人材育成計画の立て方は?計画書の必要性や作成・活用の方法を解説【テンプレート付】


人材育成計画の立て方は?計画書の必要性や作成・活用の方法を解説【テンプレート付】

グローバル化やデジタル化など様々な社会の変化に伴い、高度なスキルを持つ人材は常に不足しています。企業にとって理想的な人材を確保するための人材育成計画は、必要不可欠と言えるでしょう。しかし、正しい手順を踏み、ポイントを押さえないと、人材育成は結果が出ないまま時間や費用を浪費することになりかねません。
この記事では、企業の人材育成計画の基本となる作り方やポイントを紹介します。

人材育成計画とは

 企業には、ポテンシャルや経験値が異なる多様なバックグラウンドの人々が集まってきます。そうした人々を、企業の業績や利益の向上に貢献できる理想の人物像に成長させるためのプランが、人材育成計画です。
人材育成計画の中では、「企業の現状と理想の姿」の2地点が明確にされた上で、理想に近づくために必要な人材を育成する施策が、ロードマップとして項目立てられている必要があります。

関連記事:人材育成とは?人材育成の方法やポイント、成功事例を詳しく紹介

人材育成計画の重要性・必要な理由

人材育成計画の重要性と必要性は、企業の持続的な成長と発展において欠かせない要素です。企業のビジョンと個人の成長を具体的なスキームで紐づけることで、人材それぞれの特性を活かしながら、企業の目標達成に向けた効率的な育成が実現できます。また、計画に基づき育成の取り組みをPDCAサイクルに組み込むことで、定期的な効果検証と改善が可能です。さらに、階層別・職種別の育成要件とキャリアパスが明確になるため、組織力の強化と社員の主体的な学習意欲向上につながります。

人材育成計画の立て方

 人材育成は、正しい手順を踏んでポイントを押さえつつ計画しなければなりません。
ここでは7つのステップに分けた人材育成計画の基本的な立て方と、知っておくべきポイントを説明します。
 

人材育成計画の基本的な手順7ステップ

人材育成計画の基本的な立て方は、以下の通りです。
 

1.経営理念の確認と課題抽出

自社の理念やビジョン、経営戦略、事業計画を再確認します。このとき重要なのは、経営戦略や事業計画は、現在だけでなく、1年~5年くらいのスパンも考えておくことです。

2.理想とする人物像を設定する

会社が理想とする近い未来の状態と、そこに近づくために現在の社員にどのような人材に成長してほしいか、理想とする人物像を明確にします。
 

3.社員の現状を把握する

現在いる社員の「強み・弱み」あるいは「できること・できないこと」を把握します。この中には、実務的な能力はもちろんのこと、積極性や主体性、協調性など、意識やメンタルの面も含まれます。
 

4.具体的な目標を設定する

「いつまでに、どのような人材になってほしいか」を可視化します。この目標設定は、定性的でぼんやりしたものではなく、「入社3年目で後輩の指導に当たる」「入社5年目には予算3000万円レベルのプロジェクトのリーダーを務める」など、期限を切った定量的なもののほうが伝わりやすく、社員のモチベーションアップにも貢献します。
このときに、現状と比較してあまりにも目標達成までに時間がかかりそうであれば、目標が現実離れしている可能性がありますので、再考する必要があります。
 

5.必要とされるスキルを整理する

現状と目標が確認できたら、その間を埋めるために、どのようなスキルが必要かを洗い出し、整理します。
このとき重要なことは、
 
・スキルの内容に漏れやダブりがないように整理する 
・必要なスキルに優先順位をつける 
・スキル習得までの期限を決める
 
という3点です。
さらに、人事や教育の担当者だけではなく、関連する部門の責任者などを含めて複数人でこの洗い出し・整理の作業に取り組むと、より精度が上がるでしょう。
 

6.能力やスキルを習得する手段・方法を検討する

社員教育の手段には、OJT(On-the-Job Training=職場での実践教育)やOFF-JT(Off-the-Job Training=集合研修、eラーニング、社外セミナーなど、通常業務を離れて行う教育)があります。また、働き方改革、コロナ禍などの影響もあり、オンラインを利用する研修の比重は高まり、内容も急速に充実してきています。
多様化する教育手段の中で、社員のキャリアレベルや、求めたいスキルによって最適な方法を選択することが重要です。
 

