ダイバーシティ&インクルージョンとは?進め方や成功させるポイントを解説


ダイバーシティ&インクルージョンとは?進め方や成功させるポイントを解説

多様性を受容し、誰もが自分の力を存分に発揮することを、ダイバーシティ&インクルージョンといいます。多様化が進む中、多くの企業が取り組む考え方ですが、まだ把握できていない方も多いでしょう。本記事では概要やメリット、進め方などを解説します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


年齢や性別、出身、価値観など個々の持つ多様性を受容し、誰もが自分の力を存分に発揮することを「ダイバーシティ&インクルージョン」といいます。多様化やグローバル化が進む昨今、多くの企業が取り組む考え方です。近年、推進されるようになった考え方であり、どのように取り組むべきか悩んでいる方も多いでしょう。


組織やチーム体制を改善したい経営者や人事担当者に向けて、本記事ではダイバーシティ&インクルージョンの概要やメリット、課題、進め方などを解説します。ダイバーシティ&インクルージョンを実践して、優秀な人材の確保や従業員のモチベーション向上を目指す方は、ぜひ参考にしてください。


ダイバーシティ&インクルージョンとは

ダイバーシティ&インクルージョンは、多様性を表す「ダイバーシティ(Diversity)」と受容を表す「インクルージョン(inclusion)」を合わせた言葉です。それぞれの言葉の意味を踏まえつつ、ダイバーシティ&インクルージョンについて解説します。


ダイバーシティの意味

ダイバーシティは「多様性」「相違点」などの意味を持つ英語です。ビジネスで使われることが多い言葉で、組織の中に年齢や性別、価値観、趣味嗜好などが異なる人材が集まった状態を指します。


人種差別やジェンダー問題が大きな課題となっていた1960年代のアメリカにおいて、不平等な状況を解消することを目的に推進され始めました。日本では、1980〜1990年代にかけて、男女の雇用差別を是正するための法律が制定され、少しずつダイバーシティが注目されるようになっています。


近年は性別や人種、年齢だけでなく、価値観や働き方、ライフスタイルなどさまざまな観点で多様性を受容することを意味し、日本の企業でも広く認知されるようになりました。


インクルージョンの意味

インクルージョンは「包括」「受容」などの意味を持ちます。ビジネスでは、企業に属する全ての従業員が業務に参画・貢献するチャンスがあり、個々のスキルや能力、価値観が尊重された上で活かされることです。


この概念は格差や差別により、本来受けられるはずの権利やサービスなどが与えられない「ソーシャル・エクスクルージョン(社会的排除)」が問題となっていた、1970〜1980年代のヨーロッパで発生しました。


社会的に排除される人たちを救い、誰もが社会に参加するチャンスを持つ「ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)」が展開されたことが発端です。多様性が尊重されるようになった近年は、ビジネスにおいても欠かせない概念として広まっています。


ダイバーシティ&インクルージョンの目的

働き方の多様化やグローバル化、テクノロジーの劇的な進化など、変化が著しい現代において、企業がより成長していくためには、従来の考え方を打破していかなければなりません。加えて、どのような状況でも対応できる柔軟な体制を整えることが求められます。


ダイバーシティ&インクルージョンによって多様性を受け入れられるようになると、これまでになかった価値観やアイディアを持った人材を発掘することにつながります。また、これまで培ったノウハウやスキルと組み合わせることで、新たな発想が生まれやすくなるでしょう。


このように現代社会の激しい波に乗りながら、多様化する消費者ニーズにも応えられる組織作りをすることが、企業におけるダイバーシティ&インクルージョンの大きな目的です。


企業でダイバーシティ&インクルージョンが必要とされる背景

近年、少子高齢化のあおりを受けて、労働人口の減少が課題となっています。いずれの業界も人材確保に頭を抱える中で、従来の男性を主とする雇用形態では太刀打ちできない状況です。こうした課題を乗り越えるためには、女性や外国人、高齢者などバラエティ豊かな人材を受け入れる必要があります。

また、一昔前までは終身雇用が一般的であり、仕事優先という考え方の人も多く見られました。しかし、多様性が重視される現代は、プライベートも大切にしたいと考える人が増えています。価値観の変化に対応するには、企業側もダイバーシティ&インクルージョンの概念を取り入れ、これまでに培ってきた文化を大幅に改革せざるを得ないでしょう。

