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職権濫用とは、公務員が自身の職権を不正に利用して不正に利益を得ようとする行為などを指します。また企業などにおいては、「職権乱用」と表記されます。
防止するためには、具体的にどのような行為が該当するのか把握しておきましょう。そこで本記事では、職権濫用(乱用)の意味や事例などについて詳しく解説します。
職権濫用の意味とは?
「職権濫用」という言葉は、日常会話の中でもよく耳にするでしょう。しかし、職権濫用という言葉は、一般敵に認識されている意味と、本来もつ意味がズレているケースが多いです。
そのため、まずは職権濫用が持つ言葉の意味について解説します。
一般的な意味:地位や権威を悪用する
一般会話で「職権濫用」という言葉は、自分の地位や権威を利用して自分の都合の良いように物事を進める意味で使われます。たとえば、「うちの上司は自分の役職を笠に着て、いつも威圧的な態度で部下を封じ込めようとする。まさに職権濫用している嫌なやつだ」と真剣な会話で使ったり、「あいつはたった2ヵ月先に同じ会社に就職しただけなのに、いつも先輩ヅラしている。職権濫用だ」と軽口で使ったりします。しかし、本来持つ意味は、われわれが把握しているものとは少々異なるようです。
本来の意味:公務員が地位を悪用する
「職権濫用」を国語辞典で調べると、「公務員が地位を悪用したり越権したりして国民の権利を侵害すること」と記載されています。また同じような意味で使われる場合でも、公務員とそれ以外の場合では表記が異なる点には注意が必要です。
以下のように、公務員とそれ以外では「しょっけんらんよう」の表記は異なります。
- 公務員:職権濫用
- それ以外の場合:職権乱用
公務員以外は、職権乱用が正しい表記です。
公務員の職権濫用による犯罪
公務員が立場や権限を利用して職権濫用した場合は、罪に問われる可能性があります。主な罪状は以下の4つです。
- 公務員職権濫用罪
- 特別公務員職権濫用罪
- 特別公務員暴行陵虐罪
- 特別公務員職権濫用等致死傷罪
本章ではこれら公務員の職権濫用による罪状について詳しく解説します。
1.公務員職権濫用罪
公務員職権濫用罪とは、「公務員が職権を濫用して、国民に法的義務のないことを実行させる、または法的権利の行使を妨害する行為」です。この場合、罰則として「2年以下の懲役または禁錮刑」に科されます(刑法193条)。
公務員職権濫用罪に該当する例は、以下のとおりです。
(法的義務のないことを実行させる)
- 警察官が職務質問だと称して、職務上必要のない人の個人情報を聞き出す
(法的権利の行使を妨害する)
- 役場の担当者がすでに決まっている個人の補助金支給を勝手に差し止める
2.特別公務員職権濫用罪
特別公務員職権濫用罪とは「裁判、検察または警察職務の実行者や職務補助者が職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁する行為」です。この場合、罰則として「6か月以上10年以下の懲役または禁錮刑」に科されます(刑法194条)。
該当する公務員は、以下のとおりです。
- 裁判官
- 検察官
- 警察官
- 裁判所書記官
- 検察事務官
罪に問われるのは逮捕、または監禁行為に限定されます。公務員職権濫用罪と比べ、対象となる公務員が限定される点が特徴です。
3.特別公務員暴行陵虐罪
特別公務員暴行陵虐罪とは、職務に就く以下の者が「被疑者や被告人などに対する、暴行または陵辱もしくは加虐の行為」です。
- 裁判官
- 検察官
- 警察官
- 刑務所の看守
- 護送する者
この場合、罰則として「7年以下の懲役又は禁錮刑」に科されます(刑法195条)。罪に問われる具体的な行為は、以下のとおりです。
- 暴行:相手を殴る、蹴る、押さえつけるなどの行為
- 陵辱もしくは加虐の行為:暴行以外の手段で相手に精神的・肉体的苦痛を与える行為
4.特別公務員職権濫用等致死傷罪
特別公務員職権濫用等致死傷罪とは、公務員が職権を濫用して人を死傷させる行為です。この場合、罰則として「通常の傷害・致死罪などよりも重い刑」を科すと規定されています(刑法196条)・
