こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
近年は「アファーマティブアクション」といった言葉が使われるようになっていますが、経営層や人事担当者はアファーマティブアクションの言葉の意味を理解して、人事制度に反映させることが大切です。本記事では、アファーマティブアクションについて詳しくご紹介します。またメリット・デメリットや日本と海外の事例などもご紹介しまうので、ぜひご覧ください。
アファーマティブアクションとは何?
アファーマティブアクションとは、少数派(マイノリティ)が過去に受けてきた差別や不平等を是正するために、教育や雇用の分野において優遇措置を取ることを意味する言葉です。日本語においては「積極的格差是正措置」と訳されていますが、アファーマティブアクションというカタカナ言葉が使われるケースが一般的です。
アファーマティブアクションの目的は、歴史的に差別を受けてきた少数派(有色人種、女性、障がい者など)がほかの多数派の人々と同等な権利と機会を持ち、平等な社会を実現することにあります。
類語であるポジティブアクションとは
ポジティブアクションは、基本的にはアファーマティブアクションと同じような意味です。海外ではアファーマティブアクションと同じ意味で使われています。
日本において、ポジティブアクションは特に男女共同参画の文脈で使用されており、内閣府男女共同参画局もポジティブアクションという言葉を使用しています。
アファーマティブアクションの概念が生まれた背景
アファーマティブアクションの概念が生まれた背景として、1961年にアメリカのジョン・F・ケネディ大統領が署名した大統領令で初めて言及したことが挙げられます。ケネディ大統領の大統領令の発令でアファーマティブアクションの考え方が公式に表明され、人種差別の解消を目指す法の制定が続きました。また1964年に制定された公民権法は人種差別を解消することを目的としましたが、社会的・経済的な不平等が残る状況でした。
当時のアメリカではアフリカ系アメリカ人に対する差別が深刻な問題となっており、アファーマティブアクションは、主に人種差別を解消するための手段として導入されました。ジョンソン大統領は、社会的・経済的な不平等を解消するためにアファーマティブアクションを採用し、1965年に大統領命令11246を発令しました。この命令により、政府と事業者の間で女性や黒人、障がい者などの少数派の積極的な雇用が義務化されています。
1965年の大統領命令の発令以降、人種差別や女性差別の状況は一部改善されましたが、完全に解消されたわけではなく現在に至っているといえるでしょう。
アファーマティブアクションの事例
アファーマティブアクションの事例としては、日本の「男女共同参画基本計画」やアメリカの「クオータ制」ノルウェーの「議会におけるクオータ制」などが挙げられます。世界中の国々で自国の実情に合わせたアファーマティブアクションの取り組みが行われているといえるでしょう。それらの取り組みについて詳しくご紹介します。
日本の「男女共同参画基本計画」
男女共同参画基本計画は、女性の社会進出の割合が低い水準であることを受けて始められた取り組みです。第五次男女共同参画基本計画では、2025年までに民間企業の雇用者の係長相当職に占める女性の割合を30%程度にすることを目標として掲げています。なお男女共同参画基本計画で規定されている数値は強制的なものではなく、達成すべき目標として設定されています。
実質的な機会均等の実現に向けて努力するための指針であり、経営層や人事担当者は男女共同参画基本計画を反映させて人材育成や採用活動を行うことが大切です。また1985年に制定された男女雇用機会均等法も、女性の参画を促進するための取り組みの一つです。男女の違いによる差別的な扱いをなくし、女性が出産や育児をしながら仕事ができる環境の整備を進めることを求めています。
企業や関係機関への働きかけも行われており、再就職や女性の働きやすい環境づくり、女性に対する暴力の根絶、女性の健康支援などが推進されています。
アメリカの「クオータ制」
アメリカでのアファーマティブアクションの取り組みの一つが、採用試験や入学試験などにおいて導入されているクオータ制です。クオータ制は、合格者の一定の割合を社会的不利な状況にある人々に割り当てることで、差別を是正しようとするものです。マイノリティの採用枠を設けることで多様性を保つことが期待されています。
ただし、クオータ制の導入には逆差別の懸念も存在します。白人や男性が不利益を被る可能性があるため、違憲ではないかという議論もありました。しかし、2016年のテキサス大の判決において、アファーマティブアクションは合憲とされました。
アメリカは連邦制国家であるため、各州で独自の見直しが行われており、一部の州ではアファーマティブアクションの廃止や優遇の撤廃が行われています。
ノルウェーの「議会におけるクオータ制」
ノルウェーでは1978年に男女平等法が制定され、公的機関の男女比が一定の割合になるよう規定されました。女性の社会進出が進み、アファーマティブアクションの取り組みは一定の成果を挙げています。
1986年にはノルウェーでは初となる女性首相が誕生し、女性閣僚の割合も44%と高くなりました。国会議員や地方議員の約4割が女性であるなど、女性の政治参加が進んでいるのがノルウェーの現状です。
ノルウェーでクオータ制に対する大きな反対が起こらなかった理由の一つとして、北欧の選挙制度が比例代表制である点が挙げられます。選挙区ごとに定数を定める比例代表制はクオータ制との親和性が高く、抵抗が少なかったと考えられています。
さらに、2003年には会社法が改正されました。2008年以降、ノルウェーの企業では取締役の40%を女性にすることが義務化されています。この義務を守らない企業には厳しい措置が取られている点からも、ノルウェーは日本よりも取り組みが進んでいるといえるでしょう。
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アファーマティブアクションのメリットとは
アファーマティブアクションの取り組みを推進することで、いくつかのメリットが得られる可能性があります。以下では、アファーマティブアクションのメリットについて解説します。
