こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「コンピタンス」は、人材や企業の能力・資質を表す際に使われることが多い言葉です。類似した用語が多いことから、正しい意味は把握していないという方も多いのではないでしょうか。
今回はコンピタンスの意味やその他の用語との違い、関連して使われることが多い「コアコンピタンス」の意味などをまとめて解説します。
コンピタンスの意味とは?
「コンピタンス」とは、専門的な能力や資質の総称です。日本語で能力というと、「アビリティ」を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、両者には明確な違いがあります。
アビリティは、主に状況への対応能力を示す言葉であり、「特定の仕事ができる」「あることに強みを持っている」といった意味があります。それに対して、コンピタンスは「周囲の環境からの要求や達成すべき目標に対して、対処・処理・順応する努力」のことを指します。
ビジネスの場でわかりやすく表現すれば、「会社や組織の要請に応じきる動機付けと能力」ということもできるでしょう。
コンピタンスとコンピテンシーの違いは?
コンピタンスと似ている言葉に「コンピテンシー」というビジネス用語があります。ここでは、両者の違いについて見ていきましょう。
コンピテンシーの意味は?
コンピテンシーとは、高いパフォーマンスを発揮する人材に共通して見られる行動特性のことです。行動特性とは、基礎的な能力や考え方、ノウハウ、知識などを総合的に捉えたものです。
ハイパフォーマーに共通する行動特性を明らかにすることで、自社の人材育成に活かしていくのがコンピテンシーの基本的な役割といえるでしょう。
どのような違いがあるのか
コンピテンシーは行動をベースに考えるのに対し、コンピタンスは資質やスキルをベースに考えるのが特徴です。コンピタンスは潜在的なものであり、普段は目に見えることがありません。
そこで、コンピテンシーという具体的な行動や発言、思考サイクルを通して、優れた人材の特徴を把握していくといったイメージを持つと良いでしょう。
コアコンピタンスの意味とは?
コンピタンスは個人だけでなく、企業や組織などにも当てはめて考えることができます。特に、企業活動において重視されるのが、「コアコンピタンス」という考え方です。
コアコンピタンスとは、日本語で表現すれば「中核能力」のことであり、「他を圧倒できるだけの重要な強み」を意味しています。しかし、単に優れた技術やノウハウを持っているというだけでは、コアコンピタンスとして扱うことはできません。
具体的には、圧倒的なレベルの価値(技術や能力)のうち、さらに以下の3つの条件を満たす必要があるのです。
・顧客に具体的な利益をもたらせること ・競合他社が真似できない、真似しにくい能力であること ・複数の市場や製品にアプローチできること |
自社の強みがコアコンピタンスに該当するかどうかを見極める際には、後述する「5つの視点」も併せてご確認ください。
コアコンピタンスとケイパピリティの違いとは?
コアコンピタンスと類似した言葉に「ケイパビリティ」があります。ケイパビリティも能力や素質といった意味を表す用語であるため、両者の区別は曖昧になりやすい面があります。
ボストンコンサルティンググループ(BCG)のジョージ・ストーク、フィリップ・エバンス、ローレンス・E・シュルマンが発表した論文によれば、「コアコンピタンスはバリューチェーン上における特定の技術力や製造能力」を示すのに対し、「ケイパビリティはバリューチェーン全体に及ぶ組織能力」であると定義づけられています。よりシンプルに表現すると、両者には以下の違いがあるとまとめることができるでしょう。
・コアコンピタンス:企業にとってもっとも本質的な特定の中核能力 ・ケイパビリティ:協力企業なども含めたバリューチェーンを通して、組織の有機的なつながりによってもたらされる総合力 |
たとえば、他社に負けない圧倒的な技術がコアコンピタンスだとすると、ケイパビリティはマーケティングやブランド形成なども含めた総合的な競争力を指します。ただし、現在ではる両者の概念がとても近いものになっているため、厳密に定義を分ける必要性は低下しているのも確かです。
コアコンピタンスを見極めるなら5つの視点が大切