その他、グローバル化やテクノロジーの進化も、ダイバーシティ&インクルージョンが必要とされる理由の一つです。このように大きく変わり行く時代において、企業を成長させる上で、ダイバー&インクルージョンは不可欠な要素といえます。

ダイバーシティ&インクルージョンの「属性」の分類

ダイバーシティ&インクルージョンにおける「多様性」は多岐にわたり、さまざまな属性が考えられます。ダイバーシティ&インクルージョンをビジネスに取り入れるためには、どのような属性があるかを理解することが大切です。主な属性として、4パターンをご紹介します。


女性の活躍推進

女性の活躍推進は、ダイバーシティ&インクルージョンの中でも身近な取り組みの一つです。以前の日本企業では、出産や育児などライフステージの変化を理由に止むを得ず退職するケースが多いほか、役職に就くのは男性が有利という考え方が一般的でした。


近年になって、ようやく女性が活躍する機会が増えつつありますが、それでもまだ女性にとって働きにくい環境は根強く残っています。


こうした状況を受けて仕事と家庭を両立しやすい職場環境作りや、女性の採用・昇進などにおける積極的な機会を提供すること、女性本人の意思を尊重することなどを目的とした「女性活躍推進法」が2016年4月に施行されました。


ビジネスにおいて女性が自分らしく活躍することで、女性だからこそ生み出されるアイディアや価値観を活かせるようになります。その結果、多様化するニーズにも対応しやすくなるでしょう。


シニア層の活用

少子高齢化の拍車がかかる中で、シニア層を活用することを目的とした、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが増えています。


従来、日本の企業における定年といえば60歳が一般的でした。また、定年後に働くことを望んでも継続雇用されるとは限らないため、仕方なく現役を離れるケースも多く見られました。


しかし、近年のシニア層の労働力は高く、加えて長年培った知識やスキルも豊富です。厚生労働省でも70歳までの就業機会確保や定年制の廃止などを推進する「改正高年齢者雇用安定法」を2021年4月から施行しています。


経験値の高く多様な人脈を持つシニア層の活躍は、競争力アップが期待できるほか、若年層の育成にもよい影響を与えるでしょう。


障がい者の活躍促進

障がい者の活躍促進も、ダイバーシティ&インクルージョンで重視される取り組みの一つです。例えば、障がい者がスキルを発揮しやすい業務の抽出や、スキルアップを目的とした研修制度の設置、就労支援機会の提供などが挙げられます。


近年、誰もが利用しやすいように作られる「ユニバーサルデザイン」が浸透しつつあり、新たな商品やサービスを開発する上でも無視できなくなっています。こうした中で、障がい者の視点やアイディアを取り入れることが、今後重要視されるでしょう。


また、IoTの進化により、障がいがあっても担当できる任務は増えているほか、コミュニケーションも取りやすい環境が整っています。障がいの特性を把握し、能力を活かした適切な職務に配置することは、企業の生産性向上にもつながるでしょう。


グローバル人材の積極的な雇用

グローバル化が進む中で外国人を積極的に雇用する取り組みも、ダイバーシティ&インクルージョンにおける重要なポイントです。


外国人を雇用するためには言語の壁だけでなく、価値観や文化、宗教観などの違いも受け入れなければなりません。例えば、外国語が話せる相談員を設置したり、習慣に沿った働き方をサポートしたりする必要があるでしょう。


外国人の雇用がスムーズに進むと、日本人では思いつかなかったアイディアが期待できます。日本人の視点を踏まえることで、これまでにはない新たな文化やイノベーションを生み出せる点もメリットです。


LGBTへの理解促進

ダイバーシティ&インクルージョンでは、LGBT(性的マイノリティ)への取り組みも不可欠です。職場におけるLGBTの理解が低いと、差別や偏見が生まれやすくなり、当事者にとっては苦痛な環境となります。その結果、優秀な人材を手放すことにもつながるでしょう。


誰もが自分らしく働き、そのスキルを存分に発揮するためには、LGBTに対する理解が求められます。LGBTに関する研修の開催や相談窓口の設置、同性パートナーに関する待遇などの取り組みを行い、LGBTに限らず全ての従業員の個性が尊重される職場作りが重要です。


