「アドラー心理学」の理論や思想、行動例を分かりやすく解説


「アドラー心理学」の理論や思想、行動例を分かりやすく解説

「嫌われる勇気」で広く知られるようになったアドラー心理学は、仕事での成果を上げたい人や人間関係に悩んでいる人に注目されています。

この記事では、アドラー心理学の特徴や理論、思想といった基礎知識から学習に役立つ情報まで幅広く解説します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

ベストセラー書籍である「嫌われる勇気」で広く知られるようになったアドラー心理学は、仕事での成果を上げたい人や人間関係で悩んでいる人に注目されている思考法です。どのような点が仕事での成果や人間関係の悩みの解決に役立つのでしょうか。

この記事では、アドラー心理学の特徴や理論、思想といった基礎知識から学習に役立つ情報まで幅広く解説します。
 

アドラー心理学とは?特徴やはじまり


アドラー心理学とは、アルフレッド・アドラーが提唱した心理学で、正式名称を「個人心理学」といいます。

アドラーは、オーストリアの精神科医であり、ユングやフロイトと並び「3大心理学者」と称されていますが、日本での知名度はユングやフロイトほど高くはありませんでした。しかし、2013年に『嫌われる勇気』が出版され、ベストセラーになったことで、アドラーも日本で知られるようになりました。

ここでは、アドラー心理学の特徴やルーツを、分かりやすく解説していきます。

アドラー心理学の特徴

アドラー心理学は、人間を社会的環境とセットで理解するコミュニティ心理学と重なる部分が多くあります。また、アドラー心理学の大きな特徴は、この社会的環境の中の「対人関係」に焦点を当てていることです。

アドラーは、人間の悩みはすべて対人関係の悩みであると指摘しており、この考え方がアドラー心理学の根底にあります。

アドラー心理学のはじまり

アドラーは眼科医としてキャリアをスタートさせ、内科医として開業し、その後精神科医へと転身しました。

アドラーが内科医として受け持った患者たちは、裕福ではなくハンディキャップを持った人が多かったそうです。アドラーは、ハンディキャップを持った人たちが持つ劣等感と、ハンディキャップを克服しようとする気持ちが、言動や性格に影響していることに気付きました。

この気付きが、アドラーがアドラー心理学を作り上げるはじまりとなります。

アドラー心理学の5つの理論って何?

アドラー心理学の基本理論として挙げられるのが、主に以下の5つです。

  • 目的論
  • 全体論
  • 認知論
  • 対人関係論
  • 自己決定性


ここでは、5つの理論について要点を分かりやすく解説します。

「目的論」人の行動にはすべて目的がある

目的論とは、人の行動にはすべて目的があり、人は目的を果たすために自分自身が選択した道を歩んでいるという考え方です。

目的論と比較される考え方が、フロイトの「原因論」です。原因論は、現在の自分の状況を「過去の結果」によるものだという考え方であり、「将来の目的」を達成するためのものだという目的論と相反している理論であることが分かります。

目的論と原因論の違いは、将来と過去のどちらに焦点を当てるのかの違いです。原因論の考え方であれば、現状を変えるのは難しくなりますが、目的論の考え方であれば、現状を変えることができます。

アドラー心理学は、常に目的を考えて行動をすることの大切さと成長のヒントを与えてくれています。

「全体論」全体の立場から捉えなければならない

全体論とは「人は意識や無意識、精神や肉体など、すべてにおいて分割できない存在である」という考え方です。分割をせず、全体として目的に向かっていくのが人間であるとしています。

ただし、意識や無意識、精神、肉体のすべてが同じ方向を向いているわけではありません。そのため、実際には分割して考察していく必要があります。

例えば、マネジメント能力を向上させたいと考えた場合、マネジメント能力全体を向上させるためには、部分的に分割して改善点を考えます。

戦略を考えるための意識的なスキルを鍛えてリーダーシップを強化し、メンタルを磨いて部下からの信頼を厚くするなどの様々な方向からアプローチが必要です。これらのアプローチによる、相互作用の結果として全体が改善することを「全体論」といいます。

「認知論」起きたことをどう解釈するか

認知論とは「人は目の前で見たものをそのまま受け入れず、自らの体験などから意味づけや解釈をしてから受け入れている」という考え方です。

例えば、60点という点数を見て、「60点しかとれなかった」「60点もとれた」と、人によって解釈が分かれます。客観的な事実を理解しているのではなく、自分の主観も含んだ状態で現実を理解しているためです。

