こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
新型コロナウイルスは多くの企業の経営に大打撃を与えました。また、企業においては、自然災害やサイバー攻撃、商品の不正問題などのあらゆるクライシスに備えることが重要です。
今回は、クライシスマネジメントとは何かを説明し、実施する重要性や実行段階ごとの対応について解説します。クライシスマネジメントを進めたい企業の人事担当者は、本記事を参考にしてみてください。
クライシスマネジメント(危機管理)とは
新型コロナウイルスの影響など、企業にとって予測不可能な災害が大きく事業を脅かすことがあります。これに適切に対処することが企業にとって最も重要です。
以下で、近年重要視されているクライシスマネジメントの意味について解説します。
クライシスマネジメントの意味
クライシスマネジメントとは、企業の活動に影響を及ぼす危機が発生したときに、それに対してどう対処をするかを管理することを指します。具体的には、初期対応や二次災害の防止を行うことで、平常状態に戻すことです。トラブルや被害を最小限に抑えたり、事前にトラブルを回避したりすることを目的としています。
近年では、急激に社会に蔓延したコロナウイルスが影響して出社が不可能になったり、購買意欲が低下して事業が成り立たなくなったりなど、多くの企業で危機に直面しています。業界によって影響範囲はさまざまではありますが、どの企業でも事業の進行を妨げるような大きなリスクは至る所にあるでしょう。
特に変化の激しい現代では、誰もリスクを予測することができません。そうしたなかで、未曾有の危機に素早く対応したり、次に影響する前に阻止したりすることが重要になってきます。予測できない問題に事前の対応や迅速な対応をするために、クライシスマネジメントが重要です。
リスクマネジメントとの違い
クライシスマネジメントと似た言葉に、「リスクマネジメント」があります。
リスクマネジメントは、リスクが発生する前に行う事前策のことを指します。危機を予測して一歩先に進み、事前にトラブルを回避することが目的です。そのために、危機となり得る要素を洗い出し、対処すべき優先順位をつけたうえで、一つひとつ対応していくための対処マニュアルを作成します。
一方で、クライシスマネジメントはすでに起こっている事象に対して対処することを指します。危機が起こった事後の対策であり、どう素早く対応するか、最小限の被害にするためにどうするべきかを考えることが求められています。
このように、リスクマネジメントは事前策であり、クライシスマネジメントは事後策です。どちらも危機に対応するために必要な考え方を示しています。
クライシスマネジメントが重要視される理由
クライシスマネジメントは、大きな危機に迅速に対応するために必要なものです。クライシスマネジメントが重要視される背景には何があるのでしょうか。
以下で、クライシスマネジメントが重要な理由を2つ説明します。
予想外の危険に対応するため
クライシスマネジメントが重要視される理由として第一にあるのが、これから起こる予想外の危険に対応するためです。
2001年に起こったアメリカの同時多発テロや2011年に起こった日本の東日本大震災では、多くの人が被害に合い、都市機能が低下するといった大きな損害が出ました。これらは誰も想定できなかった大きな危機です。そのため、このような事態が起こった場合の体制を整えることが必要との考え方が強くなりました。
多くの企業にとって、どんな危機に直面するのか予測することは困難です。明日業務が行えなくなる可能性があり、そうなったときでもうまく対処することが求められます。予想外の事態に速やかに対応するためにも、クライシスマネジメントは重要です。
予想外の危険から従業員の安全を守るため
急な危機により通常の業務ができなくなった場合にも、企業は従業員を守る義務があります。特に、大規模災害が起こり、企業全体が混乱することによって、統率がとれない場合もあるでしょう。そういった事態を想定して、事前に対策を決めておく必要があります。
混乱のなかでは従業員の命の危険も伴うため、まずは安全を確保することが重要です。例えば、社内で地震や火事などの自然災害が発生した場合の行動経路を確認しておくことなども、クライシスマネジメントにつながります。
従業員が安心して働くことができる環境を整えれば、従業員の信頼を獲得し、企業の生産性向上にもつながるため、クライシスマネジメントは企業にとって重要な要素です。