ダイバーシティ&インクルージョンの「発想・価値観」の分類

ダイバーシティ&インクルージョンを理解するためには、発想や価値観に関する多様性を知ることも重要です。4つの分野に分けて解説します。


一人ひとりの意見の多様性

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みでは、企業全体の意思決定をする上で、従業員一人ひとりの意見を尊重することが大切です。


従来、日本企業では従業員全員が同じ価値観を持ち、一つの目標に向かっていくムラのない組織作りが一般的でした。こうした環境では自分の意見が言いづらく、大多数の考え方に寄り添わざるを得ないというデメリットがあります。


一方で意見の多様性を受け入れることで、想像を超えるアイディアが生まれやすくなり、組織全体の底上げにもつながるでしょう。


経験や職能の多様性

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むと、さまざまな経験値や職務を遂行する能力を持つ人材が集まります。従来の画一的に均された企業では、一人ひとりのスキルや知識が活かされる環境が整っていませんでした。しかし、それぞれが持つ「知」を尊重することは、企業の成長に欠かせません。


個々のスキルや知識は、これまでに培ってきた経験によって異なります。その背景や多様性を理解し受容することは、ダイバーシティ&インクルージョンにおける重要なポイントです。


例えば異業種で経験を積んだ人材の雇用により、業界の常識を打ち破る斬新なアイディアや気づきが生まれる可能性があります。


宗教に対する理解

多様な人材を受け入れるにあたって、宗教に対する理解は欠かせないポイントです。日本人の多くは神社仏閣を大切にしながら、チャペルで結婚式を挙げることもあり、宗教はさほど生活に密着するものではありません。


しかし世界に目を向ければ、宗教上のルールが人生にも大きく影響を与えるケースが多く見られます。


例えばイスラム教を信仰している場合、決まった時間に礼拝をする習慣があります。また、ヒンズー教では肉食を避ける傾向にあり、企業でもこうした宗教による違いを受け入れることが大切です。


ライフスタイルや価値観の多様性

近年、働き方だけでなく、ライフスタイルそのものの多様性が浸透しつつあります。例えば、個人間で貸し借りを行う「シェア」の流行から、利便性や効率性が重視されるようになったことが分かるでしょう。


従来は「所有」が豊かさの象徴とされていましたが、これらの価値観の変化がライフスタイルに大きく影響しています。また、結婚をしないという選択をする人も増えており、世帯の構成も大きく変わりました。


幸福の基準や価値観は人それぞれであり、ダイバーシティ&クルージョンに取り組む際も考慮するべきポイントです。


ダイバーシティ&インクルージョンの「働き方」の分類

働き方の多様化も、ダイバーシティ&インクルージョンに欠かせない視点です。


近年、働き方改革の推進に加えて、新型コロナウイルス感染症に対応した変化により、在宅勤務をするケースが増加しました。また、ワークライフバランスを保つために、時短勤務を活用する従業員も多いでしょう。


さらに、従来は禁止される傾向にあった副業を認める動きもあり、将来的にはますます働き方の多様性が進むことが考えられます。一人ひとりに見合った働き方を受け入れることは、従業員の経験値を増やし、企業にとっても大きなメリットとなるでしょう。


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ダイバーシティ&インクルージョンを推進するメリット

企業がダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、さまざまなメリットが得られます。主なメリットを5つ確認しておきましょう。


優秀な人材を確保できる

ダイバーシティ&インクルージョンによって、個々の多様性を受容することは、優秀な人材の確保につながります。


従来の日本企業では男性中心の考え方が主流だったため、いくら秀でた才能があっても条件から外れると不採用になる可能性がありました。しかし少子高齢化が進み、人材不足が叫ばれる中、古い体制は変えていかなければなりません。


ダイバーシティ&インクルージョンを活用した意識改革や体制改善は、これまで見逃していた人材の発掘や個々の個性を発揮するきっかけになります。


新商品やサービスの開発などイノベーションの創出が期待できる

多様な人材を積極的に雇用すると、企業経営にさまざまな視点が取り入れられ、イノベーションの創出につながります。

例えば外国人を積極的に雇用することで、日本人にはない視点を得られるでしょう。また、経験豊かな高齢者の知識やスキルは、若年層にとっても貴重な財産といえます。


ダイバーシティ&インクルージョンの推進によって得られる多様な考え方やアイディアは、新商品やサービスを開発する上でも不可欠です。


従業員のモチベーションが向上する

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みは、新たな人材の発掘だけでなく、すでに働いている従業員にも関連します。


