みなし残業とは。導入のメリットからデメリット、注意点まで解説


みなし残業とは。導入のメリットからデメリット、注意点まで解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

実際の残業時間にかかわらず、毎月残業代を固定で支払う制度をみなし残業と呼びます。実際に残業を行っていなくても固定の給料を支払うことになるため、 従業員に対しては メリットが大きいケースも あるといえるでしょう。

では、 企業側にもメリットはあるのでしょうか。

本記事では、みなし残業の概要やメリット・デメリット、リスクについて詳しくみていきましょう。

みなし残業とは



みなし残業とは、実際の残業時間にかかわらず毎月固定の残業代を支払う制度です。固定残業代制とも呼ばれます。また、みなし残業にはあらかじめ、割増賃金を含んで計算しておかなければなりません。ここでは、みなし残業の仕組みや違法性の有無などについて解説します。

みなし残業の仕組み

みなし残業代(固定残業代)には、「基本給に固定残業代を組み込んで支給する形」と「基本給+固定残業代」として表示する形の2つのタイプがあります。

とくに、基本給に固定残業代を組み込んで支給する場合、基本給そのものが高額に見えて誤解やトラブルの元になることがあるため注意が必要です。トラブル防止のためにも、「基本給に残業代が含まれていること」をあらかじめ従業員に説明しなければなりません。

「基本給+固定残業代」として表示すると、従業員の誤解を招くことが減るでしょう。

みなし残業代の計算方法は次の通りです。

みなし残業代=(給与総額÷月平均所定労働時間)×固定残業時間×1.25(割増率)

固定残業時間を何時間とするのかについては、従業員の同意を得る必要があります。また、雇用契約書や就業規則などへの記載も行わなければなりません。

みなし残業代は、必要に応じて割増賃金を含んで計算します。また、固定残業時間は時間外労働の上限(原則月45時間、年360時間)を超えてはならない点も把握しておきましょう。

みなし労働時間との違い

「みなし残業」と「みなし労働時間」が混同されることは少なくありません。

みなし残業時間は会社独自の制度です。ある程度自由に設定することができ、従業員に対してモチベーションアップなどの交換をもたらす ケースもあります。

一方、みなし労働時間は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた労働時間働いたとみなし給与を支払う制度です。みなし労働時間を利用できる職種や業種は限定されています。

「みなし労働時間制」については、こちらの記事をご確認ください。

違法性はない

みなし残業は、結論からいえば違法ではありません。しかし、トラブルになりやすい制度です。そのため、導入時にしっかりと従業員に対して周知徹底する必要があります。

また、みなし残業代を支払うとしても従業員を何時間でも働かせて良いわけではありません。例えば、みなし残業時間を「30時間」と規定した場合、従業員が30時間を超えて働い場合は超過分は別途支払費が必要です。

みなし労働時間制の残業について

「みなし残業」と混同されやすい「みなし労働時間制」は全部で3種類存在します。

「みなし労働時間制」を採用した場合、原則として所定時間働いたものとみなされるため、想定された時間より長く働いたとしても、残業代が支払われることはありません。

ただし、通常所定労働時間を超える業務内容を与えられた場合はその限りではありません。例えば、所定労働時間が8時間であるのに対し、10時間分の業務内容に相当する仕事を与えた場合は、超過した2時間分の残業代を支払う義務が生じます。また、休日や深夜労働に対しても、所定の割増賃金を支払わなければなりません。

なお、みなし労働時間制には次の3種類があります。

事業場外労働

事業場外みなし労働時間制とは、基本的に会社に立ち寄らない外回りの営業担当者、出張の多い方、旅行の添乗員など、監督者による勤務時間管理が難しい業務に対して適用されます。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制とは、専門性の高い業務に対して適用される制度です。弁護士・建築士・税理士・ゲーム用ソフトウェアの創作業務などあらかじめ定められている19業務にのみ適用することができます。

