こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
現状の課題をテーマにメンバーで議論して解決策を立て、振り返りを実施することで、問題解決スキルやリーダーシップを養う学習方法を「アクションラーニング」といいます。近年では多くの企業で導入されるようになりましたが、中にはアクションラーニングの進め方が分からず躊躇している企業も多いでしょう。
組織やチーム体制を改善したい経営者や人事担当者に向けて、本記事ではアクションラーニングの概要やメリット、進め方などを解説します。アクションラーニングを導入して、従業員のスキル向上を目指したい方はぜひ参考にしてください。
アクションラーニングとは?
アクションラーニングとは、企業が抱える課題をテーマにグループで議論して解決策を導き出し、振り返りを行うプロセスの中で、従業員の問題解決スキルやリーダーシップを養う学習方法です。実際にある課題と向き合い、参加者のモチベーションを保ちながらスキルを学べます。
アクションラーニングは、1930年代に活躍したイギリスの物理学者レグ・レバンスによって考案されました。その後、多くの研究者によってブラッシュアップされ、1960年以降欧米の企業において、従業員の能力開発のために幅広く活用されています。
アクティブラーニングとの違い
アクションラーニングと類似した学習方法に「アクティブラーニング」があります。アクティブラーニングとは、参加者が自ら積極的に学べるように組み立てられた学習方法の総称です。
アクションラーニングと同様に、自発的に問題解決をするように促す手法ですが、アクティブラーニングでは、現実に起きた課題がテーマになるとは限りません。
一方でアクションラーニングは、実際の課題を用いて問題解決を目指すことが前提となるため、個々のスキルが向上するだけでなく、組織の発展にも影響します。
企業がアクションラーニングを活用するメリット・効果
アクションラーニングの活用は、企業にとって大きなメリットがあります。どのようなメリットがあるか理解しておくと、導入時の参考になるでしょう。6つのメリットについて解説します。
組織やチームの課題解決につながる
アクションラーニングの特徴は、組織やチームが実際に抱える課題をテーマに学習を進める点です。多様なメンバーが集まってディスカッションをすることで、よりよいアイデアが生まれます。
アクションラーニングは、問題解決スキルやリーダーシップを養うために行う手法ですが、その過程で導き出された解決方法により、組織が抱えていた課題の解決につながる点が大きなメリットといえるでしょう。また、ほかの問題が発生した場合も得た学びを応用できます。
学習する組織を構築できる
組織自体のパフォーマンスを持続するためには、各従業員が自発的かつ継続的に学びを深め、新たなスキルや知識を身につけることが大切です。アクションラーニングは、従業員の学びが組織全体の学習する力に直結する手法であり、「学習する組織」を構築する際に役立ちます。
働き方や人材の多様性が重視される昨今、企業も社会の変化に適応していかなければなりません。アクションラーニングによって学習する組織が構築できると、社会情勢に対して柔軟に対応できるでしょう。
個人のスキル育成につながる
アクションラーニングでは、実際に企業が抱える課題と向き合います。リアルな課題を通して、分析する力や問題解決に向けたアイデアを導き出す力などを磨くことが可能です。物事を深掘り、根本的な原因を追究する過程で、建設的な質問力や傾聴力も身につくでしょう。
また、アクションラーニングを通して導き出されたアイデアが、実際に課題解決につながった場合、フィクションの課題を解決したケースとは異なる達成感が得られます。
リーダーシップの育成につながる
リーダーシップの育成につながる点も、アクションラーニングのメリットです。アクションラーニングでは、実際に抱える課題を解決する必要があります。そのためこれまでに培ってきた常識や価値観、スキルなどを活用しても、太刀打ちできないケースが多いでしょう。
こうした環境下において課題解決を目指すことで、リーダーとしてチームメンバーの意見を尊重し、よりよい解決策を導き出すスキルが養われます。
組織のコミュニケーションが活性化する
アクションラーニングにおいて困難な課題を解決するためには、チームメンバーとのコミュニケーションが重要です。互いの意見を引き出してブラッシュアップすることで、よりよい解決策が導き出されます。