キャリアアップにつながる制度が整備され、多様性を受け入れる環境作りがなされると、誰もがスキルや個性を発揮でき、発言もしやすくなるでしょう。自分らしく生きながら役目を果たせることは、モチベーションアップにつながります。


そのためにも、ダイバーシティ&インクルージョンの目的やメリットを説明する機会を設け、従業員にも自分ごとであることを理解してもらうことが大切です。


離職率の低下や定着率の向上が見込める

企業が各従業員の個性やスキルを把握し、それぞれに見合った業務に配置できるようになると、仕事に対する充実度が高まります。働きやすい環境が整うことで、企業に対する不満解消にもつながるでしょう。


その結果、離職率の低下や定着率の向上が見込める点も、ダイバーシティ&インクルージョンのメリットです。特に人材不足や若年層の定着率の低さを課題に挙げる企業にとって、見逃せないポイントといえます。


企業のイメージアップにつながる

ダイバーシティ&インクルージョンは、社会的に注目されている考え方です。そのため、企業の取り組みが広く知られれば、イメージアップにもつながります。


経済産業省により、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む優秀な企業を表彰する機会が設けられましたが、積極的な取り組みが評価されると、今後メディアで取り上げられる可能性もあります。


結果的に世間に認知されるようになれば、企業の信頼度が上がり、新規顧客の獲得にもつながるでしょう。


ダイバーシティ&インクルージョン推進における課題

多くのメリットがあるダイバーシティ&インクルージョンの取り組みですが、課題もあります。特に押さえておきたい課題を4つ解説します。

従来の労働環境や価値観にとらわれてしまう

従来の労働環境や価値観が浸透している中で、多様性を受け入れる新しい概念を取り入れることは大きな改革です。古い習慣が根強く残っている従業員にとって、急な変化は受け入れがたいでしょう。


こうした固定観念を払拭し、スムーズに取り組みを進めるためには、事前にダイバーシティ&インクルージョンについて具体的に説明した上で、しっかりと理解してもらうことが大切です。つまり、従業員の意識改革が成功の鍵といえます。


従業員同士の誤解や偏見が生じる

ダイバーシティ&インクルージョンに対する従業員の理解が乏しいと、誤解や偏見が生じる原因となります。


例えば、女性の活躍に特化した取り組みだと誤解されれば、男性従業員の不満が募る恐れがあります。そのほか、マイノリティだけが優遇されると勘違いしている方も少なくありません。


一部の従業員を優遇する取り組みではなく、従業員全体に関連する平等な機会を意味することを、十分に理解してもらう必要があります。


コミュニケーションの取りづらさが発生する

多様な人材が集まると、コミュニケーションが取りづらいといったデメリットがあります。例えば外国人の雇用が進む企業では、言語の壁を感じる方も多いでしょう。また、高齢者の中にはIT機器を苦手とする方がいたり、障がいによって意思の疎通が難しく感じたりすることも考えられます。


こうしたコミュニケーションに関する課題をクリアするためには、コミュニケーション手段の工夫や外国語に対応できる人材の配置などの対策が必要です。


多様性のある働き方が受け入れられにくい

働き方の多様性を受容するために、在宅勤務や休暇に関する制度を整える必要があります。しかし制度を活用しない従業員が不満を感じ、モチベーション低下につながる恐れもあるでしょう。こうした風潮が広まれば、制度を利用したくてもできないと感じる従業員が増えかねません。


これらの課題を解決するためには、仕事量の調整や評価の仕方などを改善し、不公平感を与えないことが大切です。


ダイバーシティ&インクルージョンの進め方

ダイバーシティ&インクルージョンを効果的に取り込むためには、次に挙げる5つの手順に従って段階を踏んで進めることが重要です。それぞれの手順について解説します。


手順1.行動計画を策定する

ダイバーシティ&インクルージョンは、企業経営における戦略の一つでもあります。そのため、経営者を含む上層部が多様性を受容し、スキルを発揮できる環境を整えることの重要性を理解しなければなりません。