特別公務員職権濫用等致死傷罪は、「結果的加重犯」です。結果的加重犯とは、意図していた犯罪結果よりも重い結果となった場合、その結果に相当する犯罪の成立が認められることを意味します。罰則が「通常の傷害・致死罪などよりも重い刑」と規定されているのは、それが理由です。
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公務員以外でも職権乱用は犯罪になる
職権乱用が罪に問われるのは公務員だけではありません。公務員以外でも犯罪に問われるケースがあります。主な罪状は以下の2つです。
- 収賄罪
- 背任罪
職権乱用に問われたら、企業にとっては大打撃を被ります。そのため、どんなケースが職権乱用に該当するのかしっかり理解しておきましょう。
1.収賄罪
収賄罪とは、「自身の職務行為の見返りとして賄賂(利益)を受け取る、または賄賂の要求・約束する行為」です。この場合、罰則として「5年以下の懲役」に科せられます(刑法197条)。収賄罪は、行為の程度によって罪状が大きく異なる点が特徴です。
- 依頼を受けて賄賂を受け取った場合:7年以下の懲役
- 賄賂を受け取って不正な行為を行った場合:1年以上20年以下の懲役
また賄賂を贈った民間企業や民間人も、贈賄罪の罪に問われます。この場合、罰則として「3年以下の懲役または250万円以下の罰金」に科せられます(刑法198条)。
2.背任罪
背任罪とは、「以下の目的で背任行為を働き、組織に財産上の損害を生じさせる行為」です(刑法247条)。
- 自分や第三者の利益を得るため
- 会社等に損害を与えるため
罰則として「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に科せられます。また、企業の取締役や監査役が背任罪に問われたときは、特別背任罪に問われる可能性もあるでしょう。
特別背任罪とは、組織の取締役や監査役が背任罪により、会社に損害を生じさせる犯罪を指します。この場合、罰則として「5年以下の懲役10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方」に科せられます(会社法960条)。
職権濫用に関する刑事事件の事例
職権濫用に問われて刑事事件に発展した事例を、成立したものとしなかったものに分けて紹介します。事例を確認すれば、職権濫用の分別がつきやすくなるでしょう。
職権濫用が成立した事例
(事例1:最高裁判所判決 昭和57年1月28日)
・罪状
裁判官が刑務所長に対して、司法研究や調査目的と偽り、過去の受刑者の身分帳簿の閲覧と写しの交付を請求して、応じさせた事案。
・判決
正当な目的もなく、目的を偽って交付請求したことは法的義務のないことを実行させた行為だとされて職権濫用が認められる。
(事例2:最高裁判所判決 昭和60年7月16日)
・罪状
裁判官が担当事件の女性被告人に対し、交際を求めるために午後8時40分頃、「弁償のことで話があるから会って話がしたい」と電話で呼び出し、喫茶店に同席させた事案。
・判決
裁判官が被告人に出頭を求めるのは一般的な職務権限だが、呼び出した時間や場所が異常であり、女性に事件に関する出頭と信じさせる行為だったことから、職権濫用した行為だと認められました。
職権濫用が成立しなかった事例
(事例1:最高裁判所判決 平成元年3月14日)
・罪状
警察官2人が職務で日本共産党幹部の警備情報を得るため、幹部宅の電話を盗聴した事案。
・判決
警察官2人は盗聴行為において警察官とばれないように偽装行動を取っていたため、判決では盗聴が電気通信事業法に触れる違法行為とされましたが、盗聴行為が職権濫用とは言えず公務員職権濫用罪には当たらないとされました。
(事例2:最高裁判所判決 昭和39年12月11日)
・罪状
司法書士でない者が同法第一条第一項所定の書類を作成し、報酬を得る目的の有無にかかわりなく司法書士の業務を行った事案。
・判決
記録を調べても、違反する事情の存在は認められなかった。そのためこの主張は前提を欠き、
実のところは単なる法令違反の主張にとどまり、十分な上告理由に当たらないとされました。
まとめ
職権乱用で罪に問われるのは公務員だけとは限りません。企業において、未然に阻止するためには事管理が重要です。その対策に取り組む人事担当者に検討してもらいたいのが、タレントパレットです。
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