マトリックス組織とは?目的やメリット・デメリットとともに導入のコツを紹介


マトリックス組織とは?目的やメリット・デメリットとともに導入のコツを紹介

マトリックス組織は、少ない人員で高パフォーマンスが実現する組織形態として注目を集めています。今回はマトリックス組織について、メリット・デメリット、成功させるコツなどをご紹介しましょう。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

近年の働き方改革や人材不足などに対応すべく、少ない従業員数でこれまでの同じもしくはそれ以上の業務成果を出そうという考えが広まっています。その手段の1つが「マトリックス組織」です。マトリックス組織は、少ない人員で最大のパフォーマンスを実現する組織形態として注目を集めています。

今回はマトリックス組織について、メリット・デメリット、成功させるコツなどをご紹介しましょう。マトリックス組織の導入を検討している経営者の方はぜひ参考にしてください。

マトリックス組織とは?

マトリックス組織とは、職能や事業部、エリアの中から2つの要素を縦・横に組み合わせた組織です。これまでの組織形態は所属部門の業務のみに集中し、それ以外のことは他の部門へと任せていましたが、マトリックス組織は2つに所属して複数の業務を遂行します。

例えば、事業部とエリアを組み合わせる場合、事業部での業務を進行しながらエリアでの仕事も行います。このように指揮・命令系統をいくつか持たせると、従業員一人ひとりが状況に合わせて柔軟な対応ができ、あらゆる目標の実現を同時並行で目指せます。

少ない人員で高い成果を生み出せる可能性があることから、事業規模の縮小やコストカットを目標とする企業で導入が進められている組織形態です。

マトリックス組織の目的

マトリックス組織の目的は、幅広い分野に臨機応変に対応することです。従来の組織形態には連携に時間がかかったり、知識不足から高い品質を維持できなかったりするなどの問題点がありました。

しかし、マトリックス組織は1つの部門で様々な業務を手掛けるため、幅広い分野を1人で担当できます。また1つの組織が複数の業務を担当することで、他の業務に活用できるアイディアが生まれやすい特徴もあります。

情報以外にも、経営に必要な要素や能力が会社全体へ共有されるため、市場やニーズの変化や競争にも対応できる組織だと言えるでしょう。

アポロ計画がきっかけで浸透

マトリックス組織の構想は、1960年代のアポロ計画から生まれました。アポロ計画では「プロジェクトマネージャー制」と呼ばれており、プロジェクトごとのリーダーを立て、機能別の組織に所属するように構成されました。

この組織形態を企業に当てはめると事業部とエリアの2つに所属している点から、まさにマトリックス組織の母体と言えます。実際に欧米の企業で多く導入されており、組織のバランスをうまく保つことで複雑な業務にも対応できるのです。

機能型組織やプロジェクト型組織と異なる点

企業の組織形態はマトリックス組織の他に2つあります。全国に展開する大手企業は「プロジェクト型組織」、地域に密着した企業や中小企業などは「機能型組織」を用いるケースが一般的です。これらの組織形態の特徴を踏まえて、マトリックス組織との違いについてご紹介します。

1.機能型組織との違い

機能型組織とは、企業トップの下に製造・営業・販売・人事などの部門を置く組織です。部門ごとの業務目標がわかりやすく情報共有もスムーズになるため、従業員一人ひとりが効率的に作業を行えます。

しかし、部門ごとにハッキリと分かれているからこそ他部門との連携や情報共有が困難などの問題点には要注意です。場合によっては上司からの指示がないと動けない従業員も発生し、作業の効率性が大きく低下してしまうリスクもあります。

複雑な部門に所属するマトリックス組織であれば、連携や情報共有にかかる時間ロスはありません。また、幅広い知識や情報を所有しているため新規プロジェクトの立ち上げや環境変化、トラブルにも柔軟に対応できる違いがあります。そのため、機能型組織は機能単位に特化した組織構造と言えるでしょう。

2.プロジェクト型組織との違い

プロジェクト型組織とは部門ごとに専門スキルを持った人材を集め、1つのチームとして形成する組織です。チームそれぞれにプロジェクトマネージャーを置き、その指示に従って業務を遂行します。

チームごとにマネージャーがいることで責任の所在が明らかになり、クライアントや従業員に安心感を与えられるメリットがありますが、正しい判断力や決定力が必要です。判断次第では大きな損失が発生するリスクもあるでしょう。

