こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「能力不足を理由に、降格人事ができるかわからない」「自社が不利益を被る可能性があるから、降格人事は慎重に行いたい」「注意点を知っておきたい」という方も多いでしょう。
能力不足による降格人事を行う際は、社員の役職を引き下げるだけでなく、給料を減らすこともあります。給料が減るとモチベーションが下がりやすく、退職されてしまうことがあります。
本記事では、社員の能力不足による降格人事について解説します。降格人事の種類や注意点もわかる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
降格人事は2種類ある
降格人事は、以下の2つに分類されます。
- 人事権行使としての降格
- 懲戒処分としての降格
降格人事の種類ごとに特徴を確認し、どちらに該当するか判断できるようになりましょう。
人事権行使としての降格
能力不足により、社員に現在与えている役職が適切でない場合は、人事権行使としての降格を行うことがあります。例えば、以下のような理由があります。
- 部下の指導を適切にしなかったため売上が低下し続けている
- 部下をサポートできなかったのが原因で退職者が増加した
人事権行使としての降格は、企業は原則として自由に行えます。なぜなら、企業は誰にどの役割を与えるかを自由に決められるからです。
懲戒処分としての降格
能力不足であるだけでなく、職務上の義務違反も見られるなら、懲戒処分での降格が妥当と考えられます。例えば、以下の行為が職務上の義務違反にあたります。
種別 | 内容 |
業務命令違反 | ・業務上の指示・命令の不履行 |
情報漏えい | ・機密情報の不適切な開示 |
人権侵害 | ・いじめ ・差別 ・セクシャルハラスメント |
不正行為 | ・偽装請求 ・横領 |
懲戒処分で降格する際は、業務違反の証拠がないと無効になってしまいます。能力不足であるという理由だけでは、懲戒処分は重すぎるでしょう。社員の性格や人間性に問題があっても、業務違反に該当しなければ、懲戒処分はできません。
能力不足による降格人事に伴う減給と職位引下げ
ここでは、能力不足による降格人事で、減給や職位引下げが適切なのか判断する方法を解説します。減給と職位引下げの両方を実行するケースもあれば、片方のみ行うケースもあります。
社員のモチベーションを下げる原因になるので、対象者が受ける処分内容が適切かどうかを慎重に判断する必要があります。給料の減額と職位の引き下げを行うときの注意点をまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
減給
降格人事に伴い、該当社員の給料を減らすケースがあります。給料は、社員にとって重要な労働条件なので、同意がないと下げられません。給料を下げる場合は、減給自体が適切なのかを該当社員から確認されるでしょう。
降職は有効でも給料の減額は無効になるケースもあるので、企業は慎重に判断する必要があります。減給の理由が明確でなければ、該当社員との対立は避けられないでしょう。
職位・職務の引下げ
降格人事に伴い、役職を引き下げることもあります。部署の整理や一新により、能力不足と判断された社員の役職が解かれるケースです。ただし、該当社員の能力が著しく不足している訳でないなら、職位あるいは職務の引下げのみで、減給しないケースもあります。
職位・職務の引下げだけでなく、減給もすると、モチベーションが著しく下がるリスクがあります。会社への不信感が募る原因にもなるので、職位・職務の引下げに伴う減給は、避けるのが無難です。ただし社員自身に問題があり、役職を解く際は減給を検討しても良いでしょう。
社員が降格先での就労を拒否するのは業務命令違反
降格処分を理由に、社員が就労を拒否することがあります。社員が就労を断った場合は、業務命令違反として処理可能です。必要に応じて、解雇を含む懲戒処分が妥当かどうかも検討しましょう。解雇には、普通解雇や懲戒解雇といった種類があります。
一般的に業務命令違反が原因の場合は、普通解雇に該当します。普通解雇の原因として、能力不足や協調性の欠如なども挙げられます。そのため、能力不足による降格処分が原因で社員が就労を拒否した場合は、懲戒解雇ではなく普通解雇とするのが妥当です。