自社の技術や能力が、真にコアコンピタンスであるかどうかを見極めるためには、多様な視点から判断する必要があります。ここでは、コアコンピタンスを見極める5つの判断基準について見ていきましょう。
視点1.模倣困難性
「模倣困難性」とは、一言で言えば「真似しにくさ」のことです。どれだけ優れた強みを持っていても、他社から簡単に真似されてしまうのであれば、長期的な優位性を保ことはできません。
たとえば、その技術が「過去の長い社歴や独自の発展経路に依存している」「外部からでは一見するとどこに強みがあるのかわからない」「特許等で守られている」など、簡単に模倣できないような性質が求められるのです。
視点2.移動可能性
「移動可能性」とは、多数の分野に応用できる汎用性のことです。特定の技術が様々な製品に活用できたり、幅広い展開が期待できたりする場合には、企業の基盤を支えるコアコンピタンスとなり得るということです。
視点3.代替困難性
自社の強みとなる技術や能力が、別のものに置き換えられないという意味です。「替えの利かない技術力を持っている」「ほかの製品では置き換えられない」など、代替困難性のあるコアコンピタンスを持つ企業には、対象の分野において高いシェアを占める競争力が期待できます。
視点4.希少性
「希少性」は、文字通り数が少なく珍しいことを指します。コアコンピタンスの判断においては、前述した「模倣困難性」と「代替困難性」を満たしていることで、希少性を持っていると考えられます。
視点5.耐久性
「耐久性」は、「強みとなるポイントが短時間で消滅しない」ことを意味します。コアコンピタンスとして扱うためには、長期にわたって競争優位性を保てることも重要な前提となります。
ただし、移り変わりの激しい現代社会においては、商品の価値という点で耐久性を持つのは従来と比べて難しくなっています。
強い組織を作るために、あらゆる人事データを統合して分析
現代のビジネス環境において、コアコンピタンスを確立するためには、スピーディな意思決定と円滑な情報共有が行える強い組織力が前提となります。そのためには、人事データの効率的な管理と分析も重要なテーマとなるでしょう。
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コアコンピタンスを確立する方法
それでは、実際にコアコンピタンスを確立するためには、どのようにアプローチしていくべきなのでしょうか。ここでは、3つのステップでコアコンピタンスを見極める方法を解説します。
ステップ1.強みと弱みを整理する
まずは、自社の強みと弱みを整理することが第一歩となります。強みを把握する代表的な分析手法としては、SWOT分析があげられます。
これは、以下の表のように企業の現状を「内部と外部」「プラスとマイナス」の2つの軸から分析し、正確な情報を把握するための手法です。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部環境 | 強み(Strength) | 弱み(Weakness) |
外部環境 | 機会(Opportunity) | 脅威(Threat) |
一口にコアコンピタンスといっても、技術や製品といったわかりやすいものから、採用ノウハウや人材育成の仕組みといったものまで、幅広い考え方が存在します。そのため、内部環境については、以下のように様々な軸で強みを洗い出してみると良いでしょう。
・技術、能力 ・特性 ・製品、サービス ・企業文化 ・人材 ・ノウハウ ・人事 |
ステップ2.整理した強みを評価
強みをピックアップしたら、前述した5つの視点をもとに、実際に評価を行っていきます。5つの視点とともに、「顧客にどのような価値をもたらすか」も含めて評価を行い、繰り返しながら分析することが大切です。
ステップ3.絞り込み
最後のステップでは、様々な強みのなかから、自社のコアコンピタンスとなるものを絞り込む必要があります。コアコンピタンスは経営方針にも関わる重要なテーマであり、一度定義したらそう簡単に変更することはできません。
「将来にわたり、中核の能力として育成・進化させていきたいか」「長期的に考えても模倣されるリスクは小さいか」「顧客に確かな満足と喜びをもたらすことができるか」などの点を踏まえて、じっくりと見極めを行うことが大切です。
コアコンピタンスの確立に成功した企業例
自社のコアコンピタンスを確立するうえでは、他の企業がどのような取り組みを行っているかも知っておくことが大切です。ここでは、コアコンピタンスに関する成功事例をいくつかご紹介します。