ただし、アファーマティブアクションの効果やメリットは、実施される国や地域、対象となる社会的不平等の種類によって異なることがある点に注意しましょう。
メリット1:女性のキャリア意識が向上する
アファーマティブアクションの取り組みを推進することは、女性が職場や各種機関においてより公平な待遇を受けることを促進するということです。女性は自身の能力やキャリアに対する自信を高められるでしょう。
またリーダーシップを担う女性は、ほかの女性にとっての模範的な存在になります。より多くの女性がキャリアアップに積極的に取り組むようになると、企業の競争力や生産性向上にも寄与することが期待できるでしょう。
メリット2:労働力不足の解消につながる
アファーマティブアクションは女性に対してより多くの雇用機会を提供することから、労働力不足の問題を解消する一助にもなるでしょう。結婚や出産などライフスタイルが変化しても働き続けられる環境であれば、退職ではなく働き続けることを選択できるためです。
また採用活動で女性にとって働きやすい職場であることをアピールすると、女性に魅力的な職場と認識してもらえることから、優秀な人材の確保にも寄与します。優秀な人材が集結することで、創造性やイノベーションの促進にもつながるでしょう。
メリット3:新しい価値が生まれる可能性がある
優秀な女性従業員の定着率が高まると、女性の意思や判断が企業の意思決定に働くようになります。男性だけでは思いつかなかったアイデアが実現する可能性があるでしょう。特に女性向けの商品やサービスの企画・開発においては、女性ならではの視点やニーズの理解が重要です。
女性を含む多様なバックグラウンドや経験を持つ人々が組織に参加することで、異なる視点やアイデアが組織内で共有され、創造性や問題解決能力が向上します。また様々な視点を組み合わせることで、より革新的なソリューションや商品が生み出されることも期待できるでしょう。
アファーマティブアクションのデメリットとは
アファーマティブアクションの推進はメリットが期待できる反面、デメリットや懸念も存在します。主なデメリットは、逆差別が助長されたり個人の能力が軽視されたりする可能性があることです。
アファーマティブアクションを推進する際はデメリットも考慮し、公平な運用を心がけるようにしましょう。以下では、アファーマティブアクションのデメリットについて解説します。
デメリット1:逆差別が助長される可能性がある
アファーマティブアクションは社会的に弱い立場にある少数派を支援するために行われますが、その結果多数派への差別や不平等が生じる場合がある点に注意が必要です。アメリカでは、大学医学部の入学試験における少数派の採用枠について、逆差別だという主張で裁判が行われたことがあります。
アファーマティブアクションが過度に行われてしまうと、多数派に対する逆差別や不平等が生じる恐れがある点は覚えておきましょう。公平さを考慮しつつ、アファーマティブアクションを適切に実施することが求められます。
デメリット2:個人能力が軽視される
アファーマティブアクションの問題点として、個人の能力が軽視されることが挙げられます。クオータ制や特別枠を入学試験・入社試験などに導入すると、合格基準を下回っていてもマイノリティであることを理由に合格してしまう可能性があるでしょう。
個人の能力や実績よりも、マイノリティであるかどうかが重視される場合、不公平感が生じます。能力や努力ではなく人種や性別などの要素が合否の判断基準となることは、個人の能力を軽視することにつながりかねません。
アファーマティブアクションを実施する際は、公平さや能力主義の観点も考慮しなければならない点を押さえておきましょう。
企業が実践できるアファーマティブアクション
企業が実践できるアファーマティブアクションについてご紹介します。なお実施する際は、逆差別が助長されたり個人の能力が軽視されたりしないよう、公平さや能力主義の観点も考慮することが大切です。
企業のトップが従業員にアファーマティブアクションの理念を広める
経営者がアファーマティブアクションの重要性を説明し、従業員に対して多様性を推進させるための取り組みを共有することは、従業員の意識を高める上で効果的です。従業員の多くはマジョリティであり、アファーマティブアクションについて正しく理解していないと取り組みが他人事になってしまう可能性があります。
理念を広めるには、勉強会や説明会の開催が有効です。従業員から逆差別やほかの課題に関する質問があった場合は、真摯に対応し、適切な説明や議論を通じて理解を深める必要があります。また逆差別や個人の能力の軽視を回避するために、公平性や能力主義の観点も考慮しましょう。
マイノリティをターゲットにした求人広告を出稿する
マイノリティを対象に求人広告を出稿することも、企業が実践できることの一つです。男女雇用機会均等法では、従業員に対して性別を理由とした差別をすることは避けるべきだが、女性の優遇を設けることは例外とされています。企業が社内の男女格差を解消し、機会を均等にするという目的で女性優遇の措置を行うことは法的に問題ありません。
ただし、女性優遇のターゲティングを行う場合は、企業の過去の男女格差が事実として存在することが前提となります。それ以外の場合、男女雇用機会均等法に違反する可能性があるため「女性優遇」の文言を使用することには注意が必要です。
採用選考時にマイノリティに関する要素を入れない
採用面接において、マイノリティにまつわる要素や個人の私生活に関わる質問は避けるべきです。思想や宗教に関する質問、結婚や出産計画に関する質問などは適切ではありません。男女雇用機会均等法に違反する可能性があります。採用の際には、個人の能力や経験、業務に関連するスキルや資格に焦点を当てるようにしましょう。
まとめ
アファーマティブアクションには女性やマイノリティの機会均等を改善し、多様性を促進する効果があります。しかし、逆差別や個人能力の軽視につながる可能性もあるため、両者のバランスを配慮して運用することが大切です。
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