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制とは、専門性の高い職種に対して適用される制度です。具体的には、事業の運営に関する企画、立案、調査及び分析の業務が該当します。また、業務の性質上、遂行するために大幅に従業員の裁量にゆだねる必要がある時に限定される点を把握しておきましょう。

みなし残業のメリット

ここではみなし残業の3つのメリットについて解説します。とくに従業員の給料に対しての満足度が高くなりやすい点が最大のメリットだといえるでしょう。

残業代の計算がしやすい

みなし残業時間内であれば、毎月同じ金額の残業代を支払うこととなります。そのため、別途残業代を計算する必要がありません。毎回、残業時間を計算し、残業代を入力する手間を省くことができます。

また、一定の残業代を支払えば良いため、人件費の見通しが立ちやすくなる点もメリットです。事業計画においても支払いのサイクルが把握しやすくなる点は魅力の1つだといえます。

従業員のモチベーションアップにつながる

従業員は残業をしなくても残業代を受け取れます。そのため、効率的に仕事をこなす社員も増加するでしょう。

作業時間に合わせて残業代を支払っている場合、「仕事を効率よく終わらせる社員よりも、仕事に時間がかかる社員の方が収入が多い」という事態が生じるケースも多いといえます。しかし、残業代を固定化した場合、こういった矛盾を解消できます。

残業時間にかかわらず一定の金額が手に入るため、従業員のモチベーションアップにつながるでしょう。

関連記事:モチベーション向上に有効な施策とは?重要性や低下する原因、測定方法なども解説

従業員の生産性向上に期待できる

基本給にプラスして固定残業代を支払うため、毎月の給料がアップする従業員も多くなります。また、残業時間にかかわらず安定した収入が得られるため、収入の増減を心配する必要がなくなります。

従業員のメンタルが安定するため、生産性向上が期待可能です。場合によっては、退職率の減少につながる可能性もあるでしょう。

みなし残業については、従業員・企業側どちらにもメリットがあります。とくに、従業員の立場からすれば、給料が安定する、残業がなくても賃金が発生するといったメリットを感じるでしょう。経営の面では人材流出を防ぐことにつながります。

「みなし残業メリット」については、こちらの記事をご確認ください。

関連記事:みなし労働時間制のメリット・デメリットと残業代の考え方について解説

みなし残業のデメリット

ここでは、みなし残業のデメリットについてみていきましょう。制度を導入している場合でも労働時間の管理は企業として必須です。

従業員コストが割高

みなし残業は、毎月一定の時間残業を行ったことを前提に給与を算出します。実際に時間分、従業員が仕事をしなかった場合でも支払いを行わなければなりません。

例えば、毎月30時間のみなし残業をつけていた場合でも実際の残業時間は5時間しかないこともあるでしょう。そういった場合は、従業員コストが割高になる点がデメリットです。

残業の強要がありえる

会社は毎月一定の残業時間を既に支払っているといえます。そのため、管理職から「残業代分の仕事をしろ」といった指示が飛ぶ可能性が想定されるでしょう。

このようなケースを防ぐためにも、業務を管理する役職者だけでなく、 会社全体として現状を把握し、指導や改善を行っていく必要があります。

場合によっては労働時間管理がおろそかになる

毎月残業代を計算して支払う場合だけでなく、みなし残業制度を取り入れていても必ず日々の残業時間を記録しておかなければなりません。しかし、みなし残業制度を取り入れた場合、残業時間に対する意識が低下する可能性があります。

場合によっては、残業時間を正確に記録することを辞めてしまう会社もあるでしょう。みなし残業制度を取り入れていた場合でも、規定の時間を超えた場合は残業代が発生し、 法定労働時間を超えている場合には罰則が発生します。

そのため、従業員の労働時間を正確に把握できるシステムやツールの導入なども検討する必要があるといえるでしょう。

関連記事:労務管理の重要性とは?就業規則・労働時間などを管理して業務改善を目指そう

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みなし残業で考えられるリスク



みなし残業は企業側・従業員側の双方にさまざまなメリットがあります。しかし、運用方法を間違えるとリスクが生じることがある点を把握しておきましょう。ここでは、3つのリスクについて解説します。