アクションラーニングによって、コミュニケーションの重要性が理解できると、実際の業務でも部署を超えた交流を深めることが可能です。例えばある部署が課題を抱えていたとしても、部署間でサポートし合えば、早い解決につながります。
チームビルディングを実践できる
アクションラーニングとは、チームビルディングを実践する上でも役立つ手法です。チームビルディングとは、個々の個性やスキル、経験を存分に活かし、目標を達成できるチームを構築するための取り組みを意味します。個性豊かな人材が集まる企業において、誰もが自分の力を発揮する上でも欠かせない取り組みです。
アクションラーニングを活用することで、コミュニケーションが活発になると、組織全体の団結力が高まります。また、心理的安全性の向上も期待できるため、チームビルディングを実践しやすくなるでしょう。
アクションラーニングの効果をより活かすためには、タレントマネジメントシステムの活用もおすすめです。タレントマネジメントシステムでは、分散していた人材データを集約し、分析・見える化ができます。人事業務の効率化はもちろん、人材育成や埋もれていた人材の発掘、最適配置などに役立つシステムです。
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アクションラーニングで大切な6つの構成要素
アクションラーニングは、下記の6つの要素で構成されます。より効果的に実践するためには、構成要素を把握しておくことが重要です。続いては、各要素について詳しく解説します。
1.問題(課題やプロジェクト)
アクションラーニングではより高い実践力を育成するため、迅速な対応が求められる緊急性の高い課題に取り組みます。また一人で解決できる課題ではなく、チーム全体で取り組みやすい課題を選ぶことが大切です。
例えば、個人が抱える課題に取り組む場合は、メンバーが用意した課題をチーム全体で解決に導く「マルチプル問題アプローチ」を活用しましょう。課題を提示したメンバーが課題を解決するメンバーを選び、チーム全体で課題解決を行う手法です。
また組織が課題を提示する場合は、組織側がメンバーを選ぶ「シングル問題アプローチ」を活用します。
2.チーム(メンバーの多様性)
アクションラーニングのメンバーは、4〜8名程度が適しています。加えて、価値観や個性の異なる多様なメンバーを集めることが重要です。様々な視点から問題解決に向けたアイデアが飛び交うと互いに刺激を与えられ、より活発な議論に発展します。その結果、よりよいアイデアの創出につながるでしょう。
なお、チームメンバーの中に課題の状況を把握している人材を、最低1名用意する必要があります。課題に対して専門性の高い人材だけでなく、あえて畑違いの人材を選ぶことも斬新なアイデアを生み出すコツです。
3.質問とリフレクションのプロセス
アクションラーニングにおける議論は、質問を中心に実施します。意見を述べるのは質問をされたタイミングのみです。質問に答えながら課題を言語化していくことで、個々の意見が整理されて、アイデアのブラッシュアップにつながります。
また、リフレクション(振り返り)を定期的に実施し、議論が順調に進行しているかを確認する作業も重要です。新たな課題が見つかれば、状況に合わせて改善する必要があります。
議論は質問を中心に質問された際に各自が意見を述べ、議論が順調に進んでいるか定期的に振り返るようにしましょう。
4.問題解決への行動
アクションラーニングとは、課題解決の方法を見つけるだけではありません。特に大切なのは、メンバー自らが積極的に行動することです。大前提として、メンバー全員が問題解決に向けた行動を実行する権限を持ちます。特定のメンバーだけに、権限が委ねられないように意識することが大切です。
また、行動した結果思うような成果が得られなかったとしても、その結果を活かして、再びアクションラーニングをすることが大切です。
5.学習に対するコミットメント
学習に対してコミットメントすることも、アクションラーニングに欠かせない構成要素です。コミットメントとは「責任」「約束」などの意味を持ち、責任を持って関与することを指します。
アクションラーニングでは人材育成の必要性を知り、課題に対して責任を持つことが重要です。そのため参加メンバーは人任せにするのではなく、ディスカッションやリフレクションに積極的に参加しなければなりません。
6.アクションラーニングコーチ
