こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「グローバリゼーション」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。近年グローバリゼーションは、インターネット技術の発達に伴って拡大し続けています。
今回は、グローバリゼーションによってもたらされるメリット・デメリット、グローバリゼーションを進めるために解決しなくてはならない課題について解説します。グローバル人材を育てるための自社の研修・評価処遇制度を検討する際の参考にしてみてください。
グローバリゼーションとはどういう意味?
「グローバリゼーション」とは、政治・経済・文化などが国や地域の垣根を超えて拡大していくことです。英語では「globalization」と書かれ、「グローバル化」とも呼ばれています。
グローバリゼーションのビジネスにおける意味としては、経済が国境を越えることで、国際間での交流や連携が増加する現象を指しています。
輸送手段やネットワーク技術の発達、投資の自由化などにより、ヒト・モノ・カネ・サービスなどが国境を越え、地球規模で自由に移動できるようになりました。結果的に、国際的な経済交流が加速したため、多国籍企業やグローバル企業などが数多く生まれています。
近年は、販売・調達・生産なども地球規模で行われており、企業の競争環境が大きく変化しています。
グローバリゼーションの背景
近年、よく聞くようになったグローバリゼーションですが、その歴史は古く、16世紀ヨーロッパの大航海時代がはじまりとされています。当時、航海技術の発達により、ヒトとモノの超長距離移動が可能になったことで、国境を越えた貿易が盛んになりました。
さらに20世紀になると、鉄道や飛行機など移動手段が増え、短時間で長距離の移動が可能になったため、グローバリゼーションは一層加速していきました。
現代においては、インターネット技術の発達により、移動する必要すらなくなりつつあります。パソコンやスマホを使用すれば、その場ですぐに、世界中の人々と情報・意見の交換が可能です。ヒトとモノだけだった移動が、情報・サービスまでも自由に移動可能になり、新たなビジネスモデルが多く生みだされました。グローバリゼーションは、今もなお発展し続けています。
グローバリゼーションのメリットとは
グローバリゼーションが活発になると、企業は様々なメリットが得られます。主なメリットは以下のとおりです。
- 生産コストを削減できる
- 企業の事業範囲が広がる
- 新技術の発展につながる
ここでは、3つのメリットについて、それぞれ詳しく解説します。
生産コストを削減できる
人件費が安い国に生産拠点を移したり、物価の安い国から原材料を購入したりすることで、生産コストを削減可能です。生産コストの削減により、利益の向上が期待できるでしょう。
また、海外に生産拠点を置くと、国同士が深い関わりを持てるため、他国の人材と接する機会が生まれます。それにより、新しい技術やビジネスモデルを獲得できる機会が増えるでしょう。さらに、生産に関わる現地の人が日本製品への愛着を持つことで、販路が拡大する可能性も考えられます。
企業の事業範囲が広がる
グローバリゼーションを進めて、海外市場もターゲットに含められれば、大きなビジネスチャンスが創出可能です。
人口減少・高齢化により経済成長が停滞している日本市場と違い、海外市場は経済が活発な傾向にあります。市場規模の大きさから顧客数の大幅な増加も考えられるでしょう。国外を含めた大きなマーケットでビジネスを展開できることは大きなメリットです。国外でのビジネスは、まだ大きな可能性を秘めているといえます。
新技術の発展につながる
グローバリゼーションが進み、海外でビジネスを展開すると、他国の優秀な人材と関われる可能性が高まります。企業・従業員同士の交流によって新しい技術が獲得できる可能性が広がるでしょう。
現在の日本は、IT人材が不足しています。経済産業省が調査した2022年のデジタル競争力ランキングでは、日本は63カ国中29位と、2018年度の22位から低迷し続けている状況です。要因として考えられるのは、人材の少なさとデジタル技術スキルの低さです。
さらに、2022年に情報通信白書が各国の企業を対象に行った、デジタル化を進める上での障害を調査したアンケートにおいて、日本企業からは「人材不足」という回答が67.6%も上がりました。この結果は、同じくアンケートをとった米国・ドイツ・中国の3カ国と比較しても、最も多い回答になっています。