目の前にあるものを見てどのように解釈するかで、人の体験は大きく変わります。そして、そういった体験の積み重ねにより、人生も変わっていくというのがアドラー心理学の考え方です。

「対人関係論」社会の中で人とのつながりは必ずある

対人関係論とは、人のどのような悩みにも必ず他人が存在するという考え方のことです。

アドラーは、すべての悩みは「対人関係」によるものだと考えています。アドラー心理学では、人の考えや行動、感情は、すべて対人関係の中で起こっていることです。自分自身の問題だと考えがちなコンプレックスでさえも、他者と比較することで引き起こされる感情であり、対人関係の問題であるとされます。

社会の中で生きていく上で、人とのつながりは必ず存在します。そのため、「対人関係の中の存在」として人を理解しようとすることが大切なのです。

「自己決定性」自ら行動を決定できる

自己決定性とは「自分の行動は自分自身で決められる」という考え方です。

すべての悩みが対人関係によるものであっても、それによって人生が勝手に決められていることはなく、自らが行動を決定できるとされます。個人の独自性や現実の見方についての理論です。

対人関係の自分でコントロールすることが難しい悩みも、自分を変えるために行動することで、少しずつ悩みから解放されます。

自己決定性は、主体的で前向きな人間観であり、行動を決めるのも実際に行動に移すのも、すべて自分が決めることだという考えなのです。

アドラー心理学の4つの思想を分かりやすくいうと?

アドラー心理学のベースとなっている思想で、代表的なものは以下の4つです。

  • 劣等感
  • 共同体感覚
  • 課題の分離
  • 勇気付け


ここでは、4つの思想について、要点を分かりやすく解説します。

「劣等感」理想の自分に近づくために必要である

アドラー心理学では、劣等感を持つことをポジティブに捉えています。劣等感は「自分が心から実現したい」と考えている欲求を教えてくれる大切な感覚であるというのが、アドラーの考え方です。

人は誰しも劣等感を持っています。また、劣等感を払しょくするために自分をプラスの方向へ改善しようとし、その行動自体が前向きなものです。したがって、アドラー心理学では、劣等感を持つことは理想の自分に近づく行動につながるため、よいことであるとされています。

「共同体感覚」人間関係を横並びに捉えて人間関係を築く

共同体感覚とは、「自分は、属している共同体の一部である」という考えから、周りとつながっている感覚を主観的に感じる思想です。

アドラーは、性別や年齢、性格などに関係なく、人間関係は並列であると考え、信頼関係を築いたり、相手を尊重したりする関係を重視しています。

人は職場や家族など、必ずなにかしらの共同体に属しています。だからこそ、共同体感覚を持って、仲間を無条件に信頼して尊重することが、自分の幸せにもつながると考え、他人との対等なつながりを重視したのです。

「課題の分離」自分と他者の課題を分離する

課題の分離は、自分の課題と他者の課題を分離して考える思想です。

アドラーは、「人は自分の課題を解決するために生きる」「他人の課題に勝手に介入してはならない」と説いています。

仕事での課題や人間関係における課題など、日常における様々な課題は、自分のものと他者のものに切り離せます。他者の課題に感じる出来事でも、考え方を変え、自分自身に焦点を当てると自分の課題に気付けるでしょう。

「勇気付け」劣等感を克服するためのきっかけを作る

勇気付けとは、困難を乗り越えるために必要な活力を与えることです。また、その困難に
立ち向かうための精神的な能力を身につけることも勇気付けの思想に含まれます。

勇気付けは、自分自身の劣等感を克服できることに加え、 対人関係でも効果を発揮するといわれています。

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アドラー心理学から分かる人間の行動パターン

職場での人間関係や育児での子供への接し方など、人間関係に関する悩みを抱えている人は多いです。

ここでは、アドラー心理学の考え方や思想である「課題の分離」と「勇気付け」を例にして、人間の行動パターンを2つ解説します。

課題の分離「仕事」

課題の分離は、仕事における人間関係で活用しやすい考え方です。

例えば、職場で不機嫌な同僚がいたとします。同僚が不機嫌な姿を見て、自分が同僚に対して何かしてしまったのではないかと悩む人もいるでしょう。

同僚の機嫌が治るように何か対処しなければならないと考えがちですが、同僚の不機嫌は同僚自身が解決すべき課題です。他人である自分が同僚の感情をコントロールすることはできないため、自分の課題とは切り離して考える必要があります。

