こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
キャリア理論はキャリア選択の方法について提唱した理論です。人生を豊かにするために、キャリア設計を行うためのツールとして役に立ちます。
今回は、「職業選択理論」「構造理論」などのキャリア理論について説明し、それぞれ代表的な理論家を紹介します。従業員のキャリア・マネジメントの人事担当者の人は、本記事を参考にして、最適なキャリア選択のサポートの方法を検討してみてください。
キャリア理論とは
キャリア理論とは、職業選択やキャリア形成に関する考え方・方法をまとめた理論です。一人ひとりが自己実現を目指してキャリア形成を進めるうえで役立ちます。キャリア理論は「職業選択理論」「構造理論」「職業発達理論」「新しいキャリア発達理論」の大きく4つに分けられ、それぞれに複数の理論提唱者が存在します。
職業選択理論では個人の適性や能力を重視する理論です。一方、構造理論は社会的・状況的な要因を重視して考えています。職業発達理論では個人の成長や発達に着目しており、自己啓発やスキルアップに重視する理論です。新しいキャリア発達理論は、個人の多様性や自己実現に注目し、自己表現、自己実現のための活動が重要であると提唱しています。
それぞれ異なる考え方が存在するため、自分に合った方法を見つけてガイドラインとすることが大切です。
職業選択理論
職業選択理論とは、個人の適性や職業において必要とされる要素を合理的にマッチさせることを重視する理論です。約100年前にアメリカで誕生し、現在も主流となっている考え方の一つであり、1909年にパーソンズによる著書「職業の選択」によって提唱されました。
この理論では、人の性格に適した職業を選択させるため、自己理解や自己分析が最も大切であるとしています。以下で、職業選択理論を提唱している人として代表的なパーソンズ、プレディガー、ウィリアムソン、ジェラットの考え方について詳しく説明します。
1:パーソンズ
パーソンズは、職業指導の創始者ともいわれる人物です。
アメリカ産業革命後に職業指導運動に従事し、そこで、多くの人々が就職活動に失敗する様子を目の当たりにしました。パーソンズは、失敗の原因は個人の能力と職業に求められるスキルの不一致によるものと考え、のちに「キャリア選択の3段階プロセス」を提唱しました。
「キャリア選択の3段階プロセス」とは、個人のキャリア選択にとって重要な3つの要素を定義した考え方です。内容は以下のとおりです。
- 自己分析
2.職業、職務分析
3.1と2を合理的に推論して、自身にとって最も適した仕事を選択する
自分自身の興味や能力、適正を考えたうえで、さまざまな仕事の条件、報酬、メリット・デメリットに関する知識を集め、両者のマッチングを図ることが重要とされています。
2:プレディガー
プレディガーは、ホランドの研究を発展させて、職業を4つに分類したうえで個人のパーソナリティとマッチさせることを提唱しました。
まずホランドは、パーソナリティが「現実的」「研究的」「芸術的」「社会的」「企業的」「慣習的」 の6つのタイプに分類されるとしています。プレディガーは、ホランドの提唱した6つのタイプを、4つのワークタスクに結びつけて考えました。仕事で扱う対象は「モノ」「アイデア」「人」「データ」の4つあり、それぞれ以下のように当てはめています。
・現実的 → モノ
・研究的・芸術的 → アイデア
・社会的 → 人
・企業的・慣習的 → データ
個人のパーソナリティを理解し、仕事で扱うべき対象を理解するうえで役に立つ考え方です。
3:ウィリアムソン
ウィリアムソンは、20世紀アメリカの心理学者です。パーソンズの考え方の流れを汲み、学生や思春期の人のカウンセリングに力を入れていました。
ウィリアムソンはカウンセリングを理論化し、人の特性と仕事に必要なスキルをマッチさせることを重視する「マッチング理論」を展開しています。マッチング理論とは、個人の持つスキル・能力と、仕事で必要なスキル・能力が一致することで、よりよい職業選択が行えるとする理論です。
特に、職業選択の際に生じる問題は4つあると指摘し、「選択しなかったことによる課題」「不確かな選択」「賢明でない選択」「興味と適性のズレ」のいずれかに分類されると考えています。
4:ジェラット
ジェラットは、意思決定理論を提唱した研究者です。意思決定理論では、人生は意思決定の連続であり、キャリア形成においても選択するプロセスそのものが重要であるとしています。
キャリアの意思決定では、合理的・論理的に最も適した選択を行うことが大切で、そのためのフレームワークを「合理的意思決定モデル」として発表しています。そのプロセスは以下のとおりです。
1.目的の明確化
2.情報収集
3.意思決定システム