また通常の経営計画と同様に、経営理念や行動指針を踏まえた計画を立て、目指す方向を定める必要があります。自社の職場環境を振り返り、多様な価値観を尊重できる組織を作る上で実行すべきことを検討し、行動計画を策定しましょう。


手順2.人事制度を整える

多様な人材がそれぞれのスキルや特性を発揮するためには、人事制度の整備が欠かせません。また、不満や不公平感を感じることなく、誰もが納得した上で改革を進めるためにも重要なポイントです。


人事制度の整備をするにあたって、従業員を適材適所に配置し役割を明確にしましょう。また、年齢や性別などの属性による評価を見直して、成果をベースにした評価や報酬体系を取り入れると、多くの従業員の理解を得ながら、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを実行できます。


手順3.勤務形態や職場環境を整える

全ての従業員が快適に働けるように、勤務形態や職場環境を整えましょう。例えば在宅勤務やフレックスタイムなどを導入すると、育児・介護をしながら働く方や、障がいにより遠方まで通うことができない方に寄り添えます。


また、多様な人材が価値観の壁を超えて、コミュニケーションを取れる環境の整備も重要です。環境整備を実施する際は従業員の意見も取り入れながら、必要に合わせて見直しや改善を行いましょう。


手順4.従業員の意識改革を行う

企業側の整備が整っても、従業員が多様性を受け入れられなければ、取り組みを進められません。そのため、従業員の意識改革を行うことも重要なポイントです。


意識改革の一つとして、実際に女性管理職を増やすことが挙げられます。その後、上司がきちんとフォローアップする姿勢を見せれば、従業員も企業の方針を察知し、考え方に変化をもたらすでしょう。


なお、マネジメント層の意識改革がなされなければ、従業員にも浸透しません。そのため、現場の指導者であるマネジメント層が、経営戦略としてのダイバーシティを理解することから始める必要があります。


手順5.積極的にコミュニケーションを取る

多様な人材が、個々のスキルを活かして働ける環境を作るためには、コミュニケーションの活性化が重要です。しかし、従来の職場環境において発言をする機会がなかった従業員にとって、自分の意見を述べるのは勇気がいります。


新しい環境に慣れて行くためにも、従業員同士が積極的にコミュニケーションを取れる仕組み作りが必要です。


また、多様な意見により成果が上がれば、関係する従業員だけでなく、社内にも周知するようにしましょう。ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みに関する情報共有を頻繁に行うことで、従業員のモチベーション向上につながります。


ダイバーシティ&インクルージョンを成功させるポイント

ダイバーシティ&インクルージョンを進めるための制度や職場環境が整っても、ポイントを押さえて取り組まなければ失敗に終わる可能性があります。特に取り組みを始めたばかりの段階では、従業員が受け入れられない可能性があるため、下記に挙げる5つのポイントを踏まえて実践することが大切です。


価値観をすり合わせる

ダイバーシティ&インクルージョンに関連する制度があっても、従業員同士の価値観にズレがあると取り組みの妨げになります。例えば「育児よりも仕事を優先するべきだ」という考え方が上司にあれば、その部署では育児休暇の取得や在宅勤務をしづらいでしょう。


こうした問題を避けるために、一定の行動パターンを求めるのではなく、行動の指針となる価値観をすり合わせることが大切です。その上で、従業員が自分自身で行動を選べるように取り組みを進めていきましょう。


意思決定の仕組みを作る

多様な人材が集まる企業では、相互理解を深めて意見を出せるコミュニケーションの場を作ることが大切です。こうした環境が整っていないと、少数派の意見が取り入れられにくくなり、結果的に従業員のモチベーション低下につながるでしょう。


具体的な手段として、さまざまな立場にある従業員が意見交換できる場の設置や、チャットツールを活用して従業員同士がやり取りしやすい仕組み作りなどが挙げられます。


組織内の混乱や衝突に対応する

取り組みを始めてしばらくは、従来の労働環境や考え方からのシフトがうまくいかず、変化を受け止められない従業員による混乱や衝突が起こる可能性があります。


また、改革の波に乗っているつもりでも、無意識的に少数派を排除するような行動をしてしまったことで、トラブルに発展するケースもあるでしょう。


こうした事態が発生した場合にすぐに対応できるよう、前もって対策を立てておくことが重要です。


人事評価の項目を設定する

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを成功させるには、公正な人事評価が求められます。従来の年功序列による制度や、集団管理される評価の方式では、多様化する人材のモチベーション向上は望めないでしょう。