マトリックス組織とは部門を横断する点が似ています。大きな違いは、他の部門に所属しながらメンバーの1人として招集される点です。専門性の高い技術を育てつつ他のプロジェクトにも参加することで、高い独立性を保ちながら他部門との連携や良好なタスクバランスを保てます。

マトリックス組織は3種類


1人の従業員が2つ以上の部門に所属し、作業を遂行するマトリックス組織は、大きく分けると「ストロング型」「ウィーク型」「バランス型」の3種類があります。それぞれの特徴を理解し、自社に適した組織形態を選ぶ判断材料にしてください。

1.ストロング型

ストロング型は、マネジメントを専門とする部門から各部門へマネージャーを配置する方法です。マネジメント力を持ち合わせた人材が責任者になると、他従業員の負担を軽減できる特徴もあります。また強い権限を所有しているため明確な指示系統が可能になり、プロジェクトに集中できる点もメリットと言えるでしょう。

ただし、ストロング型を導入するためには経営に特化した部門を設立する必要があります。大企業であれば新規設立も可能かもしれませんが、小規模の企業にとっては新しい部門を立ち上げることは容易ではなく、設立後のコストも考慮しなければなりません。

2.ウィーク型

プロジェクトの責任者を決めない方法がウィーク型です。一般的な形態の場合、マネージャーやリーダーなどの責任者を配置し、上からの指示で従業員が動きます。

しかし、ウィーク型にはマネージャーがいません。従業員それぞれが自ら考えて行動しリソースの調達も行うため、思わぬトラブルや環境の変化にも柔軟に対応できるメリットがあります。

ただし、責任者がいないことで指示や事業の進行方向が曖昧になる、従業員の能力や関係性などにより連携が困難になるなどのデメリットも考慮しなければなりません。

3.バランス型

バランス型は各プロジェクトから責任者を選び、選ばれた責任者は通常の業務も同時進行します。マネジメントのみを担当する責任者の場合、指示を仰いでもまずは進捗状況の把握が必要ですが、バランス型であればそのような無駄はありません。進捗状況の把握が容易になり、指示も的確です。

ただし、選出された責任者の他にも部門のマネージャーがいるため従業員は2人の上司から指示を受けることになり、複雑化する恐れもあります。責任者とマネージャーを兼任すればこの問題点は解消されますが、情報の錯綜や負担が増加するなどの新たなデメリットが生まれてしまうでしょう。

マトリックス組織のメリット3選

マトリックス組織を用いて経営を進めると、経営層側だけでなく現場にも多くのメリットが生まれます。マトリックス組織にはどのようなメリットがあり、なぜ会社全体に良い影響を与えてくれるのかなどを解説しましょう。

決定権が分散するためトップの負担が軽減できる

マトリックス組織ではある程度の権限を管理者やマネージャーなどに与えるため、経営層の負担が軽減されるでしょう。また、現場状況を認識している人物がマネージャーを担当することで、現場へのメリットも与えます。

例えば意思疎通が通じやすい、経営層とのコミュニケーション時のストレスが軽減できるなどです。作業効率が上がるだけでなく、メンタル面の負担も軽減できる点はマトリックス組織を導入する大きなメリットになります。

業務効率の改善が見込める

1人の従業員があらゆる業務に携わるマトリックス組織は、専門外の知識や情報に触れる機会も多いため、業務の調整が容易になり効率改善が期待できます。また、部署や部門を超えてコミュニケーションを取り合うことで全体像や工程が把握でき、従業員全員が同じ方向を向いて業務を遂行できるでしょう。

それぞれの部門で円滑に仕事をするためのスキルも自然と身に付きます。従業員の業務効率が向上すれば、会社全体へ良い影響を与えてくれるはずです。

新規事業の立ち上げがスムーズに進む

マトリックス組織のメリットとして、新規事業の取り組みが容易な点もあります。一般的な企業における立ち上げの際には、新メンバーの採用やチーム編成などのあらゆる手順がありますが、マトリックス組織は既存従業員の起用が可能です。

専門スキルを持った人材を各部署から選出できるため、新たな人材採用やチーム編成の必要はありません。機能型組織やプロジェクト型組織に比べると、新規事業の立ち上げがスムーズに行える点は導入する大きなメリットだと言えます。

マトリックス組織のメリット活用だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析 

マトリックス組織を導入して生産性の高いチーム作りをしたい時は、人事データを活用しましょう。従業員それぞれのスキルや知識などの情報を活用すると、戦略的かつ生産性の高いチームづくりが可能です。