a.予測システム:それぞれ選択した結果、何が起こり得るか考えます。
b.価値システム:それぞれ選択した結果の価値・メリットを考えます。
c.決定基準:a・bを踏まえて、意思決定の基準を考えます。
4.決定
すべての選択肢に気づいて、最適な選択をするために役に立つ考え方です。
構造理論
構造理論は、キャリア形成には人間と環境が相互に影響するという理論です。人間に重きを置く「心理学的構造理論」と、環境の影響が大きいとする「状況的・社会的構造理論」に分けられます。
社会の要因や周囲の環境がキャリア形成に影響を与えるため、自分自身が置かれた状況や周囲の情報を収集し、人間関係を築くことが重要であるとしています。以下で、構造理論を提唱した人として代表的なホランド、ブロンフェンブレンナーの考え方について確認しましょう。
1:ホランド
ホランドは、個人の行動は一人ひとりの人格と環境の相互作用によって決まるとし、人を重視した「心理学的構造理論」を唱えています。
人を6つのパーソナリティに分類し、それぞれに適した環境があるとのことです。例えば、「現実的」に分類された人は、明確で秩序立った活動を好み、物や道具、機械、動物などを扱う仕事に長けています。「研究的」に分類された人は、実証的で抽象的な活動や体系的な研究に魅力を感じ、物理学、生物学などの研究に打ち込むことを得意としています。
そのほか、「芸術的」「社会的」「企業的」「慣習的」のタイプが存在し、自分の個性を活かした環境を選択することに役立つでしょう。
2:ブロンフェンブレンナー
ブロンフェンブレンナーは、家族や地域、文化、時代といった4つの環境が職業選択に影響する「状況的・社会的構造理論」という理論を提唱しています。
職業を選択するうえで、その人が生きる環境が大いに影響を与えるでしょう。家業を継がなければいけないといった事情や、近所でアルバイトをして得た経験から、また好きなドラマの影響で、などさまざまなことがきっかけで職業を選択しています。また、ライフステージが変わって「もっと稼げる職業につきたい」といった事情なども考えられるでしょう。
このように、職業選択は環境が及ぼす影響が大きいこともあるでしょう。
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職業発達理論
職業発達理論は、職業選択を長期的なプロセスと考える理論です。職業選択理論や構造理論では、ある時点での職業選択の決定要因を規定していますが、一方で職業発達理論では、職業選択はその人がこれまでに行ってきたさまざまな意思決定の結果であるとしています。
この理論では、人生をいくつかの発達段階に分けて考えていることが特徴的です。以下で、職業発達理論を提唱したギンズバーグ、スーパー、シャインの考え方について詳しく説明します。
1:ギンズバーグ
ギンズバーグは、職業選択を人生における発達のプロセスと位置づける「キャリア発達理論」を提唱しています。青年期の学生を対象に面接調査を行い、その結果として3点を発表しました。
まず、キャリア選択は労働生涯を通じて発生しうるものであり、一般的に10年以上かかります。そのうえで、最初に選択した職業はあとから変更しづらいものです。最後に、選択のプロセスは、個人の希望と現実とのギャップの間で最適化していきます。
これらを唱えたうえで、職業選択には空想期(生後〜11歳)と試行期(11〜17歳)、現実期(17歳〜20歳台初期)の3つの発達段階があるとしています。
2:スーパー
スーパーは、人生を5つの発達段階に分けた「ライフ・ステージ論」と、ライフロール(人生における役割)の組み合わせがキャリアであるという「ライフロール論」の2つの理論を提唱しています。
スーパーの唱えたライフステージは、「成長期」「探索期」「確立期」「維持期」「解放期」の5つです。またライフロールとして挙げている役割には、「子ども」「学生」「家庭人」「余暇人」「市民」「そのほか(配偶者や親など)」があります。それぞれの段階は個人の事情や時代によって異なったり、役割は複数のものを演じる必要があったりなど、各場面で変わっていくものであります。
これらを組み合わせた考え方に「ライフキャリアレインボー」があります。私生活を含めた人生全体を考えたうえで、人生のさまざまな局面で訪れる選択を踏まえて、キャリアが形成されていく考え方です。
3:シャイン
シャインは、環境が変化しても変わらない価値観に沿ってキャリアを考える「キャリア・アンカー理論」を提唱しました。
キャリアに対する考え方は、キャリアの最初の選択時には曖昧だったものが、キャリアを積むうえで自分のなかで明確になっていきます。キャリア選択の際、自分自身のなかで変わらない軸を表すものとして「キャリア・アンカー」を定義しました。具体的には、以下3つの側面があるとしています。