違法性を問われる可能性がある

みなし残業を導入する際は、従業員への周知が欠かせません。そのため、募集要項・雇用契約書・就業規則にみなし残業代について詳細が分かるよう項目を明示しておく必要があります。

また、みなし残業時間を超えて残業した場合や休日・深夜に労働した場合は別途割増賃金の支給が必要です。仮に、支払わなかった場合は労働基準法違反で告訴される可能性もあります。

残業がなくても支払いの必要がある

仮に従業員が全く残業しない場合でも会社側はみなし残業代を支払わなければなりません。みなし残業をつけているからといって、従業員に「必ず残業するように」と強制することもできません。

この場合も みなし残業代をカットすることは不可能です。仮にカットした場合は労働基準法違反となります。

上手く管理しなければトラブルが増加する

みなし残業を決める際は、「〇時間分の残業代」と定めることがほとんどです。例えば、「15時間分のみなし残業代」と定めた場合は、毎月の従業員の残業時間が15時間以下であれば、規定通り固定残業代を支払います。

しかし、実際従業員が20時間の残業をした場合は、5時間分の残業代は別途支払わなければなりません。法定で規制されている残業時間の管理しなければならないため、 個人の労働時間を把握できる仕組み作りが大切になります。

経営的な導入ポイント

みなし残業はメリットも多いものの、リスクもあるため導入する際は様々な点に気を配らなければなりません。ここでは、みなし残業制度を導入する時のポイントを3つ解説します。

導入する際は丁寧に手順を踏む

みなし残業制度を導入するにあたっては、従業員への周知が必要です。募集要項・雇用契約書・就業規則に次の4点を記載します。

  • みなし残業代を除いた基本給の額
  • みなし残業に関する労働時間数と金額
  • みなし残業代の計算式
  • 既定のみなし残業時間を超えて残業・休日出勤・深夜労働をした場合、別途残業代を支払うという旨


また、1人1人と「労働条件通知書兼労働契約書」を交わし、同意を取りましょう。従業員から「知らなかった」とトラブルになる事態を避けるためです。

勤務時間を把握できる仕組みを作る

実際の残業時間がみなし残業時間を上回った場合は、その時間分の残業代を支払わなければなりません。そのため、みなし残業導入後もタイムカードやツールなどを導入し、実際の勤務時間を把握しましょう。

実労働時間がみなし残業時間を下回った場合でも、固定残業代はカットできません。

みなし残業時間は実態に合わせて設定する

みなし残業を始める前に、みなし残業の対象とする業務に関する勤務実態を調査しましょう。どの程度の時間をみなし残業とするのか、実態に合わせて決める必要があります。

みなし残業時間を超過した場合は、残業代を支払わなければならないことも含め、実労働時間を元に、過不足のない残業時間を設定しましょう。

また、残業は業務状況や時期が変わることによって大きく変化することがあります。一度、みなし残業を導入した後も定期的な確認や見直しを行いましょう。

まとめ

みなし残業とは、実際の残業時間にかかわらず、一定時間の残業代を毎月支払う制度です。毎月の残業代が固定されるため、残業代の計算が楽になります。また、従業員は残業をせずとも一定の残業代が受け取れるため、モチベーションアップにつながるでしょう。

なお、実残業時間がみなし残業時間を上回った場合はその分を支払わなければなりません。そのために、みなし残業導入後も労働時間を管理することが大切です。

みなし残業導入時にも役立つシステムとして、「タレントパレット」が挙げられます。みなし残業導入時に締結する契約書の同意などもシステムで一元管理できるためです。

また、従業員の健康管理や労務負荷分析などにも利用できるシステムとなっています。みなし残業制度の導入や労務管理業務の効率化を考えている場合は、利用を検討してみましょう。

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