こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
退職は大きく分けて会社都合退職と自己都合退職があります。特に会社都合退職では、会社側の問題により従業員が退職するケースが多いため、失業給付などの要件も変化することから人事担当者としては違いを明確に知っておかなければならないといえるのではないでしょうか。
この記事では、会社都合退職と自己都合退職の違いに加え、会社都合退職で解雇する際の注意点についてもみていきましょう。リストラや解雇、退職勧奨を進めるときは参考にしてみてください。
会社都合退職とは
会社都合退職とは、会社が従業員を解雇したり、退職勧奨を勧めたりしたうえで、会社側の理由で従業員が退職することです。そのほか、経営不振による倒産や事業整理によって雇用契約が終了した場合なども会社都合退職扱いとなります。
失業給付金受給要件が異なる
会社都合退職の失業給付金受給要件は「離職日から数えた前1年間で、雇用保険の被保険者期間が通算6カ月以上」です。つまり、半年以上の雇用保険の支払い期間があれば、失業給付を受けられることになります。
一方、自己都合退職の失業給付金受給要件は、「離職日から数えた前2年間に雇用保険の被保険者であった期間が通算12カ月以上」です。従業員として、要件を満たすだけであれば、会社都合退職の方が満たしやすいといえるでしょう。
退職一時金制度の扱いが異なる
退職金は、勤続年数をメインに金額が決定されます。しかし、退職一時金が採用されている場合には、退職理由で取り扱いや金額が変化する点は知っておきましょう。会社都合退職では、退職金が減額される可能性はありません。
一方、自己都合退職の退職金は、会社都合退職の退職金にくらべると減額される可能性が高くなります。会社の就業規則にもよるものの、あまりにも大きな減額は労働裁判に発展する可能性があるため、注意が必要です。
手続きの違い
労働基準法によると、会社都合退職における手続きでは、会社側が退職する従業員に対して、次のような対応が必要です。
・少なくとも30日前に予告する
・予告しない場合は30日分以上の平均賃金を支払う
会社都合退職では、この予告に注意しなければなりません。
一方、自己都合退職では、当該従業員に退職願を提出してもらい、就業規則にのっとった手続きを進めていきます。
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会社都合か自己都合か、ケースごとの退職事例
ここでは、自己都合退職のケースも合わせてケースごとの判断をみていきましょう。退職を勧める際もどの理由なのかによって、判断が変わる点には注意が必要です。
会社都合退職になるケース
会社都合退職となるのは、主に以下のようなケースです。会社都合退職に共通しているのは、従業員ではどうすることもできない事情によって、会社に在籍できなくなったケースだといえます。
・会社が倒産した(破産や銀行取引停止処分、民事再生、会社更生を含む)
・事務所や支店の廃止、撤退
・事務所の移転に伴い、通勤が困難になった場合(通勤困難の目安は、車や公共交通機関の利用で4時間以上)
・会社の業績悪化を理由とした退職勧奨や、早期退職制度の応募に応えた場合
・従業員全体の3分の1以上が一斉退職した場合
・会社から従業員への給与未払いや支払いの遅延、および大幅な減額が提示された場合(大幅な減額の目安は15%以上)
・会社から休職命令を受けてから3カ月以上経過しても命令が解除されない状態
・慢性的なハラスメントや長時間残業が確認された場合(長時間労働の目安は、月45時間以上や、休日出勤が3カ月以上連続している状態)
自己都合退職になるケース
自己都合退職となるのは、主に以下のようなケースです。会社都合退職と比較すると従業員のライフスタイルによるものが多くなっています。
・結婚や妊娠、出産、育児といった、ライフステージの変化に伴い仕事が続けられなくなった
・親や親族の介護によって仕事が続けられなくなった
・家業を継ぐ必要があるため退職する
・転職や起業をした
・従業員自らの落ち度によって懲戒解雇になった
・資格取得のための勉強を理由に退職する
・大学や大学院への入学、進学、海外留学などを理由に退職する
懲戒解雇は、自己都合退職とは無関係と言えません。懲戒解雇に至るまでには、指導や教育も行われるケースもありますが、従業員が就業規則に大きく違反した場合は、自己都合退職扱いになります。
退職勧奨は原則会社都合退職になる
円満退社のひとつである、退職勧奨による従業員の退職は、原則として会社都合退職になります。退職勧奨は、会社が退職を提案し、従業員がそれに合意する形です。
