働省がまとめた令和3年賃金構造基本統計調査によると、企業規模別平均給与は以下のとおりです。
- 大企業:33万9700円
- 中企業:29万9800円
- 小企業:27万9900円
中小企業では、大企業と同レベルに給料を上げるのが難しい場合が多いでしょう。そのため、離職率を下げるには仕事のやりがいや働きやすさなど、別のメリットを提供する必要があります。
離職率が高い中小企業に潜む3つのリスク
離職率の高さは中小企業にとって、経営に悪影響を及ぼす問題となりかねません。ここでは、とくに中小企業にとって重要な3つのリスクを紹介します。
- 採用コストが負担になる
- 離職の連鎖がおこる
- ブラック企業と認識される
リスクをきちんと把握して、早期に対策を実施しましょう。
採用コストが負担になる
離職率が高いと、人員補充の求人広告を出したり人材会社を利用したりする必要があるため、採用コストが増えます。大企業に比べて資本金が少ない中小企業では、採用にかかるコストが増加すると大きな負担になります。
本来であれば、商品やサービスの向上に使用すべき資金を採用に回すため、企業成長への投資ができない可能性があるでしょう。企業の資金をどのように配分するかは企業経営に直結する問題であるため、採用コストの増加は大きなリスクといえます。
離職の連鎖がおこる
人的資本が少ない中小企業では、離職者が出ると在籍社員の業務量が増加し、社員の疲弊につながります。疲れ切った社員が退職するケースも考えられ、さらに離職者が増える可能性があります。
また、人間関係が狭いため離職者の影響を受けやすく、在籍社員が転職に抵抗がなくなる点もデメリットです。
ブラック企業と認識される
離職率が高いと、職場環境が悪いという印象を持たれやすくなります。とくに知名度が低い中小企業は、離職率が高い印象だけが広まり、最悪の場合ブラック企業との口コミが拡散されるケースもあるでしょう。
悪い企業イメージが広まると、良い商品やサービスを提供しても売れなくなる可能性があります。売上に直結する問題となるため、企業としては避けたい事態です。
中小企業のための離職対策5選
中小企業は経済的・人的資本が少なく、給料の大幅アップや手厚い教育制度の導入などが難しい場合が多いでしょう。ここでは、限られたリソースでも導入可能な離職対策を5つ紹介します。
- 採用時のミスマッチを減らす
- コミュニケーションを活性化する
- 企業のビジョンを共有する
- キャリアパスを示す
- 労働環境を改善する
自社で採用できる対策があるか、ぜひ確認してみてください。
採用時のミスマッチを減らす
中小企業では大企業に比べて新卒者の離職率が高いですが、採用時のミスマッチが原因の1つに挙げられます。企業や職種への適性をきちんと判断できなければ、ミスマッチがおこります。適性検査などを活用して、自社で活躍できる人材か確認すると良いでしょう。
タレントパレットなら無償で適性検査が利用でき、採用のミスマッチを防げる機能があります。職種に合った適性をもつ人材を採用したい企業は、ぜひ導入をご検討ください。
コミュニケーションを活性化する
人間関係の悪化で離職する社員を減らすために、コミュニケーションの活性化は有効です。風通しの良いオープンなコミュニケーションができれば、ハラスメントやいじめなどを防止できるでしょう。
具体的には、コミュニケーションが生まれやすい内装にしたり、休憩場所を開放的にしたりする方法があります。大がかりな改装をしなくても、デスクの配置を変えるなど少しの工夫で実施できるので、ぜひ取り入れてみてください。
企業のビジョンを共有する
企業のビジョンを伝え、成長に向けての施策を共有できれば、社員からの信頼を得られるでしょう。確固とした方針のもとに、企業活動が行われていると伝わるためです。安心して働ける企業と認識されることで、離職率を減らせます。企業への所属意識を高める効果もあるため、社員エンゲージメントの向上が期待できるでしょう。
社員エンゲージメントについて詳しく知りたい方は、別記事「組織エンゲージメント」をあわせてご確認ください。
キャリアパスを示す
社員に「長く在籍したい」と考えてもらうには、5年後・10年後の将来像を示すことが重要です。中小企業では事業規模が小さいため、自分の携わっている業務がどのように企業に貢献できるのか理解しやすいメリットがあります。
企業のビジョンと合致した社員個人のキャリアパスを示せば「長く勤務し続けたい」と感じる社員が増えるでしょう。
たとえば「店舗数が100店舗まで増えたらエリアマネジャーを創設するため、そのポジション候補として勤務してほしい」などが考えられます。企業とともに、社員も成長できると示すことが大切です。
労働環境を改善する
労働時間が長く休暇が取りにくい企業は、社員が良い労働環境の企業を求めて転職する可能性があります。システムを導入するなどして業務を効率化すれば、労働時間の短縮は可能です。
また、休暇を取得する社員が少ない企業は、上司の人事評価項目に「部下の有給消化率」を入れてトップダウンで改善する方法もあります。業務量を適正にし、企業の上層部が率先して定時に帰る姿勢をみせれば、労働環境の改善につながるでしょう。
離職率を下げる方法についてさらに詳しく知りたい方は、別記事「離職率を下げるには」をあわせてご確認ください。
離職率高い中小企業のまとめ
通常の業務でも手一杯な中小企業は多く、離職対策に関わる業務を追加するのは負担が大きいと言えます。しかし、離職率が高い状態を放置するリスクは大きく、早めの対策が求められます。リソースが少ない中小企業では、ツールを用いて効率的に対策を行うと良いでしょう。
「タレントパレット」には、採用のミスマッチを防ぐために適性検査を行える機能があります。また、社員へのアンケートの実施・集計・分析ができ、社員満足度やエンゲージメントの測定に活用できます。ツールを活用して離職率を改善したい企業は、ぜひ「タレントパレット」の導入をご検討ください。