各従業員の働き方や価値観を尊重した上で評価するためには、評価項目自体も多様性を持たせる必要があります。例えばダイバーシティに関する考え方や、行動を評価する項目を設けてもよいでしょう。


従業員のキャリアパスを明確にする

誰もが自分のスキルを発揮しながら活躍できる職場環境を作ることと併せて、キャリアパスを明確にする必要があります。また、従業員がスキルアップしやすい仕組みを作ることも重要なポイントです。


例えば、スムーズに資格取得をするための情報提供やサポートのほか、資格試験に合わせた学びのための休暇制度の整備、eラーニングの導入など、自発的に取り組みやすい環境を整えるとよいでしょう。


ダイバーシティ&インクルージョンに関連する法律・助成金

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが各企業で推進されることは、労働人口の減少が問題視される日本経済を支える上でも大切です。こうした背景もあり、政府では関連する法律の整備や助成金の提供を実施し、企業のサポートを行っています。


女性活躍推進法

女性の雇用において、妊娠や出産のタイミングで離職した後、再度働きたいと思っても正規雇用ができないというケースが見受けられます。

厚生労働省では、働く意思のある女性が活躍しやすい社会を実現することを目的とした「女性活躍推進法」を2016年4月より全面施行しました。女性活躍推進法により、101名を超える従業員を抱える一般事業主は、自社の女性活躍に関する状況把握や課題を分析し、行動計画の策定が義務となっています。

また、301名を超える従業員が働く事業主は、男女の賃金の差異を公表しなければなりません。

障害者雇用促進法

障がい者が安定して働けることを目的として施行された法律が「障害者雇用促進法」です。この法律により、障害者雇用率制度が設けられています。


2021年3月から見直された障がい者の法定雇用率は、民間企業で2.3%です。事業主は定められた比率以上の割合で、障がい者を雇う義務があります。なお、対象は従業員数が43.5人以上の企業です。


例えば、従業員が100名の事業所であれば、2名以上の障がい者を雇う計算となります。


高年齢者雇用安定法

就労意欲のある高齢者が、そのスキルや知識を存分に発揮しながら長く働けるように定められた法律が「高年齢者雇用安定法」です。2021年4月には法律の一部が改正され「改正高年齢者雇用安定法」として施行されました。


これにより、事業主は70歳までの就業確保が努力義務となっています。具体的な努力義務は以下の通りです。


・70歳までの定年引き上げ

・定年制の廃止

・70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

・70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 

・70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

 └事業主が自ら実施する社会貢献事業

 └事業主が委託、出資(資金提供)する団体が行う社会貢献事業


引用:厚生労働省「改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されました」


外国人の雇用

外国人を雇用する際は、以下の助成金を活用できます。


・中小企業緊急雇用安定助成金

・雇用調整助成金


中小企業緊急雇用安定助成金は、雇用保険の適用となる中小企業事業主を対象として、2008年12月に創設されました。教育訓練の費用をサポートしてもらえるため、外国人の雇用にも役立ちます。


雇用調整助成金も、同じように教育訓練にかかる費用のサポートが受けられる助成金です。雇用調整助成金は、雇用保険の適用事業主であることが要件の一つであり、大企業も対象となります。


まとめ

多様化する社会において、企業におけるダイバーシティ&インクルージョンの推進は非常に重要です。しかし、従来の労働環境や働き方と大きく異なる価値観を取り入れることは、企業にとっても従業員にとっても大きな改革となります。


ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むためには、自社に合わせた行動計画を策定した上で、段階的に進めることが大切です。


「タレントパレット」とはさまざまな人材データを一元管理・分析して、組織力を上げるためのマネジメントシステムです。従業員のスキル・能力の見える化ができるほか、人事業務に必要な評価フローをワンストップで実現します。


企業全体の課題把握や経営戦略にも役立つので、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を検討している方は、ぜひタレントパレットをご活用ください。


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