勇気付け「育児」

勇気付けは、中間反抗期の子供に対して効果的であるとされています。
中間反抗期の期間は、幼稚園年長から小学校低学年の間です。この時期の子供は、自分で決めて、自分だけの力でやり遂げたいという気持ちが高まるため、親の干渉を嫌がるようになります。

アドラー心理学では、性別や年齢、性格などに関係なく、相手との対等な人間関係を重視しており、親子であっても対等であるべきという考え方です。

そのため、上の立場から叱る、「えらいね」「頑張ったね」などの声掛けで褒めるなどではなく、子供と対等な立場からの言葉を投げかけることが求められます。

子供と対等な立場からの声掛けを行うには、子供のよい面に注目する・結果よりも過程を重視するなどを意識する必要があります。これらの意識が子供を勇気付けるきっかけとなり、育児で効果的な力を発揮するでしょう。

アドラー心理学をおすすめしたい人

アドラー心理学をおすすめしたい人は、以下の通りです。

  • 実現したい夢を持っている人
  • 対人関係のストレスをなくしたい人


アドラー心理学は、自分の意識や行動・対人関係に焦点を当てています。劣等感などのマイナスな感情も理想を実現するために必要であると考えるため、実現したい夢や理想を持っている人におすすめでしょう。

また、自身の他者の課題を分離する考えである課題の分離も説いているため、対人関係のストレスをなくした人にもおすすめです。

一方で、心の状態が安定していない人には逆効果な場合もあります。

アドラー心理学を分かりやすく解説している書籍

アドラー心理学を学べる書籍は、漫画も含め、数多く出版されています。

著者によって、それぞれ解釈が若干違っているので、自分が最も理解しやすい解釈を取り入れ、アドラー心理学の実践に活用してみましょう。

アドラー心理学の入門から復習におすすめの書籍・漫画をご紹介します。

書籍:アドラー心理学入門

ベストセラーとなった「嫌われる勇気」の著者でもある、岸見一郎氏によって1999年に書かれた『アドラー心理学入門』は、タイトルの通り、アドラー心理学を知るための入門書におすすめの一冊です。

アドラー心理学の見地から、幸福に生きるための問いに対してのアドラーの考えや、どのようにして生きていくべきなのかという指針が示されています。

書籍:嫌われる勇気

アドラー関連の書籍でも有名な書籍の一つである『嫌われる勇気』は、日本のアドラー心理学の第一人者である岸見一郎氏によって、2013年に書かれたものです。

対話形式で話がすすんでいくためテンポよく読むことができます。また、アドラー心理学の重要な部分が簡潔に述べられているため、アドラー心理学を知るきっかけに適した一冊です。

続編の「幸せになる勇気」も読んでみると、さらにアドラー心理学を理解できるようになるでしょう。

漫画:マンガでやさしくわかるアドラー心理学

『マンガでやさしくわかるアドラー心理学』は、マンガで書かれているため、読書が苦手な人でも手軽にアドラー心理学を知ることができます。

仕事が上手くいかない主人公の女性が幽霊となったアドラーと出会い、アドバイス貰うことで成長していきます、ストーリー形式で、アドラー心理学の全体像を楽しく学べるでしょう。

もっとアドラー心理学を学ぶにはセミナーもおすすめ

アドラー心理学はセミナー受講も可能です。日本アドラー心理学協会では、アドラー心理学の考えをもとに講座やカウンセリングを提供しています。

日常生活で活用できるアドラー心理学を教える講座や、企業の研修・学校教育用に編成したアドラー心理学の講座などがあります。

ほかにも、アドラー心理学が学べる講座は、様々な場所で開催されるため、気になる人は調べてみるとよいでしょう。

まとめ


アドラー心理学は、対人関係に焦点を当てたコミュニティ心理学です。

人間関係の考え方や前向きな価値観、すべての決定は自分であるといった自分主体の考え方であるアドラー心理学は、対人関係のストレスから解放されたい人や自分を変えたいと思っている人におすすめです。

仕事においてもアドラー心理学が活用できます。人材育成や従業員のマインドセットのために、人事研修の一つとしてアドラー心理学を取り入れてみるとよいでしょう。

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