クライシスマネジメントの実行段階1.事前準備
具体的にクライシスマネジメントを実行する際には、どのような手順を踏むべきでしょうか。まず初めに重要な事項として、事前準備があります。
以下で、クライシスマネジメントの実行段階の一つ目として、事前準備の方法を具体的に解説します。
対応責任者を決めて対策本部を設ける
初めに、社内に対応責任者を決めて対策本部を設けましょう。
対応責任者を決めることで、何をすべきか把握しやすく、迅速な行動が可能です。実際に大きな危機が訪れた際には、対応責任者が適切な対応を行うための指揮を執ります。従業員は対応責任者の指示を優先し、一人ひとりが指示に従うことで統率感のある落ち着いた行動が取れるようになるでしょう。
また、部署ごとに担当を決めて対策本部を作ることも重要です。対策本部は、対応責任者を中心に、各部署からの情報を収集し、迅速かつ適切な対応を行うための体制を整えます。災害が起こった場合には、顧客への対応はカスタマーサポート部門が対応し、取引先への対応は営業部門が対応するなど、それぞれの対処法を決めておくことが大切です。
訓練の実施
予想外の危険や過去に起きた事例をもとに、定期的な訓練を行うことも大切です。事前に訓練を行っておくことで、いざという時に適切な対応ができるようになります。
対応責任者と対策本部で話し合い、事前に予測不能の事態が起こったときの対応方法について確定したら、マニュアルを整備するだけで終わらず、社内の人を巻き込んで訓練を実施しておきましょう。
実際に同業他社で起きた事例や過去に起こった事案から、ある程度起こりうる事態は想像できるようになります。どんな事態が発生したかシナリオを作成し、実際に対処してみることで、同じような出来事が起こったときにもスピード感を持って対処できるはずです。
また、実際に訓練することで、対応策の実現性を確認したり従業員の危機管理意識を保ったりなどにもつながります。
日頃から情報を集める
クライシスマネジメントを行う際には、日頃から情報を集めておくこともポイントです。インターネットやSNSなどで、起こりうる危険の情報を収集することで、実際に起きた際の影響をイメージしやすくなります。
世の中の経済情勢や業界の最新情報、競合の動向などに注目して情報収集を行うことで、自社で起こる危機を未然に防ぐことができる可能性もあります。いくつかの事例を見ておくことで、こういった場合にはこんな危険が起こりうる、といったように情報を分析して事前に対処することが可能です。
リスクは起こってしまうものですが、起こらないうちに終わることが最良です。危機に関するアンテナを高くもち、情報収集を怠らないことでいち早く気づくことができます。
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クライシスマネジメントの実行段階2.対処法
危機が起こる前に準備しておくべきことや心構えについて説明しました。ここでは、実際に危険が起こった場合の対処方法について説明します。
具体的に対処すべきこととしては、現場を把握することと素早く対処することの2つです。それぞれ詳しく説明します。
現場の情報を収集する
だれが、どこで、何を、どのようにといった観点で素早く情報を集めましょう。
問題が起こっている現場の情報から対処法を導き出します。そのため、現場の状況を具体的かつ正確に、なるべく早く判断することが重要です。混乱している現場では、うまく状況を説明できないこともあるでしょう。そうした場合でも、対策本部では必要な情報を端的に引き出し、そこから情報を正しく分析することが重要です。
情報分析のポイントとしては、何が起こったのか時系列順で整理し、人・場所・ものなどの情報をもれなく確認していくことが挙げられます。実際に現場に赴くことができない状況でも、対策本部で対応策を考え、社内に伝達し、企業全体で対応していくことが必要です。
迅速に対応する
危険な状況では、初動の速さが重要です。そのためには、情報収集の段階で迅速に判断しなければなりません。正しく情報収集を行い現場の情報を把握できたら、次は一刻も早い対応が求められます。
実際に危機を体験した企業において、そのときを振り返って一番の反省点として挙げられているのが、初動が遅れてしまったことにあるといいます。これは、場合によっては1分1秒の差が被害の大きさにつながるためです。
