降格とは
降格とは、社内での役職や職位を下げることです。多くの場合、肩書が変わるだけではなく、役職手当や待遇なども併せて変更します。社員にとっては、不利な雇用条件への変更が伴うため、降格人事を行う際は、細心の注意を払う必要があります。社員に配慮しながら、適切な手続きを進められるようにしましょう。
降格人事の種類
降格人事には、さまざまな種類があります。ここでは、降格人事の種類について、具体的に解説します。
解任・降職
解任・降職とは、それまでの役職やポストを解任し、職位を下げることです。たとえば、部長から課長へと、役職を下げるケースが該当します。ただし、解任や降職が行われても、給料が下がるとは限りません。給料の基準が同じであれば、肩書きが変わるだけの処分といえます。
降級・降格
降級・降格とは、職能等級や給与等級を下げることです。「等級」は、社員の経験や技能に応じて与えられており、細かい基準は企業によって異なります。たとえば、3等級から2等級に下げることを、降級や降格とよびます。等級が下がるほど、基本給も少なくなることが大きな特徴です。
懲戒処分
懲戒処分とは、社員が会社に損害を与えた場合や、就業規定に著しく反する行動をとった場合などに行われる処分です。会社がもっている懲戒権を行使する必要があり、特に重い処分です。そのため、簡単に行えるものではなく、処分を下すための基準を満たしていることを証明しなければなりません。戒告から懲戒解雇まで、7つの段階があります。
降格はどのような場合に適用されるのか
降格人事が適用される場面は、多岐にわたります。ここでは、どのような場合に降格処分が適用されるのかを、解説します。
規律違反行為があった場合
社員が規律違反行為をした場合、会社は懲戒権を行使して処分できます。たとえば、セクハラやパワハラなどが発覚して、降格の対象となるケースがあります。会社が独自に定める社内規則に違反した場合も、規律違反行為として、処分の対象となります。
役職に不適任な場合
管理職は、管轄している部内の業績が不振に陥ったり、生産性が低下したりすると、降格の対象となる場合があります。これは、管理職としての役割を果たしていないと判断されるためです。この場合は、人事権を行使して降格の処分を行います。
配置転換を行った場合
配置転換を行って、以前よりも下の役職やポストを与えることで、実質的な降格とするケースもあります。たとえば、店舗や部署を異動して、それまでよりも下の役職が与えられるケースです。ただし、何らかの処分による降格ではなく、社員に経験を積ませるために、配置転換のタイミングで役職を下げることもあります。
降格人事の処分内容
降格人事の処分内容には、どのようなものがあるのでしょうか。具体的に解説します。
降職・降格による減給
降格人事による減給は、大きく分けて2つです。1つめは、役職やポストの解任によって、役職手当が減ったりなくなったりして、全体の給与が下がるケースです。2つめは、等級が下がって基本給が少なくなり、減給になるケースです。この場合、肩書が変わらなくても、給与は下がります。
ポストの変更
組織再編や人事制度の見直しを行った結果、対象となる社員の役職やポストが、変更となる場合もあります。ただし、この場合、対象となる社員に問題はなく、あくまでも会社の都合による降格です。そのため、役職やポストが下がっても、減給は行われないのが一般的です。
降格人事の注意点
降格人事を行うには、気をつけるべきことがあります。ここでは、降格人事の注意点について解説します。
就業規則で規定があるか確認する
基本的に、降格人事を行うには、就業規則において、処分の根拠となりうる規定が必要です。また、対象となる社員には、就業規則の内容を説明して、納得してもらう必要があります。特に、降格により減給となる場合は、不満が生じやすいため、詳しい説明が必要です。
降格処分の根拠を提示する
降格人事においては、降格処分の理由を明示しなければなりません。対象となる社員の過失や不手際などについて、事実を明確にすることが大切です。本人だけではなく、関係者からも聞き取りをして、根拠となるデータを証拠として集めてください。根拠がないにも関わらず降格処分を強行するのは、違法行為に該当する恐れもあるため、注意が必要です。
