ダイバーシティ・マネジメントとは?日本企業の導入方法やメリット・デメリットを徹底解説


ダイバーシティ・マネジメントとは?日本企業の導入方法やメリット・デメリットを徹底解説

労働人口の減少やビジネスのグローバル化、IT化などにより多様性の受け入れが加速するなか、企業は大きな転換期を迎えています。この記事では、ダイバーシティ・マネジメントへの理解を深めたい人に向けて、定義や導入した場合のメリット・デメリット、具体的な導入方法などについて解説します。ダイバーシティ・マネジメントの理解を深めて効率よく実践し、自社の人事戦略に役立ててください。

そもそもダイバーシティとは?

ダイバーシティとは、一言で言うと「多様性」のことです。さまざまな国籍や人種が集まるアメリカで提唱された考え方です。企業におけるダイバーシティの定義は、国籍や人種、性別、年齢などを限定せずに、能力のある人材を積極的に採用して経営に活かすことを指しています。

ダイバーシティ・マネジメントとは?

ダイバーシティ・マネジメントとは、ダイバーシティを導入した経営手法のことで、「ダイバーシティ経営」とも呼ばれています。労働者の多様性を経営に活かすことで、事業を成功に導き、さらに企業の発展にもつなげられます。女性の活躍を推進することはもちろん、病気の治療や子育て、介護と仕事の両立、外国籍の人材の受け入れなども挙げられます。

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ダイバーシティ&インクルージョンの概念

「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と受容性)」の概念の理解も不可欠です。この概念は、アメリカで提唱されたダイバーシティ・マネジメントの核となる考え方です。国籍や性別、価値観などの違いを認め合い、互いが価値のある存在として受容することを指します。

つまり、この概念は多様性を受け入れて組織の一体感を強め、全社員がチームや会社に貢献できる環境を整えることの重要性を示しています。

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アメリカにおけるダイバーシティ・マネジメントの歴史

1960年代にジョン・F・ケネディ大統領が「新公民権法」を施行したことにより、性別や肌の色、出身地などの差別を是正しました。これを皮切りに、アメリカではダイバーシティ・マネジメントが時代とともに変化します。

1970年代には「雇用機会均等法」が施行され、職場で差別された労働者は企業側に多額の賠償金を請求できるようになります。1980~1990年代には、「社会的責任(CSR)」を果たすために、多くの企業が取り入れるようになりました。

1990年代以降では、多様性のある人材を受け入れることで、競合他社との差別化に備える企業が増えます。現代のダイバーシティ・マネジメントが及ぶ範囲は、女性や人種の枠を超えた多様なマイノリティにまで広がっています。

ダイバーシティの種類

ダイバーシティには、「デモグラフィ型」「タスク型」「オピニオン型」の3種類があります。デモグラフィ型に分類されるダイバーシティは、国籍・人種・年齢・障害などの表層的な性質が挙げられます。制度や人事戦略の見直しなどによって、達成が可能です。

タスク型に分類されるダイバーシティは、役職・スキル・職務経験・受けてきた教育・宗教などの深層的な性質があります。デモグラフィ型と比較すると、人によって正しさの判断基準が異なるため、制度や人事戦略の見直しだけでは達成は難しくなります。

意見の多様性を意味するオピニオン型のダイバーシティは、企業や組織において個人が意見を主張できる雰囲気や環境のことを指します。日本では、個人よりも集団の意見が尊重される傾向が高いため、個人の意見が反映されにくいことが課題です。

日本企業におけるダイバーシティ・マネジメント導入の背景

日本企業でダイバーシティ・マネジメントが導入されている背景について解説します。

企業のグローバル化による事業運営

国内市場は飽和状態にあるため、国内企業は市場拡大のために拠点を海外へ移す必要性に迫られています。業務の効率化やコスト削減の観点からも、現地での人材採用・人材育成が不可欠です。一方、国内では多言語を話せる外国人の採用が積極的に実施されています。

労働人口の減少による人材の多様化

企業では、労働人口の減少などによって人手不足が深刻化しています。なかでも、人手不足が顕著な介護・飲食業などでは、外国人労働者を積極的に採用する傾向が高いです。また、結婚や出産、定年を機に第一線を離れた女性やシニア層の人材の活用を推進する企業も増えています。

社会的な責任を果たすための取り組み

社会全体が多様性を受け入れる動きが活発化していることも理由の1つです。多様な人材を受け入れた企業は社会的な責任を果たしたとみなされ、高い評価を受けます。たとえば、LGBTなどの性的マイノリティや障害者などの雇用拡大、女性管理職の起用などが挙げられます。

テクノロジーの進歩による消費の多様化

科学テクノロジーの進歩や時代の変化により、ユーザーの価値観も多様化しています。日常生活に必要な高機能のモノから、人生に彩りを与えるような体験への消費へと移行しつつあります。企業が成長し続けるには、ユーザーへの理解や迅速かつ適切な対応が不可欠です。

ダイバーシティ・マネジメントを導入するメリット

企業側・社員側のそれぞれが得られるメリットについて解説します。

企業側のメリット

多様な意見やアイデアが統合されイノベーションを生み出す

個々でブレインストーミングをするよりも、多様な意見やアイデアを集めたほうが、企業や組織の意識改革やイノベーションを起こす可能性が高まります。統計によると、ダイバーシティとイノベーションには有意な関係性があることが認められています。