7.経営陣や現場による最終チェック

ある程度、人材育成計画の形がまとまったら、経営陣や人材育成計画を実際に活用する現場の責任者に内容チェックを受けることをおすすめします。
人材育成計画に現実味があり、無理のないものであるか、また、会社の方針や理念からズレがないかを確認する機会となります。ここで出された意見をもとに、人材育成計画の最終ブラッシュアップを行います。

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人材育成計画を立てる上でのポイント

人材育成計画を成功させるために、常に以下の点を意識しておきましょう。
 

1.企業の経営戦略が先に立つ

人材育成計画は、企業が理想とする姿になることを助けるために行うものです。育成計画が先走り、企業の経営戦略と乖離しては本末転倒です。
この主従関係を常に意識しながら、人材育成計画を立てることが重要です。
 

2.計画には柔軟性を持たせる

人材育成はあくまでも人間を対象にした計画なので、思う通りに進まないこともあります。見直しの可能性をあらかじめ想定し、実態に沿って細かく軌道修正できるような形にしておくと、「ゼロベースからやり直し」というような最悪の事態を避けることができます。
 

3.企業全体を巻き込む

人材育成計画を実際に運用するのは現場の各部署です。人事や教育などに関わる部署だけで作った人材育成計画では現実味に欠け、絵に描いた餅になる恐れもあります。
人材育成計画を立てるメリットを企業全体で共有し、「みんなでより良くしよう」というムードを高めることはとても重要です。
 

人材育成計画書とは

人材育成計画書とは、企業の人材育成計画を文書化し、その進捗を管理するためのツールです。通常業務と並行して行われる人材育成を効果的に進めるため、目標、育成方法、進捗状況などを明確に記載します。これにより、上司と部下の双方が育成の方向性を共有し、計画的な人材育成の実現が可能です。

人材育成計画書を作成するメリット

人材育成計画書を作成することによるメリットは、主に以下の5点です。 

従業員のモチベーション向上につながる

人材育成計画書によって、社員は自身の成長目標と道筋を具体的に把握することが可能です。目指すべき人材像や習得すべきスキルが明確になることで、社員は目的意識を持って日々の業務や学習に取り組むことができ、モチベーションの向上につながります。また、上司と目標を共有することで、より効果的な育成環境が整います。
 

目標達成に必要なスキルが明確になる

人材育成計画書があることで、目標達成に必要なスキルが明確になり、その認識を社内で共有することが容易になります。このことで、指導者によって指導内容にばらつきが発生することを防ぎ、ムリ・ムダ・ムラのない人材育成を進めることができます。
 

業務効率を高める

企業の人員は限りがあります。人材育成計画書を基に各人がスキルアップをすることで、一人当たりの仕事の質や量が向上し、限りある人材の中で、最大限に業務効率や生産性を高めることにつながります。

組織へのロイヤリティが高まる

企業による人材育成の取り組みが明文化されて社員に伝わることで、社員の企業に対するロイヤリティ(愛社精神、帰属意識)向上につながります。ロイヤリティの向上は、離職率の低下や、社員の仕事に対するモチベーションアップなど、多方面に好影響を与えます。

PDCAサイクルを実践できる

人材育成計画書は、PDCAサイクルを効果的に実践するためのツールとして機能します。計画(Plan)を文書化し、実行(Do)の指針とするだけでなく、進捗確認(Check)や改善(Action)の記録も可能です。定期的な進捗確認により、課題を早期に発見し、必要な改善策を講じることができ、継続的な育成の質の向上を実現できます。

人材育成計画を実施する際のポイント

人材育成計画を効果的に実施するためのポイントは、主に以下の4点です。

人材育成ビジョンの策定

人材育成ビジョンは、企業の経営戦略や理念と密接に連動させる必要があります。組織が目指す方向性と必要な人材像を明確にし、現状と理想とのギャップを分析した上で、具体的な育成目標を設定します。また、Future Skillも視野に入れ、変化する時代に対応できる人材の育成を見据えたものとすることが重要です。

研修モデルの多様化

効果的な人材育成のためには、OJT、Off-JT、自己啓発など、様々な学習形態を組み合わせることが重要です。eラーニングや集合研修、ブレンディング研修など、社員の特性や習熟度に応じて最適な学習方法を選択できる環境を整備します。これにより、一人ひとりの学習スタイルや業務状況に合わせた柔軟な育成が可能となります。