人事データを適切に活用するためにはあらゆる情報を収集・保管することが重要ですが、膨大なデータを正しく取り合うことは容易ではありません。そこでおすすめなのが、あらゆる人事データを一元管理し、タレントマネジメントを効率化する『タレントパレット』の活用です。

時代は人材情報「管理」から人材情報「活用へ」!
タレントマネジメントシステム『タレントパレット』で、様々な経営課題に向き合えます。
・あらゆる人事情報を一元集約
・人材の見える化で埋もれた人材を発掘
・AIシミュレーションで最適配置を実現
・簡単操作で高度な人事分析が可能
⇒タレントパレットの資料を見てみたい

マトリックス組織のデメリット3選


マトリックス組織はメリットばかりあるように見えますが、押さえておきたいデメリットもあります。自社に向いている組織形態なのか、デメリット以上のメリットが期待できるかなどを考慮し、マトリックス組織の運営を検討しましょう。

マネージャー間で意見が食い違うことがある

マトリックス組織はマネージャーが複数人存在するため、方針が変わってしまうデメリットがあります。マネージャーによって指示内容が異なると、従業員はどちらの意見に従うべきか戸惑い、心理的負担にもつながるでしょう。

また、マネージャー同士の考え方の違いによって業務がストップする恐れもあります。マネージャー選出の際には会社の利益を考えられるか、お互いの領域に関する知識があるかなどを判断基準とし、適切な人材を選ぶことが大切です。

従業員が振り回されやすい

複数のマネージャーの下で働くと発生するデメリットとして、従業員が振り回されやすい点も挙げられます。気遣いが必要な上司が増えるストレスに加え、マネージャー同士の関係性が悪いと業務の報告や相談時などに精神的負担を感じてしまう場合もあるでしょう。

また、従業員の業務量に差が生まれやすい点にも要注意です。特定の従業員に仕事が集中しやすい仕組みであることを理解し、働きやすい環境を整える必要があります。

人事評価が複雑化する

人事評価が複雑化する点も、マトリックス組織のデメリットです。組織ごとに目標が異なるため誰がどの業務を担当しているかどうかの把握が難しく、現状の人事制度では対応しきれない部分が出てきます。人事評価制度の見直しが必要となり、組織数が多いほど制度はより複雑になるでしょう。

また、従業員を評価し取りまとめる担当者の負担が増加するデメリットもあります。これらのデメリットを考慮した上で、自社に適した人事評価制度を整えましょう。

マトリックス組織をうまく運営するコツ

デメリットが存在するマトリックス組織ですが、事前に対策を講じればカバーできます。そこで、マトリックス組織をうまく運営するためのコツを3つご紹介します。

マネージャー間のコミュニケーションを充実させる

マトリックス組織の導入を成功させるには、マネージャー間のコミュニケーションを充実させることが重要です。従業員が複数のマネージャーがいる組織形態のため、各プロジェクトマネージャーによって指示方針が異なる場合があり、従業員が混乱する可能性があります。

指示に統一性を持たせるには、事前にプロジェクトの役割を明らかにしておくことが重要です。マネージャー間が連携すれば指示系統もハッキリし、スムーズに業務を進められるでしょう。

また必要ならばマネジメントルールを定めたり、マネージャーのための研修を行ったりする方法もおすすめです。

従業員に対してストレスチェックを実施する

マトリックス組織を導入する際には、従業員へのストレスチェックも行いましょう。複数の部門に所属することで気を遣う相手が増えるほか、従業員によって業務量に差が生じることもあります。そのため、ストレスを抱えていないか、特定の従業員にのみ負荷がかかっていないかなどをチェックするストレス対策の実施が欠かせません。

定期的なストレスチェックは、精神的負担による体調不良を防ぐ効果もあります。マトリックス組織を取り入れる際には、従業員の負担を軽減するフォローや対策も同時に行いましょう。

まとめ

1人の従業員が複数の部門に所属し、プロジェクトごとにマネージャーを設置するマトリックス組織は経営層だけでなく現場にも大きなメリットをもたらします。ただし、複数のマネージャーが存在するからこそ気を遣う相手が増えたり、意見の食い違いが発生したりする点には要注意です。

タレントパレットでは様々な人事システムやデータを利用でき、戦略的なチーム編成が可能になります。効率的なマトリックス組織を編成するなら、タレントパレットの活用も検討しましょう。

タレントパレットのHPはこちら