ただし、本当に解雇する必要があるかどうかは、慎重に判断する必要があります。また、裁判などにより降格が無効になった場合、社員は処分を受ける前の役割を担っている状態になります。企業が不当に降格したことになり、不利益を被るリスクがあるので要注意です。
降格が無効になった場合は、処分する前と同じ金額の給料を社員に支払いましょう。企業側に非があるので、該当社員に対して謝罪したりフォローしたりすることが重要です。
能力不足による降格人事の実施手順5ステップ
ここでは、降格人事を実行する手順を5ステップで解説します。
- 事実を把握する
- 本人に弁明の機会を与える
- 降格方法を考える
- 降格人事の内容を考える
- 社員に伝える
違法になるような事態だけでなく、社員とのトラブルも未然に防ぎたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
事実関係を把握する
降格人事を行うときは、最初に事実を確認しましょう。事実確認をしないと、誤った判断を下してしまうリスクがあります。特に懲戒処分で降格を行う場合は、十分に証拠を集める必要があります。人事権行使の降格でも、該当社員やその上司に話を聞き、事実を確認しましょう。
また、ヒアリングから得た情報を主観的に判断してはいけません。本当に正しいのか十分に確認を重ね、該当社員に納得されるような証拠をつかみましょう。
本人に弁明の機会を与える
対象者に、弁明の機会を与えましょう。弁明のチャンスを与えないと、懲戒処分の降格が無効になります。一方で、人事権の行使によって社員を降格させる場合は、弁明のチャンスを与えなかったために無効になるケースは少ないです。
しかし、企業は教育や指導を行って改善を促し、一定期間にわたって社員の様子を見るようにしてください。時間が経っても社員の言動が変わらない場合は、降格が妥当である可能性が高まります。
降格方法を考える
降格人事を実行することを決定したら、人事権行使と懲戒処分のどちらに該当するか検討します。能力不足だけでなく、悪質な業務命令違反や人権侵害も原因の場合は、懲戒処分が妥当と考えられます。能力不足で成績が悪化したことが原因なら、懲戒処分は重すぎるでしょう。悪質な行為に及んでいないケースなどは、人事権の行使によって降格させるのが適切です。
降格方法を決定したら、処分の根拠を該当社員に伝えられる状態にしてください。妥当な根拠がないと、社員に受け入れられなかったり訴えられたりするケースがあります。降格が無効にならないためにも、慎重に決めましょう。
降格人事の内容を考える
降格させるだけでなく、減給が妥当かどうかどうかも検討します。給料を下げる場合は、役職手当のみなのか、基本給も含まれるのかなども決める必要があります。妥当な根拠があれば、減給理由の開示を求められた際に対応できます。揉めごとにならないためにも、事実に基づいて適切に判断することが重要です。
社員に伝える
降格人事の内容が決まったら、対象の社員に伝えましょう。面談や文面での通知など、本人の性格によって伝え方を選んでください。能力不足が原因で行う降格人事は、本人に精神的なダメージを与えるリスクがあります。
降格人事により、社員が退職を希望することも留意する必要があります。本人を責めて必要以上に精神的なダメージを与えることがないように、十分に注意しましょう。降格が原因の退職について詳しく知りたい方は、別記事「降格人事退職」をあわせてご確認ください。
【ケース別】違法・無効となる能力不足による降格人事
人事権の行使か懲戒処分かにより、降格を行う際のルールが違います。違いを把握しておかないと違法となり、降格人事が無効になります。降格が違法と判断されるケースを説明するので、ぜひ読み進めてください。
人事権行使として降格人事を行う場合
人事権の行使による降格人事は、基本的に企業の自由な判断で行えます。しかし、以下のようなケースは違法です。
- 退職に追い込むための降格
- 社員に権利がある行為を理由とする降格(有給や出産・育児休暇など)
- 階層を2段階以上下げる極端な降格
- 差別による降格
明らかに社員に不当な根拠で降格人事を行うと、企業側が不利になってしまいます。社員の人生にも関わることなので、降格が必要か慎重に考えましょう。
懲戒処分として降格人事を行う場合
懲戒処分として降格する際は、以下の規則をすべて守らなければなりません。