アクションラーニングをスムーズに進めるためには、進行役であるアクションラーニングコーチを配置することも重要です。アクションラーニングコーチは議論に参加するのではなく、タイムキーパーや学習につながる質問を行う役割があります。
課題ごとにメンバーが交代で担当することも可能ですが、話題を深掘りしたり、意見を出しやすいようにサポートしたりと高いスキルが求められるため、外部からコーチを招く方法もおすすめです。
アクションラーニングの2つの基本ルール
円滑にアクションラーニングを進めるためには、以下の2つの基本ルールを押さえることが大切です。
・質問を中心に議論を進める
・コーチは必要に応じていつでも介入できる
議論の中心は質問であり、質問を受けたときのみ自分の意見を伝えることが可能です。このルールによって、特定のメンバーだけが意見を述べる状況を避けられます。
アクションラーニングコーチは議論の時間を管理し、ポイントをまとめる役目です。円滑に議論を進める上で必要であれば、適宜議論に介入してサポートすることが可能です。
アクションラーニングを効果的に進める方法
アクションラーニングを効果的に進めるためには、以下に挙げる5つのステップを踏むことが重要です。それぞれのステップについて具体的な方法を解説します。
1.グループを作る
まずは、アクションラーニングを実施するためのグループを作りましょう。その際、多様な個性やバックグラウンドを持った4〜8名程度で構成すると、より効果的に学習を進められます。
大人数になると発言できないメンバーが出てくる可能性があり、スムーズに議論を進められません。反対に人数が少なすぎると多様な意見が生まれにくく、斬新な解決策につながらないでしょう。
またグループの作成と同時に、アクションラーニングコーチを決める必要があります。
2.問題の共有・質問を投げかける
グループメンバーが決まったら、組織が持つ課題やメンバーが抱える問題などを共有して、具体的な議題を決めます。メンバーから意見が出なかった場合、進行役であるアクションラーニングコーチが質問を投げて、発言をサポートするとよいでしょう。
議題を共有したのち、実際に議論を開始します。メンバー同士で質問を繰り返しながら、課題の本質を洗い出し、よりよい解決策を導くことが大切です。
ただし、実際に起きている問題を議題にするため、守秘義務や解決策が出た際のルールなども決めておく必要があります。
3.課題を再定義し解決のための目標を考える
議論した内容を踏まえて、再度課題を定義してみましょう。状況によっては、別の課題が見つかるケースも少なくありません。本来解決するべき課題は何かを明らかにした上で、再定義された課題をメンバー間で共有し、解決のために必要な目標をあらためて議論します。
なかなか具体的な目標につながらない場合は、アクションラーニングコーチがサポートすることが大切です。議題を整理しながら、目標に向けて足りないポイントを見出していきましょう。
4.行動計画を策定しリフレクションを行う
議論を繰り返しながら、課題を解決するための目標が明確になったら、行動計画を策定します。その際、メンバー全員が当事者として行動できる内容にすることが大切です。
策定した内容にメンバーが同意したら、最後に振り返りを行います。「議論したことがどのように活かされたか」「印象深い質問はどれだったか」など、議論全体を細かく振り返りましょう。
5.行動計画を実行する
行動計画の策定やリフレクションが完了したら、計画をもとに行動します。また、計画を実行するだけでなく、結果を振り返るための時間も重要です。後日メンバー全員で集まり、行動した結果どのような効果があったかを話し合いましょう。
計画通り実行しても思うような効果が得られなかった場合は、結果をもとに再びアクションラーニングを行うことが大切です。
まとめ
アクションラーニングは、個人の課題解決スキルやリーダーシップを高めるだけでなく、実際の課題に向き合うため企業の成長につながります。効果的に実践するためには、メンバーやアクションラーニングコーチの選定が重要です。多様な人材が持つスキルを活かすためにも、個々の特性をきちんと把握しておく必要があります。また、事前に企業の課題を洗い出し、アクションラーニングに活用できるようにしましょう。
「タレントパレット」は、あらゆるシステムのデータを統合して分析できるマネジメントシステムです。組織やチームの課題・現状を可視化できるほか、目標の共有にも役立ちます。アクションラーニングの導入を検討している経営者や人事担当者の方は、ぜひタレントパレットのシステムをご活用ください。