・能力 :何ができるか
・欲求 :何がやりたいか
・価値観:やるべきことは何か
これら3つの側面が合致した場所に、適職があるとしています。
新しいキャリア発達理論
新しいキャリア発達理論とは、前述したようなキャリア発達理論をさらに発展させた理論の総称です。前述のギンズバーグやスーパーが唱えたような、職業選択における意思決定事項は人生の長期的なプロセスのなかにあるとする内容を発展させて、多くの人々がそれぞれの理論を提唱しました。
具体的には、クランボルツ、サビカス、ハンセン、シュロスバーグ、ブリッジスといった人物がいます。それぞれの考え方の詳細を以下で説明します。
1:クランボルツ
クランボルツは、1999年にスタンフォード大学で教育学・心理学の教鞭を執っていた人物です。偶然の出来事をキャリア形成に取り入れる「プランド・ハップンスタンス(計画的偶発性)理論」を提唱しました。これは日本でも有名な考え方で、現在広い分野で活用されています。
キャリア形成においては、予想していなかった偶然の結果で成長の機会や成功のチャンスが巡ってきます。その偶然に対して、常にポジティブな姿勢でいることがキャリアアップにつながるとしています。
特に変化の激しい現代社会では、どんな状況にも柔軟に対応できる前向きなスタンスが求められているため、プランド・ハップンスタンス理論の考え方が重要視されています。
2:サビカス
サビカスは、ノースイースタン・オハイオ大学医学部行動科学科の教授を勤める人物です。21世紀のキャリア理論として、「キャリア構築理論」を提唱しています。キャリア構築理論には、「職業的パーソナリティ」「キャリア適合性」「ライフテーマ」の3つの重要な概念があります。
職業的パーソナリティは、個人がキャリアに対して持つ興味や能力、価値観のことです。キャリア適合性とは、選択したキャリアに対して、計画性や意思決定の基準から適合しているかどうかを指します。ライフテーマは「なぜその職業を選択したか」といった動機や価値観を示すものです。
就職面接では、これらの3要素を考慮している企業も多くあります。
3:ハンセン
ハンセンは、著書「統合的人生設計」を発表して、仕事・学習・余暇・愛(4L)のバランスを重視する考え方を提唱しました。ここでは人生における重要要素を適切に組み合わせることを大切としています。
個人が自分の意思でキャリアを選び、人生の変化に柔軟に対応するスキルが必要です。キャリアプランを考えるうえで、ジェンダー論の視点やダイバーシティの視点、グローバルな視点からも課題に向き合う必要があるとしています。
また、人生におけるキャリア選択で、全体的な要素がうまく組み合わさった「人生のパッチワーク」を作ることが重要であるといったことも論じています。
4:シュロスバーグ
シュロスバーグは、人生の転機(トランジション)を乗り越えるプロセスで人のキャリアが形成されるという「4S-トランジションモデル」を提唱しました。
人生は転機の連続であり、トランジションが起こると、自分の役割の変化や周囲の人間関係、日常生活、自分らしさといった概念にまでも影響を与えることを指摘しています。こういった大きな変化が起こった際に、乗り越えるためのフレームワークが「4S-トランジションモデル」です。
4Sは「状況」「自分自身」「支援」「戦略」を指します。転機が訪れたら状況を正しく把握し、現状を受け入れ、計画性を持って対処することが大切です。
5:ブリッジス
ブリッジスも、人生の転機(トランジション)に関する理論を展開しています。転機は年齢に関わらず発生し、3段階に分かれるというもので、「トランジション3段階論」と称されています。
段階は具体的に「何かが終わる時」「ニュートラル・ゾーン」「何かが始まる時」の3つです。転機は大きな喪失感を伴って終わるところから始まります。この際、終わりを受け入れてしっかりと終わらせることが重要です。中間地点では、次のステップに進むために何が必要かと考える時間です。新しいやり方を模索するなかで、次の段階が始まります。
こういった変化にうまく対応しながら、キャリアを考えていくことが重要です。
まとめ
キャリア理論には、さまざまな考え方があります。人事担当者が従業員の適職を判断するために参考にしたいフレームワークも多いです。
タレントパレットは、従業員情報の把握や人材育成などの人事業務をサポートします。従業員のスキルレベルを見える化して、一覧で確認することが可能です。従業員のスキルを時系列で確認できる機能もあります。
キャリア・マネジメントの実施を検討している企業の担当者の方は、まずは無料の資料請求で詳細をご確認ください。
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