グローバリゼーションによって、日本国内では獲得が難しい優秀なIT人材・技術を、海外市場との交流によって獲得できる点も大きなメリットの一つです。
グローバリゼーションのデメリットとは
グローバリゼーションが活発になると、企業には次のようなデメリットが発生する可能性があります。
- 貧富の差が拡大する可能性がある
- 国内産業が衰退する可能性がある
- 価格競争が激しくなる可能性がある
3つのデメリットについて、それぞれ詳しく解説します。
貧富の差が拡大する可能性がある
グローバリゼーションの活発化に伴って発生する問題の一つは、雇う側の先進国と労働者側の発展国との間に経済的格差が生まれる可能性がある点です。
グローバリゼーションにより、世界中の企業が競い合うようになると、価格競争の激化につながる可能性が高いです。各企業は、価格競争に負けないよう、生産コストを削減するために、物価・人件費が安価で調達できる国に労働力や原材料を求めるようになります。
一部の企業やエリート層が、安い原価で製品を作って利益を上げていく一方で、発展途上国では、物価の低さから高い賃金は得られず、グローバル市場への参入が難しくなるでしょう。その結果、貧富の差が拡大する可能性があります。
国内産業が衰退する可能性がある
海外市場をメインにする企業が増えると、国内の産業が衰退してしまう可能性があるのもデメリットの一つです。
海外市場をメインにするために、生産・活動の拠点を海外に置くことで、日本国内の人材・技術の流出が懸念されます。また、国内から生産・活動の拠点がなくなり、雇用減少が起こると、仕事を求めた優秀人材の海外流出や、全体的な技術力低下が起こる恐れがあるでしょう。
価格競争が激しくなる可能性がある
グローバリゼーションにより、海外企業が国内に進出してくると、海外製の安価な商品が流入し、企業の価格競争に拍車がかかってしまう可能性があります。
消費者の目線で考えれば、安く手に入れられる点は大きなメリットです。しかし、企業目線で考えた場合は、商品の価格を下げれば利益の確保が難しくなり、企業の体力を奪ってしまう可能性があるでしょう。
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グローバリゼーションと他の言葉の違いとは?
「グローバリゼーション」に似た言葉として挙げられるのが、「国際化」「インターナショナリゼーション」「ローカライゼーション」などです。
語感が似ているため、同義語とみなされることがありますが、それぞれ別の意味を持っています。
グローバリゼーションと国際化の違いとは
グローバリゼーションと国際化は、同じ意味だと捉えられがちですが、国同士の関係性が大きく異なります。
グローバリゼーションは、「国」という枠組みを超えて、ヒト・カネ・モノ・サービスなどが地球規模で拡大していく現象を指す言葉です。一方で国際化は、自国と他国の間でのつながり・交流などの関係性を表した言葉です。グローバリゼーションが地球を一つのモノと考えることに対し、国際化は地球を数多くの国の集合体であると考えています。
グローバリゼーションとインターナショナリゼーションの違いとは
「インターナショナリゼーション(internationalization)」とは、製品・サービスなどを特定の地域や言語に依存しないよう適応性を向上させることを指します。マニュアルを例に解説すると、言語で説明するのではなく、図や・イラストなど特定の地域に依存した言語以外で説明することが、インターナショナリゼーションです。
グローバリゼーションの発達により、多くの国へ製品展開が可能になりました。しかし、製品を展開するためには、展開国の言語・文化・習慣などに適用させる必要があります。
全ての項目をそれぞれの国向けに適用させるとなると、膨大な時間や手間がかかってしまうため、インターナショナリゼーションが必要になります。
つまり、インターナショナリゼーションは、グローバリゼーションに対応するための手段の一つです。
グローバリゼーションとローカライゼーションの違いとは
ローカライゼーション(localization)は、製品やサービスなどを特定の地域・言語・習慣・法規制などに適用させることを指しています。日本語では「地域最適化」といいます。
マニュアルを例に解説すると、展開国の言語で説明することがローカライゼーションです。
ローカライゼーションもグローバリゼーションに対応するための一つの手段です。グローバリゼーションを進めるためには、インターナショナリゼーションやローカライゼーションなどの手段を用いて、展開先の地域に適用させる工程が必要になります。
日本企業が解決すべきグローバリゼーションの課題とは?