そのため、現場から報告が上がった段階でためらうことなく、最適な判断をする必要があります。判断を的確に行うためにも、あらゆる事態を想定した事前の対応策の準備が大切です。事前に行う研修で、事態に対応するための手順を確認し、危機が起こった段階で一人ひとりが迷うことなく行動に移せる準備をしておきましょう。
クライシスマネジメントの実行段階3.回復
危機に対処して終わりではなく、企業の機能を回復させることが必要です。クライシスマネジメントの実行段階の回復について解説していきます。
起きた原因を追究する
危機に的確に対処できたあとは、すぐに原因究明に努めましょう。もし事業内容や人員配置が原因である場合は、経営改善を行う必要があります。
大小さまざまな問題がありますが、危険が生まれた原因はいくつか考えられます。例えば、商品の不具合により顧客に怪我が発生した場合の原因は、不具合を発見するまでの確認体制の甘さが考えられるかもしれません。また、不具合に気づいていながらも情報を伝達できない社内の体制に問題がある場合もあります。
関係者に聞き込みを行い、実際に見直すべきポイントが見つかれば、今後同じような事態が起こらないように改善する必要があります。問題は起こった部署だけの責任ではなく、企業全体の問題です。会社の上層部が主導となって問題に対処する姿勢が重要でしょう。
解決策を決める
突然の危機には冷静に対処する必要があります。解決を現場任せにするのではなく、経営層が主体となって解決策を考えることが大切です。
商品の不具合や事業の不履行、社外の信頼を損なうような事態が発生してしまった場合には、企業全体が一丸となって対応することが求められます。部署が違うからといっても、同じ企業にいる以上、外からの見え方は同じです。
企業価値が下がる可能性のあるような危機が起こったときには、組織全体が統制を保ち、的確に迅速に対応することが求められています。経営層といった組織の意思決定を行う人が主体となって動くことで、組織単位で素早く行動することが可能です。
また、クライシスに対する適切な対応は、企業価値の維持・向上にもつながります。
クライシスマネジメントを行う際のポイント
事前準備や実際に起こった際の対処、回復に努めるまでの方法を説明しました。クライシスに対応することは、さまざまな面で慎重に対応する必要があります。
以下に、クライシスマネジメントを行う際のポイントを2つ紹介します。
クライシスの大きさごとのレベルをつける
クライシスの大きさごとにレベルを付け、対応する責任者を決めておくことが大切です。
危機に対応する際には、初動の速さが重要であると説明しました。迅速かつ的確に判断するためには、問題のレベルによって対応する人を変えることでスムーズな対処に期待できます。例えば、社外に重要な情報が漏れたというような問題の場合はマスコミに関わる広報部署の担当者へ、法律に関する問題が発生した場合は法務部の担当者へつなぐと判断がスムーズです。
内容だけでなく、「会社の経営に関わり全社で対応すべき問題か」「マスコミに関わり複数の部署で対応すべき問題か」「社内で対応できる問題であり主要な部署のみで対応可能か」といった問題のレベルによっても、対応する人を決めておくとよいでしょう。動くべき人員を明確にしておくことで、スムーズな連携がとれ素早い対応が可能になります。
情報を包み隠さずに報告することを徹底する
情報を隠蔽したリ、報告漏れがあったりすると適切な解決策にはならないことも注意が必要です。クライシスが起きたときに、報告する内容は不透明性が意識されるものでなければなりません。
問題が個人に帰するものであったり、問題を隠そうとしていたりすると的確な対応が遅れてしまいます。問題が大きくなったときには、対応できないものになってしまうかもしれません。情報が的確に共有されるように、日頃から透明性を意識した行動を社内で徹底しましょう。
また、情報の透明性は社外に情報を公開する際にも同様です。何か起こってしまった場合には、可能な限り具体的な原因の公開と誠実な対応を心がける必要があります。原因を隠すことによって、会社の信用の低下やイメージダウンにつながることもあります。
まとめ
クライシスマネジメントは会社の信頼を守るためにも重要です。事前にあらゆる可能性を考えたうえで、適切な対応ができるように社内の複数の人を巻き込んで準備をしておく必要があります。危機に対応する際の人材配置や社内体制も重要です。
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