多様化するユーザーニーズにも対応できるため、機会損失の防止策としても有効です。

人材の確保や定着化につながる

多様な人材を受け入れるためには、採用条件の範囲を広げ、社員にとって働きやすい環境を整備する必要があります。これらの実施により、人材が確保できるだけでなく、社員の定着率や企業に対する社員の満足度を向上させることにもつながります。結果的に、社員のモチベーションも上がり、会社全体の生産性のアップも期待できます。

企業の社会的評価・信用がアップする

「従業員満足度(ES)」の高さや働きやすい職場環境は、企業の社会的な評価や信用を向上させます。ユーザーからの印象もアップするため、自社の商品やサービスの購入・申し込みなどの成約にもつながりやすくなります。企業の評判を知った優秀な人材が集まりやすくなるため、安定的に優秀な人材を採用することも可能です。

社員側のメリット

価値観や仕事の幅が広がる

多様な人材と働くことは、社員にとってさまざまな価値観や意見に触れる機会を増やします。それにより、視野が広がる、さまざまな価値観を認めて受け入れられるなど、自己成長を促すことも可能です。結果として、社員は自身の価値観や仕事の幅を広げられます。

多方面で活躍できる

縦割り体質からの脱却にもつながるため、役割分担や部署の垣根を超えた人材配置やプロジェクトなどの実施も可能です。個人の活躍の場が広がるため、社員は多方面で個人のスキルや能力を発揮できます。

個性が尊重される

日本では古くから協調性を重視してきたため、個性の強い人材は受け入れられませんでした。しかし、ダイバーシティ・マネジメントの実現により、個性が尊重されるため、誰もが働きやすさを感じられるようになります。

ダイバーシティ・マネジメントを導入した場合のデメリット

ダイバーシティ・マネジメントの導入により、企業、社員の双方に影響するデメリットについて解説します。

パフォーマンスやチームワークが低下する

個人の先入観や偏見まではなくせません。個人間での誤解が生じる恐れがあるため、善意による行為でも裏目に出てしまうケースも少なくないです。人間関係が悪化すれば、個人のパフォーマンスの低下やチームワークにも悪影響を及ぼす可能性が考えられます。

人事業務が複雑化する

人材の多様化によって人事業務がさらに複雑化がすれば、人事担当者への負担が増えることは免れられません。さらに、個性と欠点の線引きが難しくなるため、評価によっては社員の不満が募る可能性が高まります。

統制が難しくなる

個性が尊重される反面、組織としての一体感が低下し、会社全体の統制が難しくなる可能性があります。たとえば、価値観やバックグラウンドの違いにより、個人間の対立やあつれきが生まれ、社内で混乱が生じるなどのケースも想定できます。

ダイバーシティ・マネジメントを導入する場合のポイント

制度や職場環境の整備

リモートワークや短時間労働、外国人労働者などの受け入れには、制度の見直しやルールの整備が必要です。たとえば、フレックスタイム制の導入やリモートワーク、サテライトオフィスの設置、育児休業・介護休業などの取得の推進などが挙げられます。

経営戦略に沿ったダイバーシティ・マネジメントの実施

ダイバーシティ・マネジメントを事業や業務に活かすためには、経営戦略に沿って実施することが重要です。経営陣がダイバーシティを理解してこそ、企業が一体となって取り組むことができます。社員の理解を得ることも重要なポイントになるため、ダイバーシティを盛り込んだ企業理念や経営指針を共有しておきましょう。

経営陣を含めた人材育成や研修プログラムの整備と実施

ダイバーシティを社内全体に浸透させ、全社員の意識改革を促すには、経営陣を含めた人材育成や研修プログラムの整備や実施が不可欠です。まずは、現状を把握したうえで自身への理解を深め、相手の意見や価値観との違いを認めて受け入れられる人材を育成することが大切です。経営陣が本気で取り組むことで、社員の意識を変えるきっかけになります。

ダイバーシティ・マネジメント実施時の注意点

ダイバーシティ・マネジメントの実施は、人事や経営陣だけでなく、会社全体が一丸となって取り組むことが重要です。多様性を重視しすぎて一部の社員を特別扱いすれば、ほかの社員の不平や不満を募らせてしまいます。あくまでも、公平な評価制度のもとで多様性を活かすことを前提にして実施しましょう。

ダイバーシティ・マネジメントに取り組む企業の成功事例を紹介

ダイバーシティ・マネジメントに取り組む企業の成功事例を紹介します。

株式会社ローソン

株式会社ローソンでは、全体の8割が男性社員であることから、女性社員の活躍を推進する必要性を課題として認識していました。男性社員の積極的な育児参加により女性が働きやすい職場を目指すために、男性の育児休職を積極的に促す仕組みや環境の整備を実施しました。
これにより、育児への積極的な協力をする男性社員が増え、産後の女性社員が職場復帰しやすい職場環境の整備に成功しています。

株式会社ZOZO

株式会社ZOZOでは、充実したワークライフバランスや、それによる企業の活性化が課題でした。そのため、フレキシブルな時短制度や子育てスタッフ、障害者スタッフの支援、同性パートナーを対象にした社内規定や福利厚生の整備などに取り組んでいます。
結果的に、ほかの社員が障害者スタッフとの交流のために自発的に手話を習うなどの意識変革も行われ、誰もが働きやすい職場環境を実現しました。

まとめ

ダイバーシティ・マネジメントの実施にあたり、人事評価や人事配置などが適切に行われるためのルールや環境の整備が不可欠です。そのためには、人事業務を効率化させ、環境整備のためのリソースを確保しなければなりません。

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