日本企業がグローバリゼーションを進めるためには、いくつかの課題があります。
企業のグローバル化やグローバル人材育成を進めるには、日本企業における課題の把握が大切です。ここでは、それぞれ詳しく解説します。
多言語への対応
日本語は基本的に日本国内でしか通用しません。そのため、製品やマニュアル、Webサイトなどを展開国に適用させる、ローカライゼーションやインターナショナリゼーションが必要です。
展開国への適用は言語だけではなく、各国の文化や習慣・法規制など、多くの項目に対応しなければなりません。例えば、日本では長さの単位にmm(ミリメートル)を使いますが、海外ではinch(インチ)やfeet(フィート)が使われることもあります。
また、日本では正解の意味で使う「〇」が、海外では「NG」という意味で受けとられることがあります。そういった海外の文化や習慣へも適用させなければなりません。
グローバル人材の確保
日本では、グローバリゼーションを進めるためのグローバル人材の不足も、大きな課題の一つです。主にグローバル人材に必要とされる要素は以下の3つです。
- 語学力・コミュニケーション能力
- 異文化を理解する精神
- 主体性・積極性
グローバル人材を社内に増やす方法としては、グローバル人材を外部から迎え入れることと、社内の教育を充実させることが挙げられます。
すでに高度なスキルや豊富な経験を持っている人材を迎え入れれば、即戦力として貢献してもらえるでしょう。転職活動をしている求職者や他社でも活躍している人材を招けば、教育コストの削減につながります。
しかし、即戦力となる人材の確保するためには、人材紹介会社を介する場合も多く、その分コストがかかってしまう可能性が考えられます。
社内の人材に教育を行う場合のメリットとして挙げられるのは、自社に合った人材の創出ができることです。また、採用コストが削減でき、グローバル人材を教育するプロセスを習得できるため、長期的にメリットを得られるといえます。
一方で、研修を行う時間がかかる点や、教育に関する従業員のタスクが増えすぎる恐れがある点などはデメリットといえるでしょう。
リスクマネジメントに対する備え
日本企業がグローバル展開するためには、海外の政治経済や社会情勢の変化への柔軟な対応力が求められます。しかし、為替の影響や相手国の経済状況の変化は、企業ではコントロールできません。
よって、あらゆる状態に対応できるような事前のリスクマネジメントが重要です。また、インターネットの普及で情報の交流が活発になり、インターネット上の情報漏洩による被害も甚大になってきました。情報の流出が与える企業への影響はさらに大きくなっています。
社会の変化に伴うリスクに関しては、専門の対策チームの設置や専門家からアドバイスを受けるなどの備えが必要になるでしょう。
ダイバーシティに対する取り組みの強化
展開国の文化・宗教・価値観などへの理解も大切です。
近年はダイバーシティ(多様性)の尊重が強く求められるようになってきました。ダイバーシティを理解しないままグローバリゼーションを進めると、思わぬトラブルに発展してしまう恐れがあります。
また、トラブルの対応を間違えた場合、不買運動などの大きな問題へ発展してしまう可能性もあるでしょう。
日本での常識は、海外では通用しないケースも数多く存在します。そのため、異国の文化・宗教への理解を深め、尊重することが必要です。
グローバリゼーションを進める日本企業の具体例とは?
すでにグローバリゼーションを進めている企業の具体例を2つ紹介します。
2021年に行われた「グローバル化に成功していると思う日本企業」についてのイメージ調査結果では、1位にトヨタ自動車、2位にはユニクロがランクインしました。
トヨタ自動車は、米国フォーブスが発表した2022年版の「Global 2000」の上位20社に、日本企業として唯一ランクインした、日本を代表する大企業です。
トヨタ自動車では、2001年に、企業理念を実践するための価値観・手法などを規定した「トヨタウェイ」を全世界のトヨタ従業員に共有しました。これにより、海外のみでもトヨタの車を作れるようになり「Made by Toyota」の車をグローバル展開することに成功しました。なお、トヨタウェイは時代に合わせて内容も変化しており、現在は「トヨタウェイ2020」と名付けられています。
また、ユニクロが立てている戦略は、エリアに合わせてマーケティングを変化させることです。現地のマーケティングを強化し、海外の文化・価値観に合わせたローカライゼーションの徹底を推進しています。ムスリム向けのヒジャブや、現地のデザイナーとコラボし、インドの女性の伝統服であるクルタ・コレクションを展開するなど、エリアに合わせた戦略をとりながら顧客の支持を得て、売上の向上につなげました。
まとめ
グローバリゼーションとは、世界経済が国境を越え地球規模で一体化し、国際的な交流や連携が増加する現象を表します。インターネット技術の発達により、グローバリゼーションは現在も進行している状況です。
グローバリゼーションを推進するメリットには、生産コストの削減や海外の大きなマーケットでのビジネス展開、新技術の発展などがあります。
その一方で、貧富の差の拡大や国内産業の衰退、価格競争が激しくなるなどの側面もあります。
グローバリゼーションを進める上では、展開国の言語への適用やリスクマネジメントに対する備え、ダイバーシティに対する取り組みの強化、グローバル人材の確保などが重要です。今後も各企業は、グローバリゼーションを進めるための取り組みをさらに強化させる必要があるでしょう。
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