降格処分の前に注意や指導をする
社員の能力不足を理由に、降格を行う場合は、適切な指導や注意により、状況を改善できる可能性もあります。いきなり処分するのではなく、段階的な対処が重要です。万が一、降格によるトラブルが発生しても、事前に指導や注意を行った事実があると、降格の正当性が認められやすくなります。
人事権や懲戒権の乱用にあたらないか判断する
就業規則に則った降格人事を行ったとしても、対象となる社員が納得しないと、裁判に持ち込まれる可能性もあります。たとえば、育休の取得を理由に降格をしたり、退職を促したりした場合、コンプライアンス上の問題があると判断されて不利になります。人事権の乱用と判断されないよう、降格人事は慎重に行いましょう。
モチベーションの低下に注意する
降格人事を行うと、対象となる社員のモチベーションが低下したり、退職につながったりする可能性もあります。会社の対応方法に明らかな問題があると、社内全体のモチベーションにも影響する可能性があるため、気を付けなければなりません。降格人事は、周囲にも影響を及ぼすことを理解しておきましょう。
降格人事の手順を解説
降格人事を行うには、どのような手続きが必要でしょうか。ここでは、降格人事の手順について詳しく解説します。
事実を客観的に判断する
問題となっている内容について、現状や事実を調査して原因を探ります。また、調査内容に基づいて、降格人事が必要であるかを慎重に検討します。不適切な降格人事を行わないためにも、客観的に判断することが大切です。
降格処分の内容を検討する
調査結果によって、実施すべき降格処分の内容も変わります。懲戒処分に該当するのか、人事異動による処分で対応できるのかなどを、判断する必要があります。
弁明の機会を設ける
懲戒処分を行う場合、特に慎重な判断が求められます。状況を正しく把握するためには、対象となる社員に、弁明の機会を与えることも必要です。その際には、改善や反省の様子があるかどうかをチェックしましょう。
減給をするか検討する
処分の内容としては、減給を伴う降格であるかどうかも、重要なポイントです。減給する場合は、役職手当のみの減給にするのか、基本給を減給するのかを検討する必要があります。
降格処分の内容を説明する
降格処分の内容が決定したら、実際に処分を下す1~2週間前に通知します。個別に面談する機会を設けて、具体的な処分の内容を説明しましょう。特に、降格の具体的な理由や、減給について明確に伝える必要があります。
降格人事を伝える際の配慮の仕方
降格人事は、伝え方も重要です。ここでは、降格人事を伝える際の、配慮の仕方について解説します。
まずは文書で伝える
降格は社員にとって重大な事案であるため、文書で正式に通知すべきでしょう。文書での通知により、対象となる社員も、事実として受け止めやすくなります。文書には、降格後の部署名や役職名とともに、降格の理由を記載しましょう。降格に関する情報を明確に記載し、後から見直しても納得できる内容にしなければなりません。
今までの功績を評価していることを伝える
役職についている社員は、多くの場合、企業に対してさまざまな貢献をしてきた実績があります。そのような社員が降格の対象となった場合は、過去の功績については、会社が評価している旨を確実に伝えなければなりません。功績を認めることで、対象となる社員は、不当な評価を下されているという感覚が薄れます。
会社が期待していることを伝える
降格処分を受けると、自信を喪失する社員も少なくありません。降格後も仕事に打ち込んでもらうには、今後のことも併せて伝えるとよいでしょう。たとえば、もとのポジションへ戻るための条件を示したり、今後の活躍に対する期待を伝えたりとった配慮も必要です。
まとめ
降格人事においては、慎重に準備を行う必要があります。社員の不満を生まないためにも、適切な手順を守りましょう。対象となる社員への対応は、他の社員にも影響を与える可能性があります。
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