降格人事を行う前の規則 | ・規律違反の証拠を用意する ・就業規則に降格処分について明記する ・社員に説明の機会を与える |
降格人事を行うときの規則 | ・規律違反の内容にふさわしい処分である ・処分するのは一回のみにする |
懲戒処分としての降格には、厳格なルールがあります。適切に対応しないと違法とみなされるので、慎重に判断しないといけません。違法となる降格人事について詳しく知りたい方は、別記事「降格人事違法」をあわせてご確認ください。
能力不足による降格人事を行う前の4つの注意点
社員の能力不足が降格人事の原因の場合、処分する前に以下の注意点を確認しておきましょう。
- 降格人事を理解する
- 降格人事の根拠を明確にする
- 降職前に注意指導に行う
- 社員の意欲低下に気をつける
社員とのトラブルを避けるためにも、ここでしっかり確認しておきましょう。
降格人事の理解を深める
違法と見なされないためにも、降格人事に関する理解を深める必要があります。人事権行使と懲戒処分の2つの降格理由があるので、違いを理解しておきましょう。両者は、違法となる判断基準が異なります。後々、揉めごとにならないために、どちらがふさわしいか判断できるようになりましょう。
能力不足が原因の場合は、人事権の行使となるケースがほとんどです。能力不足以外に犯罪を犯したなど、妥当な理由が確認できない限りは、懲戒処分を適用できません。
また降格に伴う減給も、合理的な理由がないと違法になります。降格が妥当な場合でも、給料を減らすのが合理的なのかどうかは厳しく考えられます。実際に減給が合理的でないとされ、降格が人事権の乱用と判定された事例があります。
降格人事の根拠を明確にする
社会的に受け入れられるような証拠を集めておくことが大切です。懲戒処分になり得る言動が見られた場合でも、証拠がないと認められません。降格人事を検討するときは、職業規則を確認して懲戒処分に該当する行為に至っていないか十分に確認しましょう。法律にも関わることなので、弁護士に相談するのがおすすめです。
弊社が提供している「タレントパレット」では、日頃社員が書く日報のテキストベースで分析することが可能です。テキストの分析機能によって、社員の声が可視化でき、一人ひとりのコンディションの変化を把握できます。変化にもとづき、適切なアプローチをすれば社員の状況の改善も見込めるでしょう。降格人事の実施自体を防げる可能性がありますので、ぜひ導入をご検討ください。
降格前に注意指導を行う
すぐに処分を実行せずに、該当社員を注意・指導しましょう。注意をすれば、状況が改善することがあります。急に罰を下すと揉めごとになりかねないため、降格人事を行う前に該当社員に対して指導や注意をしましょう。
適切な指導や注意を行ったという証拠があると、降格の正当性が承認されやすくなるメリットもあります。自社を守るために重要なことなので、怠らないようにしてください。
社員の意欲低下に注意する
能力不足が原因で行う降格人事は、対象の社員だけなく同僚や部下などにも影響を及ぼします。明らかに企業側に問題があると、会社への信頼が薄れてしまい、社員のモチベーションが下がってしまうので要注意です。
降格させられる社員は、精神的なダメージを受ける可能性があるため、企業はしばし見守り、フォローしましょう。周りの社員にも気を配り、様子を伺いましょう。降格人事が行われた後は、社内が気まずい空気になることもあります。新しいプロジェクトの担当になってもらうなどして、社員の意欲を保つことが重要です。
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降格人事能力不足のまとめ
能力不足が原因で行う降格人事は、慎重に行う必要があります。対象者に精神的なダメージを与えかねないため、本人に納得してもらえるような形で実行しましょう。モチベーションにも影響を与えるため、不当な理由で降格させると、企業への信頼を失ってしまうこともあります。揉めごとにならないために、妥当な理由や対応策を用意しましょう。
降格人事を検討するほどの能力不足が目立つケースは、適切な人材配置ができていないことが原因であることも考えられます。能力に見合った人材配置をするには、管理システムの導入がおすすめです。弊社が提供している「タレントパレット」は、社員一人ひとりのデータを一括で管理できます。
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