人事と教育の連携体制の構築

人材育成を成功させるためには、人事部門と教育部門の緊密な連携が不可欠です。評価制度の構築や育成計画の進捗管理、キャリア面談の実施など、両部門が協力して包括的な育成支援体制を整えます。また、定期的な効果測定と改善のサイクルを確立し、PDCAを確実に回していくことが重要です。

従業員中心の育成ステップ

社員の成長をサポートするためには、社員1人ひとりのニーズや希望するキャリアパスを考慮した段階的な育成ステップを設定することが重要です。アンケートやヒアリングを通じて社員の声を積極的に取り入れ、実現可能な目標を段階的に設定します。これにより、社員のモチベーションを維持しながら、着実なスキルアップを図ることができます。

人材育成計画を立てる担当者・管理職に求められるスキル・要素

効果的な人材育成計画を立案・実行するためには、担当者・管理職に複数のスキルと要素が求められます。以下は、4つの主なスキル・要素です。

現状把握スキル

現状把握スキルとは、組織や人材の現況を正確に理解し分析する能力です。具体的には、社員の能力やスキルレベルの評価、組織の課題の特定、必要な人材要件の分析などが含まれます。360度フィードバックや職務内容とスキルレベルのマッチングなどの手法を用いて、客観的な現状把握を行うことが重要です。

コミュニケーションスキル

人材育成計画の成功には、優れたコミュニケーションスキルが不可欠です。育成対象者の希望や課題を適切に把握し、計画の目的や意図を明確に伝え、必要なフィードバックを行うためには、双方向のコミュニケーションが重要です。また、部門間の連携や管理職との調整においても、このスキルは重要な役割を果たします。

計画策定スキル

計画策定スキルは、把握した現状と目標とのギャップを埋めるための具体的なロードマップを作成する能力です。達成可能な目標設定、効果的な教育プログラムの選択、適切なスケジュール管理など、実践的な計画立案が求められます。また、状況の変化に応じて柔軟に計画を修正できる能力も重要です。

経営戦略に対する理解

人材育成計画は、組織の経営戦略と密接に連動している必要があります。そのため、担当者は企業のビジョンや経営目標を深く理解し、それらを実現するために必要な人材像を明確に描けなければなりません。また、Future Skillなど、将来必要となる能力も視野に入れた戦略的な思考が求められます。

人材育成計画書に役立つ資料・活用ツール・テンプレート例

人材育成計画書の作成に効果的な、厚生労働省が提供する各種ツールについて解説します。

厚生労働省「職業能力評価基準」

職業能力評価基準は、業務遂行に必要な知識、技術・技能、職務遂行能力を業種別・職種別に体系化したものです。事務系9職種に加え、製造業やサービス業など56業種(2024年10月現在)について整備されています。レベル1から4までの段階別に必要なスキルや能力が定義されており、企業の実情に合わせてカスタマイズして活用することができます。

※参考:職業能力評価基準|厚生労働省

厚生労働省「キャリアマップ」

キャリアマップは、職業能力評価基準のレベル1~4をもとに、能力開発の標準的な道筋を示したツールです。キャリアの進路、各レベルの習熟に必要な標準年数、レベルアップに必要な経験や実績、関連する資格などが一目で把握できます。事務系職種と16業種(2024年10月現在)で整備されており、社員のキャリア形成の指針として活用できます。

※参考:キャリアマップについて|厚生労働省

厚生労働省「職業能力評価シート」

職業能力評価シートは、職業能力評価基準の「職務遂行のための基準」を簡略化したチェック形式の評価ツールです。「評価シート(本体)」と詳細な基準を示した「サブツール」で構成されており、社員の現在の能力レベルや、次のレベルに上がるために必要な要件を具体的に把握することができます。上司と部下の面談ツールとしても活用でき、効果的な人材育成の実現を支援します。

※参考:職業能力評価シートについて|厚生労働省

まとめ

人材育成計画の作成と運用には、経営戦略との連動や現状把握、目標設定、そして適切な育成手法の選択など、多くの要素を考慮する必要があります。こうした人材育成の取り組みをより効率的に進めるために、システムの活用を検討してみてはいかがでしょうか。タレントパレットは、多くの大手企業への導入実績を持つHRテックツールとして、豊富なコンサルティング知見を基に、企業の人材育成を強力にサポートします。人材育成計画についてのお悩みは、以下からお問い合わせください。

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