しかし、退職を勧めたのは会社側のため、退職のきっかけは会社側にあるといえるでしょう。退職勧奨をした理由も会社側にあると判断されるため、退職勧奨に合意したうえでの退職は、会社都合退職となります。
この場合、離職票においても会社都合退職である旨を記載しましょう。
会社都合退職によるデメリット
会社都合により退職となった従業員がいた場合、会社のデメリットとなるケースも少なくありません。ここでは、会社にはどのようなデメリットやリスクがあるかをみていきましょう。
解雇予告手当金が必要になることがある
会社都合退職となるケースとして、会社の業績悪化によるリストラや、事務所の移転などがあります。こうしたケースはまれだとしても、「解雇予告手当金」に注意しなければなりません。
解雇予告手当金とは、予告を伴わない解雇をした際に、支払いの義務が発生するお金です。やむを得ない理由で従業員を解雇する際には、少なくとも30日前に「解雇の予告」をしなければなりません。
解雇予告をしない、あるいは30日前より遅れて解雇予告をした場合は、その不足日数分の平均賃金を「解雇予告手当金」として支払う必要があると定められています。
会社都合退職としてリストラを実施する際には、解雇のスケジュール調整も行いましょう。
助成金制度の要件から外れる
「トライアル雇用助成金」「キャリアアップ助成金」といった、雇用促進のための助成金は、従業員を雇用していることが受給要件です。そのため、定められている要件次第では支給停止や減額の可能性がある点に注意が必要です。
助成金による支援を経営維持要素のひとつとして予算を立てている場合は、デメリットが大きいといえます。
ブランド力の低下
会社都合退職の状況次第では、不当解雇や退職の強要だと受け止められ、解雇後に訴えられる可能性もあります。また、退職した本人が、会社に不満を持っている場合、会社に対する悪評がネットを通して広まる可能性も否定できません。
会社都合退職でリストラや解雇を行う場合は、不満を最小限に抑えなければ、企業としてのブランドが低下する恐れもあるため、法的な面だけでなく、会社としての体制も整えましょう。
会社都合退職時に気を付けるべきこと
ここでは、労働基準法に違反しないように手続きの際の注意点をみていきます。とくに解雇予告や有給休暇の扱いは把握しておかなければなりません。
解雇予告を行う
会社都合退職で解雇する場合は、解雇予告が会社として行われているかどうかを確認しましょう。解雇予告は解雇する日の30日前までに従業員へ通知しなければなりません。
会社都合退職は解雇予告を行わない・日数が不足している場合は、解雇予告手当金が必要です。
有給休暇を消化する
解雇する従業員が、未消化の有給休暇を有している場合は、退職日までにすべてを消化する必要があります。退職日までに有給を消化できない場合は、退職日の変更、もしくは有給休暇の買取りも可能です。
本来、在籍中の従業員から有給休暇をお金で買取る行為は、労働基準法によって禁止されています。ただし、退職時に残っている有給休暇であれば、買取りが可能です。金額は就業規則に基づき、平均賃金や通常賃金などで決定されるため、正しく対応しましょう。
会社都合退職により解雇される従業員が、有給休暇をどのくらい有しており、どのような調整が必要かも確認しておく必要があります。
離職票は正しい内容で記載する
離職票には正しい情報を記載することも心がけましょう会社都合退職の場合、退職する従業員へのデメリットは少ないため、離職票に関して不正行為が行われる可能性は低いといえます。
しかし、本来自己都合退職であるのに、会社都合退職扱いにするといった虚偽の記載をすると違法行為となるので注意が必要です。逆の場合も同様です。
雇用保険法第83条第1項第1号に基づき、「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられます。
また、虚偽申告に基づいて失業保険を受給することも不正行為になり、雇用していた事業主も連帯責任を問われる場合があります。退職した従業員とともに、事業主にも受給した失業保険の返還や納付を命じられることがあるため、不正行為とならないためにもよくチェックしましょう。
引用:労働基準法|e-GOV
まとめ
会社都合退職では、経営不振や倒産といった、会社側の都合によって従業員が退職を余技なくされるケースが該当します。会社都合退職で解雇する際は、解雇予告や助成金制度の要件に加え、有給休暇の消化状況などもチェックしておくことが必要となるでしょう。
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