本田技研工業株式会社
1970年に改正されたアメリカの大気浄化法(マスキー法)は、当時の世界中の自動車メーカーに大きなダメージを与えました。排気ガスに関する不可能ともいえるような厳しい基準が課され、クリアした自動車以外の販売が認められなくなってしまったのです。
しかし、本田技研工業はこの出来事を好機と捉え、大気汚染対策に社内リソースの大部分をつぎ込み、他を圧倒するスピードで低公害技術を駆使した「CVCCエンジン」の開発を実現させます。CVCCエンジンはアメリカ環境保全局の認定をクリアすると、自動車だけでなく除雪機や芝刈り機などにも横展開されていき、同社の地位を確固たるものへと動かしました。
本田技研工業のCVCCエンジンは、「他を圧倒する技術力」「顧客への確かな価値の提供」「移動可能性」などを満たしたコアコンピタンスの好事例といえるでしょう。
富士フイルム株式会社
コアコンピタンスの見極めは、環境が大きく変化したときに重要な価値を発揮します。富士フイルム株式会社では、デジタルカメラの普及にともない、フィルム事業が大きく需要減退してしまったことで大きな転換を余儀なくされていました。
そこで、「精密な技術力」と「コラーゲンを生み出す開発力」を活かし、医療やスキンケア化粧品といった分野に応用することで、収益の確保に成功します。自社のコアコンピタンスを把握しているからこそ、新しい分野にもスムーズに事業展開できた事例といえるでしょう。
トヨタ自動車株式会社
コアコンピタンスは特定の技術や製品だけでなく、企業文化や生産方式なども含まれます。トヨタ自動車株式会社が確立した「トヨタ生産方式」は、サプライチェーンの最適化を実現し、「ムリ・ムダ・ムラ」のない徹底した高い生産性というコアコンピタンスを生み出しました。
ソニー株式会社
ソニー株式会社ではテープレコーダーの小型化を追求し、ウォークマンの開発に成功すると、外でも手軽に音楽を聴けるという新たなライフスタイルを創出しました。小型化という高度な技術は、その後もテレビやカメラといった様々な製品に横展開されるコアコンピタンスとなっています。
味の素株式会社
味の素株式会社では、アミノ酸の研究・開発から派生した「先端バイオ・ファイン技術」と、グローバルな顧客に製品・サービスを適合させていくマーケティング力をコアコンピタンスとして確立させています。高度な先端バイオ・ファイン技術は、食品の分野を飛び越え、再生医療や医薬品開発の分野にも将来的な貢献ができると期待されています。
また、独自のマーケティング手法や営業力により、世界中の顧客に対して、地域社会に根差した事業として進化させていくことにも成功しています。
まとめ
コンピタンスは能力や資質を表す用語であるものの、アビリティやコンピテンシーとは異なる意味を持っています。潜在的な能力や動機付けのことであり、表からはあまり見えませんが、ビジネスを成功させるうえでは重要な意味を持つ概念です。
特に「コアコンピタンス」は中核能力とも呼ばれ、その企業の経営方針を大きく左右するポイントとなります。コアコンピタンスは単なる強みとは異なり、自社の特長のなかでも、様々な条件や見極めのポイントをクリアしたものでなければ認められません。
他社の事例も含めながら、自社のコアコンピタンスを確立しましょう。そのうえで、企業が長期的な成長を目指すためには、土台となる組織づくりにも力を入れる必要があります。
人材育成や人材採用のノウハウを確立すれば、それ自体が自社のコアコンピタンスとなるケースもあるのです。組織開発には、「タレントマネジメントシステム」を活用することが重要です。
タレントマネジメントシステムとは、人材の能力やスキルを最大限に発揮してもらうために、人材データを集約・一元管理して、高度な意思決定を可能にするシステムをいいます。人材一人ひとりのスキルや保有資格、経歴などのデータをもとに、計画的な人材育成や高度な配置戦略を練るために活用できます。
また、タレントマネジメントシステムである『タレントパレット』は、データに基づいた科学的な人事を実現するためのシステムです。あらゆる人事データを蓄積・統合することにより、精度の高い分析を行えるので、人材に関する分野から自社の強みを見極める際にも役立てられるでしょう。
「自社の強みを客観的に分析したい」「競争力に優れた組織をつくりたい」という方は、ぜひタレントパレットをご活用ください。